第87-2話
いつもありがとうございます!
「お待たせしました♥朝食の時間です♥」
やたら元気そうなゆりちゃんの声。
でもそれが決して心からの喜びによる感情ではないということを私はその声だけで知っていました。
「今日の朝ご飯はみもりちゃんの大好きな私特製の卵焼きです♥前に美味しいって言ってくれましたよね?♥」
「あ…うん…」
私の前に皿を置く音がしてその次に続く香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
とてもいい匂いに異論はないがどうして私の心はこんなにもソワソワで不安なのでしょうか…
「目隠しは取れないんですが心配しないでください♥ゆりがみもりちゃんの愛しいお口に直接入れて差し上げますから♥
ほら♥あーんしてください♥」
「あ…あーんー…」
渋々口を開けてしまう私。
その中に入ってくるゆりちゃんの手作りの卵焼きは相変わらずとても美味しかったんですが…
「た…食べにくい…」
居心地が悪いせいなのか喉越しに一苦労だったんです…
私には今目隠しが掛けられたままです。
ゆりちゃんいわく
「この家で暮らしている間、みもりちゃんにはその目隠しを常に付けてもらいます♥
大丈夫♥お食事も、お風呂も、お手洗いも全部私が処理してあげますから♥
もしみもりちゃんが自分でそれを外そうとしたら…分かってますよね?♥」
っと自分でこの目隠しを外すことは決して許されないって…
「自分で外すって言っても…」
でもそれは決して容易い作業ではありません。
何故ならば…
「あ、もしかして拘束、強すぎますか?」
私は今全身が椅子にギッシギシに縛られてほぼ合体しているところですから…
「あー…ううん…ゆりちゃんの卵焼きが美味しすぎてつい…」
「あらまあ♥それは何よりです♥ほら♥もう一個いかがですか♥」
「い…頂きます…」
っと口を開ける私に嬉しそうな声で再び一個の卵焼きを入れてくれるゆりちゃん。
確かに味はすごくいいんですが私がその味を純粋に楽しめないのはきっと気持ちの問題によるものなのでしょう…
全身が椅子にギッシギシになって目隠しを掛けられてゆりちゃんの言うままに従っているだけの私ですが私は今はゆりちゃんの機嫌が直るそっとしてあげることにしました。
顔は見えないんですがゆりちゃん、今すごく楽しいって顔をしているのがなんとなく分かりますし結局自分がゆりちゃんにあんなひどいことを言ってしまったのは本当ですから。
せめてもの罪滅ぼしって言ったところなのでしょうか。
「ふーん♥ふふーん♥」
もうあんなに楽しそうに鼻歌まで口ずさんでいますしその楽しみさえ奪っちゃうのはいかがなものかと。
今の自分の位置…
それは全然分からないんですが一晩で学校からそんなに遠いところまでは離れられないと思います。
一応私達の寮には紫村さんが常住しているし「百花繚乱」や「Scum」の皆さんが夜間にも定期的に見回りをしているんですから誰にもバレず、しかも私まで運ぶなんで到底ゆりちゃん一人では無理な…
「あ、ちなみにみもりちゃんをここまで運べたのは知り合いの方がお手伝いしてくださったおかげなんです♥」
全然無理ではありませんでした。
「きょ…協力者?」
「はい♥」
まさかこの病みまくった計画に手を貸した協力者がいただなんて…
ゆりちゃん、私以外もちゃんと友達いるんだなと思われてちょっとだけほっとしましたがよく手伝う気になれましたね…あの人…
「あ!みもりちゃん、今すごく失礼なことを思いましたね?♥」
エスパー!?
「うふふっ♥みもりちゃんの考えることなんて手に取るように分かりますよ♥
でも心配しないでくださいね?♥
私の友達はあくまであなただけであなた以外はこれっぽっちも興味ありませんから♥」
え!?何!?その極端な危険発言!?
「さぁ♥細かいのは気にしないで私と二人っきりのラブラブライフを楽しみましょう♥
ほら♥もう一個入ります♥」
っと私に卵焼き一個を押し込むゆりちゃんですがこれって私が思ったよりまずい状況かも知れませんね…
普段私以外の人に信頼ところか興味すら持たないゆりちゃんが協力者まで手配して私をここに閉じ込めた。
規則正しい生活を送っているゆりちゃんは朝食の時間もきっちり守る性格ですからそこから考えると今はまだ授業が始まる前の朝食の時間。
でも授業が始まったらきっと私達の無断欠席が気づかれてその時は本格的な捜索が行われるのでしょう。
その時になったら今は敵意し合っている「百花繚乱」と「Scum」も共同戦線を張って私を救出するはずです。
私はただ自分の保身だけを案じているわけではありません。
もしそうなってしまったらゆりちゃんは処罰を避けられませんし一歩間違えてしまったら退学にもなりかねない…!
そんなの絶対嫌…!私、ゆりちゃんがいない学校生活なんて想像もしたくないんです…!
「いい食べっぷりですね♥みもりちゃん♥」
私のためではない…
ゆりちゃんを守るためにもここは私がなんとかゆりちゃんを説得して学校に帰さなきゃ…!
っと思い込んだ私の食事が終わったところを確認したゆりちゃんは
「お水飲みましょうか♥みもりちゃん♥一気に飲み干すとむせますからゆっくり流しますね♥
それとこれは栄養剤ですから一緒に飲んでおいてください♥」
食後のお水と栄養サプリを用意して私の口の中に…
「ってなんかこのお水…妙に生ぬるいんだけど…?」
私とゆりちゃんはあまり朝っぱらから冷やした飲み物を飲むのが好きではありません。
朝から冷や冷やのお水とか飲んじゃうとすぐお腹が痛くなるし。
「だとしてもこれはなんか変な感じ…」
それになんかたまにドロッとした舌触りもあって…
「ほら♥みもりちゃん♥お薬、入りますよ♥」
「あ…うん…」
色々疑問が残る食事の後。
ゆりちゃんから飲ませるお薬まで飲み済ませた後、ようやく私はその不安でどうしても落ち着かない食事の時間を終えることができましたがその時の私はもっとそのことについて深く考えるべきでした。
「先は美味しそうに全部飲み切ったんですね♥そんなに美味しかったんですか♥
ゆりの体液入りのお水♥」
後でその水に関わる真相と
「それと先みもりちゃんが飲んだそのお薬♥実は惚れ薬なんです♥」
自分が飲んだ怪しいお薬のことを聞かれた時、私は心底自分の不用心を悔やまざるを得ませんでした。
「それでは次に参りましょうか。」
「次?」
後片付けを済ましたゆりちゃんからの次への知らせ。
私が座っている…じゃなく縛られている車椅子をどこかへ連れて行くゆりちゃんは先からずっと
「楽しみですね♥」
私の後ろでそう言うだけでした。
前が全く見えなくて未だに不安な気持ちはありますがそれでもゆりちゃんは決して自分に危害は加えないという信頼はあります。
なんだかんだでゆりちゃんはずっと私の傍で私を守るために色々頑張ってくれたしたまにこうやって暴走する時もありますがそれも含めて私のことが好きなだけでやったことですからそこはちゃんと感謝しています。
だからほんのちょっとだけですが冷静な思考ができます。
っと言ってもここから抜け出す術を持ってないのは紛れもない事実。
脱出できたとしてもすぐ捕まって
「悪い子ですね♥みもりちゃんって♥やはり少しだけ躾が必要なのかしら♥」
って酷い目に遭うに違いないです…
だからこそ一刻も早くゆりちゃんを説得して一緒に学校に帰りたいんですが…
「でもこの状態じゃ…」
何を言っても絶対聞いてくれなそうな雰囲気…
こういう時に限っては両親にも止められないモンスターになってしまうゆりちゃんのことを私はあまりにもよく知っています。
だからといってそのまま放っておくわけにはいきません。
まずはゆりちゃんの気持ちにゆっくりと寄りつつ少しずつ心を開いてもらって…
「着きましたよ♥みもりちゃん♥」
っと思ったらいつの間にか私を次の予定の場所に連れてきたゆりちゃん。
着いたって言われても前が見えないからちっとも分かんないよ…
「それじゃ早速始めますね♥」
「始めるって…何をっ…!?」
っと私が質問する暇もなく私の右耳に入ってくるのは
「はぁ…♥みもりちゃん…♥」
ゆりちゃんの生暖かい舌でした。
ぬめぬめして柔らかく、そして肉感的に絡んでくるゆりちゃんの温かい舌。
「私のみもりちゃんです…♥誰にも渡しませんから…♥」
私は自分こそとんでもない状況に嵌ってしまったことに気づいてしまったのです。




