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皆で仲良しアイドル!異種族アイドル同好会!  作者: フクキタル
第3章「カナナ」
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第86話

いつもありがとうございます!

「おはよう。みらいちゃん。」

「ふぁーん…あ、セシリアちゃん。おはようございます…」


翌日、目が覚めたみらいの目の前で彼女におはようの挨拶をするのはもはや彼女の正室と呼んでも過言ではない彼女の親友である人気アイドルユニット「Fantasia」のリーダー「セシリア・プラチナ」であった。


早めに起きて既に手入れを済ませた気品が溢れるプラチナブロンド。

カチューシャの形で結び上げた髪型と純白なロング手袋とニーソはもはや彼女のトレードマーク。

高い身長。抜群のプロポーション。何より人の脳内を自由自在に覗き、操れる神の眼。

「ハイエルフ」の割に短い耳を持っているが彼女は紛れもなくエルフの王族。

その「プラチナ皇室」の第3皇女という高貴な身分と相まって彼女は芸能界でだけではなく、世界中の人々から「女王様」と呼ばれ、憧れの象徴として常に頂からその輝かしい光を放っているわけだが


「寝起きしたばかりのみらいちゃん…!」


目の前で眠そうな顔であくびと共に大きく伸びをしている爆乳の少女の前ではどうも普段の冷静が保てない彼女であった。


サラサラで艷やかな桃色の長い髪の毛。

自分が用意したパジャマが半分くらい脱げかけていてそれだけで朝の寝ぼけさが一気にふっ飛ばされてしまうほどの衝撃であったが一番たまらないと思ったのは


「みらいちゃんの濃厚な匂い…♥」


布団を捲った時、中から噴出された彼女の濃い体臭であった。


体温が人並み以上高いため、寝る時に割りと汗をかくみらい。

その上、抱き癖を含めて寝相が悪いため、細やかな動きが多くて激しい。

睡眠の間にかいた汗は相当なものでその柔らかくて甘しょっぱい匂いは傍にいるだけで息が詰まるほど濃厚なものであった。


「後でみらいちゃんが顔洗に行った時に中に入っちゃおう…♥」


生徒会長の権限でみらいと同じ部屋に変更、同室した甲斐があったと心底から思う瞬間であった。


「昨夜は結構遅かったわね。」

「あー…はい…待っててくれたんですか…?すみません…速水さんと色々お話して…」


まだ眠気が覚めてないようだが律儀に夜遅くまで帰らなかったことについて謝るみらい。

その当時、


「みらいちゃん…急に抱きついたらどうしよう…

も…もしかして今日…!ついて抱いてくれるのかしら…!まずいわ…!私、毛の処理とか全くやってないのに…!」


セシリアはみらいのベッドの上で絶賛妄想パレードを繰り広げていた。


「あいちゃんと一緒だったんだ。じゃあ、良かった。」

「はい…速水さん…すみれちゃんと子作りをしてたんで…私も欲しいです…赤ちゃん…」


一瞬「はっ」と今自分が何を口にしたとっさに気づいてしまうみらい。


「あ…!い…いいえ…!違うんです…!赤ちゃんは欲しいですけど速水さんとすみれちゃんの間に何もなかったんですから…!」


いくら寝ぼけていたとしてもあいから時期に頼まれた昨夜のこと。

普段規則正しい生活を送っているみらいに夜更かしはなかなか負担がかかることだったのかいつにもましてぼんやりしていたがそれは決して他人に聞かせてはならないことであることを彼女はあまりにもよく知っていた。


「し…信じてください…!セシリアちゃん…!本当にお二人さんの中に何も…!」

「もういいわよ。全部知っているから。」


テンパって寝ぼけさが吹っ飛ぶほど焦っているみらい。

だがあいとすみれのことをあの二人が付き合い始めた頃から知っていたセシリアであった。


「あー…そうか…セシリアちゃん…もう知ってたんですね…」

「ええ。だからそんなに可哀想な顔しないで。」


みらいのこういう単純で分かりやすいところがまたたまらないと思うセシリア。

彼女はまずみらいの落ち着けるためにテーブルの上から一杯のお水を持ってきた。


「ほら、これ飲んで。」

「あ…ありがとうございます…」


セシリアから渡した水をごくごく飲み込むみらい。

一晩中乾いていた喉が水分で潤ってきて生き返るような気分だ。


「ふぅ…」


少し落ち着いたのか息を整えるみらい。

その同時に一つ気づいたことが。


「あ、ということはセシリアちゃんはずっと私に速水さんとすみれちゃんのことを隠してたんですね!ひどいですよ!」

「とうとうバレちゃったかー」


しれっとした顔でそのまま白を切ろうとするセシリア。

彼女にとって頬を膨らませて思いっきり怒っているみらいのことは冬の膨らんだ雀を見ているような気がしてひたすらの可愛げしか感じられなかった。


「まあまあ、落ち着きなさいって。お詫びとして今度私がみらいちゃんと一緒に子作りしてあげるから。男の子が好き?それともやっぱりみらいちゃんに似た可愛い女の子かしら。」

「ダメです!誤魔化し禁止!赤ちゃんはすごく欲しいんですけど!」

「欲しいんだ…」


欲望を洗いざらい剥き出すみらいのことに若干引いてしまうセシリア。

ちなみにみらいはセシリアのような可愛い女の子を欲しがっている。


「それはともかく心外ね。私のこと、そんなに信用できなかったのかしら。」

「そ…それを言うのならセシリアちゃんこそ私に一言も…!」


いつまでも続けそうな諍い。

だがそこにケリを付けるのはいつもみらいの天然の一言であった。


「あの二人には二人の事情があるから余計に他の人達に知られたら困るんでしょ?

みらいちゃんは仮に私と付き合うことにしたら全部皆に知らせるタイプなのかしら?」


さり気なく自分とみらいが付き合う状況を例えるセシリア。

彼女はこういう方法で自分とみらいの中にある絆をちょくちょく確かめようとするのが好みだった。


もしそこで


「ええ…!?なんですか…!?きゅ…急に…!?」


っとみらいが反応したらセシリアの勝ちに間違いはないはずだが


「はい!もちろんです!」


残念ながら相手はあの天然星人のみらいであった。


「私は皆に自身を持って誇ります!私はセシリアちゃんと付き合うって!こちらが私の自慢の彼女、セシリアちゃんだって!」

「ええ…!?な…何なの…!?きゅ…急に…!?」


今回もまたみらいの勝利ということになった。


「と…ともかくいくらみらいちゃんでも他人の色恋沙汰まで一々突き込む必要はないってこと…!そんなの本人達の自由なんでしょ?」

「そ…それはそうですけど…」


あまりの正論に言い返せなくなってしまったみらい。

だが今回の件でみらいにはみらいなりのセシリアに対する寂しさができてしまったのもまた事実であった。


「だって…セシリアちゃん、いつも大事なのは私に話してくれませんから…全部一人で解決しようとするし…」

「みらいちゃん…?」


ちょっと追い詰めすぎたのかなっとほんの少しだけ自分を顧みるセシリア。

どうやらみらいは内心そのことについて寂しい思いをしてきたようだ。


「一緒に話し合って一緒に頑張るって選択肢がちゃんとあるのに何もかも全部一人で背負いちゃって…」

「それは…」


今度はセシリアの方から言い返せなくなってしまったがそれには深いわけがある。

だが結局セシリア本人はそのことについてそのまま沈黙を保つことにするしかなかった。


「私は心配なんです…私の大切なセシリアちゃんが皆に嫌われるのも、そのせいでセシリアちゃん自身が壊れてしまうのも…」

「みらいちゃん…」


それが単なる友人としての気遣いというのは承知の上。

だがセシリアがみらいのことを特別に思っていると同じにみらいもまたセシリアのことを自分の特別な人だと認識していた。


「分かった。私が悪かったわ。本当にごめんなさい。」

「分かればいいんです…」


割りとすんなり謝るセシリア。

単に朝っぱらみらいと喧嘩なんかをしたくないという理由もあったが第一セシリアはみらいの泣く姿が一番辛いと思っていた。


「あれ…しましょう…仲直りのやつ…」

「あ、うん。そうだね。」


最後にはいつもので仲直りしようとする二人。


「来てください…セシリアちゃん…」

「あ、うん。いいよ。」


っとお互いの体を引っ張ってギュッと抱き合うみらいとセシリア。

入学頃から音楽会において首席特待生のみらいと次席のセシリアの仲は一段と特別に見えたが二人は割りとよく喧嘩して、こんな風に仲直りできた。


「一人で突っ走らないでください…」

「うん。本当にごめんなさい。」


まるで叱られた子供を抱きしめて慰めているように見える姿。

この二人はいつも相手がお互いのことのために怒っているということをよく知っていて、こうやって最後にお互いの温もりを確かめてきた。


「うみちゃんの時だってこんな風に仲直りしたら良かったのに…」


っと小さくつぶやくみらいの声にセシリアはただ


「…うん。そうだね。」


か弱い彼女の背中をそっとなでおろすだけであった。


だがセシリアは知っていた。

自分は決して何もかも一人で背負っているわけではないとこと、自分はただ裏方として尽くしているだけで肝心なキーはみらいが握っていることを。


「私、皆と繋がるのが夢なんです。」


いつか自分だけに明かしてくれたあの子の夢。

青黒のおさげがすごくきれいで人々に「歌姫」と言われるその子の夢がみらいと()()限り自分はただ彼女があの子とのことに集中できるように力を尽くすしかない。

そのために厄介なのは全部自分が背負うことにしたが結局最後には全部みらいに任せっぱなしの形になってしまうことをセシリアはあまりにもよく知っていた。

だからこそ自分自身に顔向けができず、ただこうやってあの子に慕われた目の前の爆乳の泣き虫少女の面倒を全力て見てあげるしかなかった。


「先輩を幸せにするのはもはや私ではない。だからどうか先輩を幸せにしてあげてください。会長。」


っと最後の一言でそのおさげの少女は自分からも、大好きなみらいからも離れてしまった。


「うん。大丈夫。」


今はなくなった2つ目の姉が好きだった言葉「大丈夫」。

どんなに辛いことでもその一言でなんとか受け入れられると姉はこの言葉が大好きでそんな姉に似るために彼女もまたその言葉を口癖にしてきた。


「この子なら大丈夫。きっとうまく成し遂げるはず。だから心配しないでね。うみちゃん。」


より強くなるみらいを抱きしめる腕の力。

どんな困難があろうともみらいがあの子にたどり着けるまでしっかり面倒を見てあげると心から誓ったセシリアは今日もまたみらいへの自分の心を密かに抑え殺してしまった。

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