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いつかみた夢

作者: ヤミ狐

「現し世は夢、夜の夢こそまこと」ですよ

 こんな夢をみた。


 大学受験が終わり、今日、結果が発表される。僕は緊張と不安と様々なものが混じりあって息をきらせながら走る。人を掻き分け、自分の番号をさがす。僕は自分の番号を見つけた時、思わず泣いてしまった。帰りは気持ちがとても軽かった。昔馴染みの親友が今の浮かれた僕を見たら気持ち悪い、などと笑って馬鹿にするだろう。しかし、そんなこともどうでもよく思える。第一志望に合格した喜びは何よりも大きく、翌日でもその喜びに身体が震えた。


 僕は今、凄く志望している大学に受かり、毎日が楽しみでまさに青春というものを謳歌している。高校生の時のような全く変わることのないつまらない学校生活ではなく、毎日が変化に富んだ新しい日々だ。僕の好きな数学の授業を受け、バイトをし、家に帰ってゲームをする。何よりも高校の時より行動できる場所が広がったのが大きい。それほどに高校生から大学生になったこの1年の変化は大きかった。


 大学の先生やサークルの先輩たちに僕という存在を気に入ってもらえたし、本当に充実した毎日が送れている。最近、日記を書くようになり、夜にその日、あったことを書くようにした。


 大学で過ごして一年経った頃、僕は同じサークルに入ってきた後輩の一人に惹かれた。彼女はサークルで瑠々(るる)ちゃんの愛称で呼ばれる小柄で少しほんわかとしたいわゆる癒し系と呼ばれる部類の女の子。


 5月22日

 僕の日記に記してある日付はこの日だった。


 今日、僕は瑠々ちゃんに告白をした。瑠々ちゃんは照れたような、反応を示してくれて……返事をOKしてくれた。



 この日から瑠々ちゃんとの交際も始まって慌ただしく楽しく過ぎていく日常が忙しくてこれまで以上に大変だったけどそれ以上に楽しかった。何回か、瑠々ちゃんと喧嘩をし、別れたこともあったが、喧嘩をする度にサークルの友達が仲を取り持ってくれたり。


 成人式を迎えて、懐かしい顔馴染みに会ったけどみんなあまり変わっていない。成人式を迎えたということでお酒も飲んでみたが、慣れない。正直苦くて飲めたもんじゃない。名実共に色々な意味でも大人になった一年になった。


 僕は就職活動のせいか、その頃から自分を私、と呼ぶようになったし、お酒に慣れてきたらとても美味しく感じるんだ。不思議だよね。あれだけお酒を嫌ってたんだから。


 瑠々ちゃんも就職し、仕事が安定してきた頃、私は瑠々ちゃんにプロポーズをしたんだ。すると瑠々ちゃんは涙ながらに私に応えてくれたんだよ。


 結婚式は挙げなかったし、両親への挨拶をして、二人でマンションの一部屋を借りて住むことにしたんだ。娘もできて、その際に一軒家をローンで建てたんだけど、書類の額がとても怖かったよ。あはは、情けないね。



 でもね、私はとても幸せに暮らせてるんだ。そう、とても幸せにね。




 僕はいつもと変わらない日常を過ごす。例えどんな夢を見たとしても、毎日当たり前になってることが変わるわけじゃない。いつもと同じ時間に起き、学校への路を歩く。いつも通り学校で勉強をする。いつもと違うことは窓の外を眺めたくなって、少しの間、窓の外にある自分の世界に囚われるんだ。



 私はね、そんな夢を見たんだよ。

さて、結局のところ夢とは「僕」か「私」かどちらだったのでしょうか……

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[良い点]  この話を読んで、作者のうれしかったことや伝えたかったことがじわじわと伝わってきました。 [気になる点]  気になる点が3つありました。  1つ目は、「大学受験が終わり、今日、結果が発表さ…
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