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18話

 行ってしまった…


 なにか言いたいことがあったみたいだけど、なんだったのかな。



 まだ、心臓が強く脈打っている。


 自分の気持ちに従っていいのか判断がつかない。


 僕は、このまま君を好きになっていいのだろうか…





 自室に戻ると母が来ていた。

 

「あら? どこ行ってたの?」

 母の問いかけにどう答えるか迷ったが誤魔化すのはやめた。

「例の子に、会ってきたよ」

 母の表情が明るくなったのがわかった。

「そう。どんな子だった?」

「偉そうな年下の女の子だった。でも、なんとなくだけど僕と似てるような気がするんだ。たぶん、優しい子だと思う。あ、別に僕が優しいって言ってる訳じゃないから」

 好きになったことだけは隠した。

 母は微笑んで僕の頭を撫でた。

「女の子には優しくしないとダメよ」

「分かってるよ。でも僕の方がからかわれてる感じなんだよね。むしろ僕に優しくしてもらいたいくらいだよ」

「あら?そうなの?それはそれは」

 母は何故か嬉しそうだ。

「え、なに? なんなの?」

 母がなぜ嬉しそうなのか僕にはわからなかった。

「そのうちあんたにも分かるわよ。それで、あんたはその子のことどう思ってるの?」 

 嫌なところをピンポイントで突いてきたよ。

「んーわかんない」

 僕はボロがでないよう短く誤魔化した。

「あらあらー」

 見透かされてるなこれは…

「ちょっとトイレ行ってくる」

 僕に残された選択肢は撤退のみだった。



 

 今、頭は色んな懸案事項を抱えている。一度整理して、それから明日彼女に伝えることをまとめなければならない。


 僕の病気のことを。



 僕は暫く散歩をして売店へ向かい、ノートとボールペンを購入した。そのままロビーのソファーで考えをまとめた。

 





 翌日、僕は彼女よりも先にロビーへ行こうと約束の時間の20分前には着くように自室を出た。


「早いね。まるで忠犬のようだねポチ」

 ソファーに座る彼女が僕を捉えた。

「その言葉、そっくりそのままお返ししますね」

 いつから待ってんだこの子は?

「たしかにそうなっちゃうか。ふふふ」

 また笑った。

 この子が笑うと、なんだか嬉しいような気がする。

「君はよく笑うね」

「ポチのせいだよ。ふふふ」

 そうか、僕のせいなのか。よくわかんないな。

「とりあえず隣いいかな?」

 僕は一応断りを入れた。

「どーしよーかなー」

 何故か許可をもらえなかった。

「君はちょっとめんどくさい人だったんだね」

 そう言うと彼女は少しだけムッとした。

「失礼な! お座り!」

「はいはい。んじゃお隣失礼しますね」

 僕が彼女の隣に腰かけると頭を撫でられた。

「よーしよしよし。偉いねー」

「ちょっとやめてよ。犬じゃないんだからさ」

 そうは言ったが自分からは頭に乗せられた手をのけることはしなかった。正直言って僕は別に嫌じゃなかった。

 ポンポンと二回頭を軽く叩くと彼女は手をどけた。


 ニヤリと歯を見せて笑い彼女は口を開いた。

「さて、じゃあ君から話してもらおっかなー」

 

 僕は、ソファーにもたれロビーの高い天井を見上げた。

「了解した」

 

 ポツリと呟き彼女の言葉に了承した。

 

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