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序章第2話 「彼との出会い」

 木々の隙間から日の光がまるでベールのように射し込んでいる。

 木の葉が揺れるたびに、ゆらめくこの光をじっと見ていたい気持ちが湧き出てくる。


 ……こんな状況じゃなければ。


「いま私はどこにいるんだろう。」


 肩をがっくり落とし森の…山の中を歩く。

 夕方に山に入って、そこから暗くなって途中で道が分からなくなって、野宿をして、気づいたら遭難してましたって冗談にも笑えない…。


 来た道を戻る?まず来た道を覚えていない。

 じっとして待つ?そんなことしてたら一生出られなくなる。

 助けを呼ぶ?こんな森の中に人がいるわけがない。

 聞いた話では近くに村があるらしいから、一か八か進んでいけば辿り着くかもしれない。


 よし、とりあえず進もう。希望が無いわけじゃない、食料もまだある、近くに村があるなら多分何かしらの目印的なものがあるだろうし。


 そう意気込んで進んできたはいいものの、結局人影どころか道すら見つからない。


「だよねー。」


 そうあらためて厳しい現実に直面していたところに何かの音、明らかに風などの音ではない音が聞こえてきた。

 人がいる。そうでなくても何かあるかもしれないと思い、音の聞こえる方へ駆けていく。


 しかしそこで目にしたのは確かに人だった。

 それと同時に目にしたのは、怯える子供を守るようにナイフを構えたウサギ耳の魔族と、それに対峙(たいじ)する熊の魔物、そして削られた木々だった。


 予想外の事に一瞬止まってしまう、そしてこちらが出てきたことにより魔族はこちらを向いてしまう。目をそらした一瞬、その瞬間に魔物の腕が魔族を吹き飛ばし、魔族は木に叩き付けられる。

 このままじゃいけない。そう思い、つい反射的に魔物の前に飛び出した。

 魔物は突然現れた私を警戒して、睨み合いの状態になる。

 今後ろにいる子供は目を(つむ)り頭を抱えて丸くなっている。

 速く倒さないとまずい。そう思っても熊をどのように倒すかなんて瞬時に判断できるわけがない。

 そんなことを思った矢先、背筋が凍りつくような悪寒が走る。


 悪寒の先をつい見てしまう。


 そこにはさっき吹き飛ばされた魔族が立っていた、それと同時にさっき見た光景を思い出し、しまったと思い魔物の方を向くと、魔物も彼の方を向いていた。

 完全に彼の方に意識がいったのか全くこっちを気にしていない。

 今だ!そう思い、剣を抜き魔物の腹を切りぬける。しかし浅かった、こちらを脅威と認識し魔物がこちらを向く。


 だが、それが魔物にとっては命取りだった。


 意識がそれた瞬間、魔物の背後に襲い掛かる魔族の姿が見えた。

 一気に相手に近付き、飛び掛かり、ナイフを逆手(さかて)に持ち頸椎(けいつい)をえぐり取る。

 魔物は倒れ動かなくなり、そこには吹き飛ばされて重傷であるはずの魔族が立っていた。しかしすぐに倒れこんでしまう。


 倒れる前に見えた彼の顔は


              笑っていた。




 戦いの音が止み少しした頃、おそるおそる子供たちが目を開ける。そこに映ったのはおそらく倒れた熊と、一緒に倒れてる魔族の彼と、なぜか疲れて座り込んでいる私だろう。

 子供たちは真っ先に自分を守っていてくれた者のもとへ向かう。


「ラビ兄!ラビ兄!」

「おにい!起きておにい!」


 と、涙目になりながら彼をゆすっている。


「大丈夫だよ、君たちを守って疲れて寝てるだけだから。」


 そう声をかけると、今までこちらに気が付いていなかったようで驚いていた。そしてなんとなく状況を理解したようで女の子の方がこちらに話しかけてきた。


「えっと、お姉さん、わたしたちを助けてくれてありがとう。」

「ちがうよ、私はただ君たちの前に立ってただけ。本当に助けてくれたのはそこのお兄ちゃんだよ。」


 そうありのままを伝える。


「でもお姉さんがいなかったら、わたしたちは食べられちゃってたから。助けてくれたから。ありがとうなの。」


 そういってあらためて感謝される。

 ただ、男の子の方はさっきから倒れた魔族の彼を持ち上げようと必死になっている。


「もう、シトラもありがとうを言わなきゃダメじゃない!」


 女の子におこられた。しかし


「服がボロボロだもん速く村に行って先生に見せなきゃ。」


 そういって持ち上げるのをあきらめようとしない。そのせいでずりずりと引きずってしまっている。

 私は男の子のもとへ行って、彼を背負う。


「私がつれて行くよ。かわりに村まで案内してほしいな。」


 そう言うと男の子は渋々といった感じで「わかった」と言って速足で村に向かていく。


「もー、お礼言わなきゃだめじゃない!」

「うっさいなあ!」


 そう微笑(ほほえ)ましい会話を聞きながら村に向かっていく。

 

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