状況確認と選択
さて、昨日一日を簡単に振り返ってると弟の琳冶が起きてきた。
「おはよう。」
「う」
こっちはちゃんとあいさつしたのにこの反応。まぁいつものことなので特に気にしないが。
「とりあえず…夢じゃないから。」
俺と同じようなことになりそうな琳冶に先制パンチをいれて立ち上がる。
かたい床などで寝ると体が痛いと聞いたことがあるが、本当に痛い。節々だけでなく、筋肉そのものが。後、直に土の上だから服や髪が汚れている。
「なぁ。」
呼びかけて来た…がその先が続かない。きっと何を言えばいいのかわからないのだろう。俺もそうだ。
「えっと取り敢えず、母さんか父さんに連絡する?」
「圏外だったろ、できんの。」
「いや、今だったらつながるかも。」
昨日、境内からいつの間にか森の中にいて、流石に変だと思いマップを開いたら地図は表示されず、圏外で現在地すら不明となっていた。その後、俺が照らして歩きながらずっと電波の調子を確認していたが結局無駄だった。
俺のスマホが電池切れ起こした後は、琳冶のスマホで森の外まで出た。
「…………」
画面を見ながら難しい顔をしている。やはり圏外らしい。
「というか、俺の電波時計も電波受信してないしな。」
「えっどうすんの。」
「とりあえず、今どきの時計は素で性能いいし近いうちに狂うって心配はないだろう。」
「いやそういう問題じゃなくて。」
いや今の時計の正確さは本当にすごい。詳しくはないけど何億年に一秒の誤差しかない時計もあるらしい。流石に市販の腕時計にそこまでの精密さはないだろうが、それでも何十年何百年に一秒位の精密さはあるだろう。
といつまでも現実逃避するわけにはいかない。
「はぁ、しかしほんとどうしよう。」
ただ突っ立ててもしかたない、腰を落として向かいあった。
とりあえず今の時点でわかっていること、置かれている状況を互いに確認してみた。
一つ、ここは日本ではない。少なくとも、自分たちが知っている場所ではない。
一つ、何故ここにいるのか、こんな状況にいるのか不明。
一つ、周囲に人がいる・いた形跡は無し。少なくとも、見える範囲内では。
一つ、電池が切れているため親に連絡できない。当然警察などに助けも呼べない。 そもそも圏外の可能性。
一つ、着の身着のままなので、この状況を打開する物どころか食糧・水がないのでこのままでは餓死の危険。
一つ、移動するにしてもどこに行けばいいのか不明。
一つ、気配はないが野生動物がいる可能性が高い。襲われる危険が。
「最後のは突拍子無さすぎでしょ。」
「わかってるけど、可能性としてはあり得るだろ。」
弟から突っ込まれたが、反論する。無論突拍子無いとは自覚してるが、現実として日本でも山で熊に襲われたというニュースは耳にするし。他には海でクラゲに刺された、蜂に刺されたなどで病院に運ばれるなんて大して珍しくないだろう。細かいことを言えば、ペットや飼育されている・放し飼いの動物に噛まれた・引っ掻かれたなんてこともある。まして、ここは日本でないとしたらどんな動物がいるかわかったもんではない。
閑話休題。とにかく、現状を簡潔にまとめれば〈不明なことが多い〉〈このままでは死ぬ可能性が高い〉ということだ。
「さて状況はわかった。問題はこっからどうするかだな。」
「どうするって言ったって……」
「まぁ取れる選択肢は大きく二つだな。移動するか、留まるか。」