表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王を倒したらクリアだと思ってました  作者: アトアル
一章 魔剣があれば楽が出来ると思ってました
6/35

初期ステでも出来る魔剣の奪い方

 深夜。月明りが照らす丘の上。

 元より、夜を明かすためではなく、忍び込むために深夜を待ってのものだった野営を終え、魔剣奪取に動き出した。

 そうして、魔剣が封印されし祠の入り口へ――とはまるで違う方向に歩みを進める俺とハヅキ。


「確かこのあたりの筈だ」

 俺はぱっと見……どころかよく見ても、何もない場所で立ち止まった。

「見事に何もないけど……ここでいいの?」

「ああ、色々あったからな……結構記憶に残っている。この真下の筈だ」

 あの祠は、入り口から真下に続いている訳ではなかった。故にこの位置、俺がいるこの場所が、魔剣がある部屋の真上だった。

「それじゃあ始めるか」

「……本当にそんなのでうまくいくの? あのやばいダンジョンがそんな簡単にいくとは思えないんだけど……」

「正直、自信があるわけではないしな……だがこっちにも神からのチート、イレギュラーの塊があるからな。可能性は十分ある」

 そもそも、そのチートを使えるかがまず運ゲーもいいところだが。未知の結界一つで詰みかかる、行き当たりばったりの作戦であった。



 俺は地面に手を当てて、土魔法を発動させる。

 そう、作戦はシンプルなものだ。中が駄目なら外から行けばいい。俺の土魔法で穴を掘り、直接魔剣の部屋まで行こうというものだ。

 まあ当然、そんな簡単にいく訳はなく、これにもいくつかの問題があった。

 その一つが、

「ぐっ、やはり今の魔力じゃ、とても掘り切れそうにないな」

 地下二十五階。およそ百三十メートル。そんな穴をほいほい空けられる訳がない。こんなほぼ一般人のステータスの奴には、特に。

「えっ、いや躓くの早くない!?」

「魔力18でどれくらい魔法使えるか分からなかったしな。まあ、掘り切れないのだけは分かりきってたが」

 ちなみに魔力で影響が出るのは主に術の強さである。俗に言うMPのようなものは体力の値が参考値だ。

 さて、現在、俺の目の前には直径二メートル程の穴が開いている。その穴の中では、掘った土で作ったドリルが地面を崩し、土を掘り進んでいる。ちなみに、形は漫画とかで見るような三角形のじゃないぞ。棒状で螺旋に溝の付いた普通のものだ。ドリルが潜るにつれ、掘り上げた土でドリルの長さを拡張しながら地面に刺し、俺の魔力で持ち上げれる限界くらいの長さ、大体三メートルになったところで、周りの土を押し固めて引っこ抜く。ドリルと土がまとまり、きれいな円柱が出来上がった。

 その円柱を横に転がす。現在、転がっている円柱が二本。穴の周りに溢れている分と合わせて、大体七メートル程掘れただろうか。

「こんな面倒な事しないでもっと一気にポンって引っこ抜けないの?」

「地面と引っ付いてる土を引きはがすのは力がいるんだ。今の魔力じゃとても動かん。ドリルで一回掘らないと持ち上げられん」


 やってみて気が付いたが、この方法、MP消費が少ない。少ない魔力量でも、効率よく術を使えているのか、かなり消耗を抑えられている。思うに、俺は技の値は高いままだ。この値には魔力の操作技術も含まれていたんじゃないだろうか。MP消費は技が影響する、魔力も体力も減った今になって知った。

「おかげで思ったより体力の消費は少ないが……あと十本も作ると限界か」

「全然届かないじゃないの……何か考えてあるの?」

 ハヅキは視線で、『考えなしに無駄なこと始めたんじゃないんでしょうね』と、鋭く突き刺してくる。大分信用されていない。


「ま、まあいくつか方法はある。一つ、単純に休んで出直す」

「ほぼ考えなしに近いような……どれくらいかかるの?」

「丸一日も休めば万全だ、もう少し早いかな。そのペースだと三日くらいかかるか」

「魔剣が楽に入手できるかも、っていうならそれも仕方ないかしら。急いでるって言っても急を要するわけじゃないんだし」

「問題があるとしたら、三日もいるとばれる恐れがある。こんな大量の土、隠しにくいし」

 詰め所から離れているといっても、遮蔽物の少ない丘の麓だ。ふとしたきっかけでばれる可能性は高い。

「というわけで後の方法に失敗したらしょうがない、諦めるが、なるべく今日中にけりをつけたい」

「じゃあどうするのよ?」

「二つ、何らかの方法でMPを回復する。王都とかミョルディアならそういう薬もあるし、魔法使いとかは魔法でそういうことも出来た。が、今はそういう手持ちはない」


 俺は三本目となる土の円柱を引き抜きながら答える。深さ、およそ十メートルと少し。

「……それで?」

 ハヅキに促される。それを説明するために、穴を覗き込んだ。さっきの穴を掘っていた時に手応えがあった。

 ただでさえ月明りしかない深夜。穴の中など真っ黒で何も見えないだろう。

 が、そこには、赤く光る二つの点があった。

「三つ……今すぐパラメータを強化する」

 その光は動き出し、飛び上がって俺の目前にまで迫ってきた。

「えっ、きゃああああああってええええ!?」

 俺は即座に、空中に持ち上げていたままだった円柱を出てきた何かに叩き付け、そのまま地中へと沈めなおした。

「な、なに今の何?」

「ゴーレムだ。まさか、あんな外道トラップ考えれる奴らが、外側の警戒をしていない筈がないだろう? こうしてあちこちにびっしり埋められてる。当然、完成度は頭おかしいレベルでとっても強いぞ」

「さっきから思うんだけどもっと前もって説明してくれない!?」

「いや、その反応が見たくてつい……いや、あの、ご、ゴメンナサイ……ってそれよりもあんなので倒せるような造りはしてない。埋めなおして時間は稼げてるが戦いになったら勝ち目はゼロだ」

「逃げよう!?」

「最悪そうなる! ハヅキはここで待機、駄目そうなら直ぐに諦めてダッシュだ!」

「えっちょっとガイア!?」

 俺は土で足場を作り、穴の下へと降りる。


 ゴーレムは今、俺の落とした円柱の中を掘り進み地上へ出てこようとしている。その感触が円柱から伝わってくる。

 円柱を圧縮するように力を籠め、ゴーレムを潰す。当然、今の魔力ではゴーレムの動きを止めることなどは出来ない。目的はこのゴーレムの形状の把握だ。

 そいつは、全体的に丸みを帯びたずんぐりむっくりな人型をしているようだった。大きさは一メートルくらい、そんなに大きくもない。手足も短く、先端も球みたいな形をしている。が、どうも球の部分は自由に形が変えられるらしい。今は掘り進むために爪のような形状になっていた。体の上にはボウルを被せたような半円形の頭に目と思わしき穴が二つ付いている。別に目で物を見るわけじゃないだろうに。趣味だろうか。しかしこいつ、全身、どこを見ても継ぎ目がない、関節部にも。手足の先端のように流動して変化しているのか。隙間があれば土をねじ込んで解体できるかと思ったのだが。

 試しに、土の一部をドリル――今度は三角形のアニメ的アレ――にして、攻撃してみる。うん、傷一つつかない。何製だこいつ。

 ……これはまずいかもしれない。

 元より、勝つ手段は一つしかなかった。ゴーレムには、必ず魔石が使われている。魔石で動くのがゴーレムだ。故に、その部分さえ見えれば、この腕輪に食べさせることで一撃で倒せる。そして、それこそが考えていた穴を掘るためのパラメータ強化の方法だ。それに、魔石のエネルギーを取り込むのだから、ある程度体力も回復するのだ。

 が、隙間一つなく、穴も空けられないとなれば肝心の魔石に触れることも出来ないし、そもそも場所が分からない。普通、吸収なんてなくても、魔石は動力源で弱点だ。露出していることは少ない。人造のこのゴーレムなら尚更だろう。


「これは駄目だったか……流石に予想が甘過ぎたか……逃げるしかな…………うん?」

 ゴーレムが這い出てきて、頭が見えた。そして、光る(・・)赤い(・・)目と(・・)目が(・・)合った(・・・)

 ……何で光ってる? わざわざ光らせた? 無駄に頑張って? いや、そうだろうがどうやって? 

 まだ全身が出て来れず、もぞもぞしているゴーレムに寄り、目の中を覗き込む。

 中は空洞になっていて、内側にびっしりと術式が刻まれていた。

 そして、その中央には赤い石が燦々と輝いていた。

 ていうか魔石だった。

「……………………」

 俺は目の穴に左手を突っ込み、腕輪についている宝石を魔石に当てた。

 シュン、と魔石が吸収され、ゴーレムはそのまま沈黙した。

 …………いや、えっと……ええ……?

 とにかく、このまま穴の中にいる必要もないので、ハヅキの元まで戻った。




 天海 水星   職業 幼女の守護者


 力    6→8    技    768→ 769

 速さ   6      魔力   18 →  20

 体力   5→8    運    50 → 100

 目安防御値  3→4




 とりあえず、パラメータを確認して前回との変化を比べてみた。

 おそらく、ゴーレムの魔石による上昇分は、力・体力・魔力・防御だろう。技は魔法の使用や今の戦い……戦い? で増えたのだと思う。運は称号の獲得分の補正だ。ついでに職業まで変えられていた。畜生。

 とりあえず、目的通り、体力も魔力も上がった。魔石を吸収したことで体力も回復した。非の打ちどころもない結果だった。


「いや、素直に喜ばしいんだが……肩透かしというか……いやいい事だけどさ……」

 穴掘りはすでに再開している。大きくは変わっていないが体力+3は良かった。次のゴーレム出現まで余裕で持つだろう。

「100%良い事でしょ……いきなり穴に飛び込んでいくんだから、心配したわよ」

 恐怖か安堵か、今も少し目が潤んでるハヅキ。あんな後でもちゃんと心配してくれていた。この子、すごい良い子。

「悪かったって……情報伏せたことと合わせて謝るから……」

「誠意がまっっったく見えないんだけど?」

 俺は回収したゴーレムの頭部――魔石抜いたら取れた――を片手に弄りながら答えていた。

「面と向かって言うのも恥ずかしいし?」

「謝罪に使う台詞じゃないわよそれぇ!?」

「はっはっは、許せ」

「かっるぅい!?」

 ほっぺたを膨らませて怒っていたが、言葉そのものの本気さは通じたようで、何だかんだで許してはくれてるみたいだった。


「で、私そっちのけで何見てるのよさっきから?」

「あ、これ根に持たれるやつだ。いや、このゴーレムの頭、裏側に術式がびっしりだから、ちょっと中身気になって」

「うわ、細か。わかるの、こんなの?」

「魔法使いの奴に、結構魔法絡みの知識は教わってな。俺も聖剣とか振ってたとはいえ、魔法寄りの職業適正だしな」

 そこには、びっしりと細かく、精密に円形の図形をいくつも繋げたような図と、それを覆う細かい文字とが刻まれていた。

「あり得ないほど高度な術で詳しいことは読み取れないけど……これ全部、ゴーレム自体とは関係ないんじゃないかっていうか……」

「何が書いてあるの?」

「多分……要は魔石の強度を上げる術。全部」

「それなら、ゴーレム倒されないようにするのに普通の事じゃない。どこかおかしい?」

「大変おかしい。そこまでしてるのに何故に魔石を見える位置に晒してるのか」

「あ」

 おそらく、掛けてあった魔術は、遠距離攻撃用結界。物理超強化。熱氷雷土風その他各種耐性付与。ちなみに全部魔石のみに。そこまでガッチガッチに固めてまで、この製作者は魔石を目立つ位置に置いた。いや逆だ。魔石を目立つ場所に置く故に、ここまでの防御手段が必要だった、のだろう。

「この製作者……きっと、目を光らせたいってだけで魔石をこんな位置に置きやがったんだ……無駄に高度過ぎる技術フルに使ってな……」

「魔剣守る重要な所で何やってるの!?」

「まあ無条件に吸収されるのなんか想定外だったんだろう。実際、ここまで強烈に防護張られたら普通に壊すのは苦労する」

「努力の方向性が……」

「おかげで助かったし、うん、良かったってことにしよう。それに、外周の担当が全部こいつだとしたら、この先の問題も突破できる可能性が上がるしな」

「あ、祠の外に張られてる結界って奴ね」

「ああ、このゴーレムと同じで、触れてもどうしようもない。という方向性で構築してくれてるかもしれん」

 この祠の結界やトラップを動かしている動力。そこにも魔石が使用されていた。魔法使いの奴が古の技術の無駄使いに興奮して調べまわっていたおかげで、その仕組みも知ることができた。


 魔法使いの分析によると、この先、何年、何十年と魔剣を封印するにあたって、長期間動き続ける仕組みが必要だった訳だ。そこで、エネルギーの持つ限り動く、魔石を利用したトラップを開発したらしい。

 しかし、それでも何時かは魔石の力も使い果たしてしまう。そこで、魔石はエネルギーの中継地点としてだけ利用することにして、エネルギーは他で確保する方法が考えられた。これなら、強い魔石を大量に用意しなくてもいいという利点もあった。

 そして、そのエネルギー源というのは、魔剣である、とのことだ。

 魔剣から溢れる呪いなどのエネルギーを吸収し、祠全体に張り巡らせて使用しているらしい。


 さて、ここで重要なのはこの二点だ。

 トラップや結界は、すべて、魔石を起点に発動している。中継するための機能も、だ。

 そして、魔剣からの中継を止めれば――祠そのものが機能を停止する。

 そして、俺は魔石を好きなだけ吸収できる。

 つまり、魔石に触れられさえすれば、このダンジョンに障害はないのだ。



 そして、およそ三時間が経過して。

 ゴーレムはすべて同じタイプで難なく倒せて作業ペースも上がり、円柱を四十本も作った頃、問題もなく魔剣の部屋の天井まで掘りぬいた。

 魔法で浮かせた土に乗って、百メートル以上ある穴を慎重に降り、天井に降り立った。

 野営用に用意してあったカンテラで辺りを照らす。

「もっと、ゴーレム以外のトラップとか用意できなかったのかしら」

 拍子抜けしたのか、そんなことを言い出すハヅキ。

「普通はあのゴーレムなら十分過ぎるだろうしな。それに魔石の都合で無理なんじゃないかって話だ。ここは祠の外だから、魔剣のエネルギーが使えないみたいなんだ。それで休止状態のゴーレムを大量に埋めることにしたんじゃないか、という魔法使いの見解だ」

「なるほどねぇ。それで、この壁に結界が張ってあるんだっけ?」

「ああ、この壁は壊せない。祠の壁は全面に強力な結界が張られてて、それこそ魔剣でもなきゃ……魔剣でも壊せるか怪しいくらいだ」

 天井から更に横へと、部屋全体を掘り出すように穴を広げていく。十数体もゴーレムの魔石を獲得できた今の魔力なら、この深さの土も、硬かったがドリル無しでも掘り進めた。

「確か、この部屋の床に埋まってたと思うんだが……」

 掘り進み、部屋の床側へと滑り込む。探しているのは、外壁の結界の魔石だ。あれは、逆に内側から破壊されて脱出されないように、外側に埋め込まれていた。何でそんなことまで知っているかっていうのは……脱出の時、本当に大変だった、とだけ答えるに留めたい……


「ん? あの辺り何か光らなかった?」

「あったあった、よくやったハヅキ」

 掘り進める内に、ハヅキが魔石の光を発見した。さっそく近づき、吸収する。

「触れないような結界とかも特になく、どうにかここまで来れたな」

「びっくりよ、全然成功するなんて思えなかったわ」

「だろうな。俺も半分はそう思ってた」

 存外、幸運値が上がったおかげだったりするんだろうか。だとしたら流石は〈幼女の守護者〉、このスキルの事も、もっと認めてや……やっぱ無理だわ。

「やっぱり、この腕輪が思ったよりもチートだったってことだ……使い方を間違ってる気もするが。これがなきゃ、魔石も壁と同じ硬さなんだから突破不可能だったしな。まさか無条件に魔石が食われるなんて想定も出来なかったんだろうな、流石は神製」

「それ一個でゴリ押したあなたもすごいんじゃないかしらね……結局一歩間違ったら即死の可能性もあるのによくやるわよ……」

「褒めるなよ照れるだろ」

「遠回しに馬鹿って言ってるの分かってるわよね?」

 努めて分からないことにした。さておき。


「さて、これでただの死ぬほど頑丈な壁にまで強度が落ちたな」

「まだそんなに硬いの!?」

「魔法にばっか頼ってる訳じゃないってことだ、竜人とかドワーフのあたりの仕事かな……あれ? 壊せっかなそういや?」

「ちょっと!? ここまで来て無理でしたとか無しよ!?」


 ……トラップ掻い潜るのに気を取られてたが、物理突破力無いぞ、今の俺?

 一旦天井に上り、試しに全力で土魔法を練る。

 出来る全力で、周りの土を固め、固め、固め、固め、弾丸のように圧縮した、一メートルくらいの土の塊を高速で天井に落とす。降りてきた穴を使って、勢いをつけ、本気で叩き付けた。

 その勢いで爆散し、土煙が舞った。

「やったか!?」

「私良く知らないけどそれが駄目な台詞だって常識は頭に入ってるわよ!?」

 つい、シチュエーションに負けて叫んだ俺に、サンの仕業か、変な知識を入れられたハヅキが返す。

 さて、これもお約束の力か、天井に穴を空けることはやはり、出来ていなかった。しかし、傷をつけることには成功していた。ほんの数ミリ。まあ、壊せない訳ではなさそうだ。一か月くらいかければな。

「全力でやってこれか……これ以上となると」

 考え、いったん外に出ることにした。


 要は、速さが足りない、そういうことじゃないだろうか。

 今、上ってきたこの穴は百三十メートル程ある。さっきみたいに少し上げるのではなく、今度はここから全力で投げてみようという訳だ。

 俺の魔力じゃ、破壊に足るパワーなんて出せないが、重力さえあればきっと何とかなるはず。地球は偉大。ガイアイズパワー。ここ地球じゃなかった。この星名前あったっけ。

 余計なことを考えながらも、魔力の操作は全力で行っていた。転がしていた土の円柱を使い、長さ五メートル、直径五十センチ程の杭を、圧縮の果てに仕上げた。

「あ、こいつ使えんじゃね?」

 見つけたのは、ゴーレムの残骸。これもまた、非常に硬い素材で作られている。杭の先端にせっかくだから、頭をはめ込んでみた。


 どことなく満足のいく一品となった杭を、穴の真上に構える。せっかくだ、もっと上まで上げよう。そのまま二十メートル程持ち上げる。

「そんじゃ、せーの!!」

 気合いを籠め、大きく腕を振り下ろす。

 勢いよく穴に呑まれ、見えなくなる杭。

 そして一瞬の空白の後。

 ズドォォンン………!! と、いう衝撃が穴から鳴り響いた。

「お、抜けたなこれ、手応えがある」

「ほんと? というかこれ、音大丈夫? 気づかれるんじゃないの?」

「あ、やべ。忘れてた」

「いやいやいやいや」

「ま、まあ今のは不可抗力……! それにここまで来たら後は取って逃げればいいんだ。それに、取る時に祠の機能は解除されるから、どうせバレるんだし、ちょっと早まっただけさ……!」

 そう言いつつも、正直非常に焦り、ダッシュで穴に飛び込んだ。



 杭からの手応え通り、天井は何とか通り抜けられそうなくらいには壊せていた。

 いきなり踏み込んだりはせずに、穴から様子を窺う。


「……びっくりだな、ここが本当に丁度真上か」

 部屋の中に見えたのは、瓦礫と土に埋もれても真っ直ぐに立つ、魔剣の姿だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ