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ガイア・ハヅキの反省そして勉強会 『ハヅキ』

 焚き火を囲む俺達。

 スフィアに現状の説明も終わり……二周目云々を全部信じたかどうかはさておき、説明も終わったので、次にしなければならない話を切り出した。


「という訳で……今回の顛末の反省会を開きたいと思います」

「……そうね。よっっっっっく反省してもらいたいと思うわ」

「はっはっは。いや、ハヅキさんには反省点がどうやら良くお分かりのようでー。何かな? どうぞ言ってご覧なさい」

「最初っから! 最後まで! まるまる全部よ!? それとその態度ー!!」

 うきーと叫ぶハヅキ。やばい怒らせた。


「おお落ち着け、まあ俺もちょーっと考えなしにも程があったかなーって、反省しなくもないからこそ、今後同じ事が起きないようにこの話し合いをだね?」

「まずあんたのそのおかしい頭をどうにかしてよ!?」

「性格だ。諦めろ。よし次」

「ちょっとぉー!?」

「まあ、俺もちょっと二周目なんて事になって動揺してたんだろう……少し判断力がおかしくなってたのは認めよう」

「自覚あったの」

「振り返ると、一周目の、スキルもあって、魔法も色々使えてた気分が抜けきって無かった気がする……それで魔剣くらいすぐ抜けるぜー、なんて判断に」

「仮に能力とかあってもおかしいからねその考え!?」

 それはきっとハヅキの気のせいだろう。だからスルーした。


「今後は、今出来る事をしっかり認識して、無理のない行動計画を練らないとな……」

「一番の問題は、あんたの無理の無い、の判断基準がおかしいとこよ?」

「……まあ、がんばれ、ハヅキ」

「私が頑張る事なのそれ!?」

「だって、一番被害受けるのはきっとお前だし」

「……ぁー……」

 頭を抱えるハヅキ。強く生きろ。


「えーとそんな訳で、俺の現状の把握が全然足りなかった事が一因でもあると思うので、まずはしっかり、手持ちの確認をしたいと思います」

「おー……」

「おー?」

 頑張らないと、後で自分に被害の来るハヅキは、テンション低くもやる気で、よく分かってないけどスフィアがノリで、それぞれ返事した。




「それで、手持ちの確認って何?」

「例えば、お前の事とか」

「私?」


「何故か初日から慌ただしくて、バタバタしてる内に馴染んでしまって気にならなかったが……お前そういやよく分からない存在だったわ」

「人を珍獣みたいに言わないでよ!?」

「珍獣もいいとこだろ、神様製の謎生物だぞ……そもそも、お前妖精だけど、妖精族なのか?」

「え? ど、どういうこと?」

「いや、サンの奴に、パートナーに妖精でも欲しいって言ったら、その場で作り出したみたいじゃん? 明らかに自然発生してない訳だけど……お前この世界的にどういう扱いなの?」

「そ、そんなこと私に言われても……!? そ、それ言ったらガイアだって、この世界的に珍獣だし!?」

「……あれ? そうなるのか……!?」

「ほら、そんなどうでもいい事細気にしてもしょうがないでしょ!? 私はガイアのパートナー! オーケー!?」

「オーケーオーケー」

 珍獣二人、仲良く気にしないことにした。


「まあそれは置いといてもだ、お前には聞きたいことがある」

「えー……まだ何か?」

「むしろこっちが本題だ。お前、一体何を知ってる?」

「え? ……と、特に隠し事とか何も無いわよ?」

「言い方が悪かったな。お前の常識的な部分がどうなっているのか、非常に気になるんだ」

「……常識?」

「お前、最初の時に何も知らないとか言っていたが、それでも普通にしゃべれてるし、当たり前のものは当たり前に知っているだろう」

「まあ、そりゃそうでしょう? 何せ当たり前の事、なんだし」

「でも、だ。普通は生まれ育つ過程で勝手に付くものだが……お前は、生まれたときからその姿で、最初から知識があるじゃん? つまり、その知識やら何やらは、生み出したサンが与えたものって事になるんだが……」

 今までの会話や、ハヅキが驚いていたり知らなかったりした知識を考えると――


「お前の知っていることがおかしい。この世界の基本的なことはそんなに知らないのに、妙なネタには対応してくる……! さあ言え、一体お前何を植え付けられた……!?」

「え、ええ!? そ、そんなこと言われても……!?」

 まあ、自分が当たり前だと思っていることを説明しろと言われても、何を言っていいか分からないだろうな。

 うん、適当に色々聞いてみよう。


「じゃあまず、そうだな……日本の義務教育は何年?」

「え? ええと……九年?」

「俺の誕生日は六月後半、星座は?」

「えっとー、蟹?」

「蟹座のスクールカーストと言えば」

「最下位」

「購買、パシリに買わせる基本と言えば」

「焼きそばパン」

「ある青年が久々に幼なじみを見かけたので一緒に帰ろうと誘った。しかし、幼なじみの女の子はこれを断った。この時の女の子の心境は?」

「……は!? え、えーと……噂されると恥ずかしいから……とか?」


 ……試しに適当な質問をしてみたが、満点である。

 全部日本の……それも、おかしな方向よりの、学校生活中心の常識と知識の話だったが、全部答えやがった。

 少し方向性を変え、続けてみる。


「俺がこっちに来た時に大人気だった有名アイドルグループ、その名前は?」

「い、いや、知るわけ無いでしょ!?」

「俺も知らん。では現在の総理大臣の名前は?」

「へ? さ、さぁ……?」

「ダイスの目、1~5はクリティカル。96~100は?」

「ファンブル」

「六大陸、一番南は?」

「南極大陸」

「1192年に誕生した日本の幕府は?」

「何言ってるかも分からない!」

「ひとよひとよにひとみごろ。何のゴロ?」

「……は?」

「πr二乗、何の公式?」

「何の呪文?」

「お酒が飲める年齢と言えば」

「二十歳」

「じゃあ、この世界での成人と言えば?」

「え……し、知らないわ」

「一八歳だ。今何年?」

「……西暦じゃ、ないのよね?」

「世界共通で、龍輪歴847年だ……何となく方向が見えてきたな」


 こいつ、基本的に俺の世界の常識がベースになっている。どころか、俺の常識がベースになっていると言っていいかもしれない。

 日本の常識は知っているのにこの世界の常識が無い。なのに、完全にオタクな常識まで混ざってる。

 それなのに、学力のレベルはこっちの世界基準なのか、歴史や数学の質問は全く答えられない。


「……つまり、俺と話は通じやすいが、この世界の事は全然知らない、と」

 なるほど、俺が話し相手が欲しいと言った願いをこれでもかと叶えてくれた訳だ。

「……オタク知識は必要ないだろ何してくれてんだあの駄女神……!」

「え、えっとー……結局どうだったの? 私?」

「要お勉強。そんな良く分からない状況だったろうに、振り回して本当に済まなかった……」

「へ? え、う、うん?」


 妖精だし、この世界の存在っぽいし、サンに作られたし、結構知識はあるかと思ってたけど……この感じだと、俺の方がこの世界に詳しい。

 別に悪い事じゃないが……そんな魔法とか、魔物についても良く知らないだろう状態で、いきなり放り込まれたのが魔剣の祠というのは、流石にまずかったと思う。

 ……今後しばらくは、なるべくハヅキに負荷がかからないような旅を考えようと、決意した。




 さて、次の反省点でも考えよう、と考え始めたが、これもまた、バタバタしててすっかり忘れていた、ある事を思い出した。


「というかそうだ、結局スフィアの能力確認してねぇ」

「あー、そういえば」

「ほぇー?」

 サンの腕輪のステータスチェック機能。祠からこっち、確認するのを忘れていた。


「こいつ前回と違い過ぎるし、特にアリアの奴と一緒なら、中身入ってるのと無いのとじゃ全然性能違うだろうしな……」

「アリア?」

「ああ言ってなかったっけ、前回俺が持ってた聖剣、アルフェ・ディアもこいつみたいにしゃべるんだ。アリアってのは俺のつけた愛称」

「聖剣ー……」

「いや、ええと、まあ、そっちの方が名前の通りいいし。それに性能も聖剣っぽかったし。能力名にも聖剣とか書いてあったし、そこは納得してもらえませんかね……!」

 アリアへの聖剣呼びに過剰に反応するスフィア。アリアへの評価も散々だったし、何か対抗意識でもあるのだろうか。


「ま、まあ何はともあれステータスチェックだ」

 地面に刺していたスフィアを手に持ち直し、装備する。

「ステータスー、チェックー……?」

「説明し忘れたかもしれないが、この腕輪を使えば、俺や俺の装備の強さが分かるんだ」

「……その腕輪も、何なのー……?」

 かなり怪訝そうな、不機嫌そうな声を上げるスフィア。何か気になることがあったのだろうか。

「何なのって言われても別に――は?」

 言いながら、腕輪に触れ、ステータスを開き――――



 ディス・フィア(覚醒)

 力    2400 技    500

 速さ   0    魔力   3000

 体力   0    運    0

 防御加護 0


 特殊

 ・独占の呪い(覚醒)

  ディス・フィア以外装備出来なくなる。


 ・渇望の呪い

  力を欲するものを魅了する。


 ・支配の呪い(覚醒)

  魔族以外の装備者は、理性を支配される。


 ・種縛の呪い

  魔族の装備者は、力の全てを吸収される。


 ・狂化の呪い

  装備者を凶暴化させる。


 ・強奪の呪い(覚醒)

  魔力を剣に奪われる。又、魔力を剣に扱われる。


 ・反転の呪い(覚醒)

  この呪いを浴びた者は、魔族への敵対心を、自身の同族へのモノと認識する。

  装備者は、自身の同族を殺害対象と認識するようになる。

  この呪いは攻撃により伝播させられる。


 ・魔剣錬成(覚醒)

  魔力で刃を形成し好きな形状の武器を使用できる。




「――――――――――――」

 俺と、横で覗き込んでいたハヅキと、揃って沈黙した。


 ――――なにさこれ。

一章の修正も終わったので反省会始めていきます。

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