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魔王を倒したらクリアだと思ってました  作者: アトアル
一章 魔剣があれば楽が出来ると思ってました
11/35

家に着くまでが魔剣強奪

 朝日差す、数刻前まで穏やかな草原だった丘。

 今は、見る影もない岩と土の荒野に。



「私はー、ただ守ってあげただけなのにー、悪者のような言い方はひどいんじゃないですかマスタぁー?」 

「しゃべったー!?」

「どうせ人の体いいように使ってやった事だろそれぇ!? その時点で悪者だよ!? でも助かったから感謝はしてやるよありがとうな畜生!?」

「感謝されてる気がしないーっ。せっかくがんばったのにー」

「頑張り方が他にもう少しあったんじゃないですかね!? あとマスターって何だマスターって」

「いや、あの、どういう状況なの」

「マスタぁーはぁ、マスタぁーでしょぅー? 君はー、私のマスタぁーなんでしょう?」

「展開に着いていけないんだよ。呪いの事もよく分からないままなのに目が覚めたらこの状況で、周り見ろよ周り何だこの世紀末。急に俺を主として受け入れるだのマスターだのいっぱいいっぱいなんだよつまりどういうことだってばよ!?」

「呪いは私にもさっぱりだしー、本当にどう言うことなのマスタぁー? というかー、そもそもこんな荒野でゴーレムゴーレム……状況が分からないのはこっちですーよ?」

「私の方がよく分からないわよ!? 分からないって言ってるでしょ聞きなさいよ説明して――――――――!?」


 三者三様、誰か説明しろと、嘆き問う声が響き渡っていた。




 騒いでも何も解決しないし、とにかくこんな所にもう用はない、衛兵達もいるし、さっさと場所を変えよう、というか、帰ろう。

 ひとまず、そう結論づいたので移動を……始めようとして、倒れた。

 起きあがれない。


「あ……? いや、え?」

 体が、一ミリも動かなかった。

「あー、やっぱりー、無理だったー、みたいー?」

「……どういうこと?」

 理由を知っているらしいディス・フィア。というかお前が原因だろう。何をした。いや、体乗っ取ってたらしいのは聞いたが、そのせいか。倒れ伏した俺の代わりにハヅキが言葉を返していた。

 淡々とした、ゆるく穏やかで、やや冷ややかな声が続く。

「よく分かんなかったけどー、目が覚めたら周りゴーレムだらけでー、襲われそうだったからー、いつもみたいにー、精神呪って倒してもらおうと思ったんだけどー」

「もうここでツッコんでいいかしら」

 ……同じ気持ちだが、今重要なのはそこじゃないので堪えてもらいたい。

「どういう訳かー、精神支配が効かなかったのー? それでー、もうゴーレムも迫ってきてるからしょうがなくー、魔力をいじってー、私が直接マスタぁーの体を使ってゴーレムと戦ったんだけどー」

「……さっきの暴れ回ってたのが、それね。で、それで何でこんなことに?」

「私を装備した時ー、マスタぁー、もう魔力がカラッカラだったのー。それをー、動かすのに使っちゃったからー、全部なくなったみたいー? むしろマイナスー? いちおー、私装備されてたからー、加護も入ってたしー、大丈夫かなーって、動かし続けたんだけどー、ダメだったっぽい?」

「人の魔力好き勝手に使い果たしといて軽いなおい!? それ普通にやりすぎたら死ぬよな!?」

 地面に転がったまま、気力を振り絞ってツッコんだ。なけなしの体力が吹っ飛ぶ感覚。それでもつい、ツッコまねばならないと思ってしまい、叫んでいた。


「だってー、じゃなきゃー、それはそれで死んでるしー? ね?」

「そもそも取り込まれなきゃ俺普通に動けたんじゃないかなって思うんだがどうですかそこ!? ね? って可愛く言えばいいってもんじゃないんだよ!? ゆるした!」

「それでいいの!?」

「もう何かめんどくさい……俺を守って動いたのも、それで助かったのも事実だし……あ、ハヅキ、ちょっと魔石拾ってきて……欠片しかないだろうけど……歩けるくらいにはなると思うから……」

「あ、ウン……了解……」

 

 ……そりゃ魔剣って呼ばれてるんだから当たり前の話だが、命がけで手に入れた剣は、とっても扱いに困る剣だった。いや……魔剣どうこうじゃなく、これは主にこいつの性格のせいか……




 その後、ハヅキがゴーレムの残骸から、懸命に集めてくれた砕けた魔石の欠片で、とりあえず歩くのに必要な体力だけ回復し、さっさと移動を始めた。兎に角、ここから離れたかったからな。

 単純にゴーレムまみれのあんなところで落ち着ける訳が無いのが一つ。もう流石にないと思うが、あんな所で悠長に構えてて、また変なのが出てきても困るというのが一つ。姿は見えなかったから、もう避難したのかもしれないが、衛兵達に見つかっても面倒なことになるのが一つだ。特に最後の奴が危ない。さっさと逃げたかった。


 森の途中まで来たなら、一度野営して回復を待とうかとも思ったが、肝心の野営セットはゴーレムに潰されて使い物にならなくなっていた。探索の邪魔になると、丘に起きっぱなしだったせいで、どこかで踏まれたらしい。手元にあったカンテラも、ゴーレムからの逃走中に落とした。手ぶらに逆戻りである……いや、新しくディス・フィアがあったか。

 俺としては一刻も早く休みたかったが……祠の近くにはいられない。離れても落ち着いて休めるところはない。というわけで、しょうがなく、倒れそうな体にむち打って、フローネちゃんのいる宿屋まで歩くことになったのだ。うん、備えもなしに野宿とかよけいに疲れるだけだからな。仕方ないな。



 街道に向かい、森を行く。

 道すがら、ハヅキにはディス・フィアに呑まれた時の事を簡単に話した。そしてディス・フィアには、とりあえず、お前の獲得までに何があったのか、を話し、ゴーレムに囲まれるに至った経緯を話した。


 神に転生させられたとか、二周目だとか、その辺は話すと長くなるので、どこか落ち着いてから話そうと思う。逆に、こいつに聞きたいことも多いし。

 何せ、今は歩くので精一杯だ。頭が回らない。ここで、これ以上ツッコみたくなるような話が出てしまったら、体が保たない。


 その途中。

「えーと、それでスフィア」

「……? もしかしてー、私のことー? ディが足りないけどー?」

「いや、ディス・フィアって微妙に言いにくいし、長いし。そういう愛称で呼ぼうかと」

「あいしょー……まあー、いいかなー?」

 それに、スフィアの方がガイアと馴染み良いしな。天球スフィア地球ガイアで。

「ああー、そうだぁーっ、聞き忘れてたことがあったんだよー」

「うん?」

「マスタぁー、名前はー、なぁにー?」

「……名乗り忘れたのは俺の落ち度だが、お前名前も知らない奴に主として認めるとか言ったのか……アマミ・ガイア、ガイアだ、漢字とかは……今度説明しよう」

「ガイアー。改めてどうぞよろしくです、ねー、マスタぁー」

「……さっきも訊いたが、そのマスターとか言うのは何なんだ」

「マスタぁーはー、マスタぁーだしー?」

「別に普通に、君とかガイアとか呼べばいいと思うが」

「それでもーマスタぁーはー、マスタぁーだしー?」

「……なんだかよくわからんが、そうか」

「そうだよー? まぁ、呼べっていうならー、君とかも使うねー?」


 と、名前に関して一悶着あったりした。




 街道に向かい森を行く。

 一通り話し終わって、しかし、全く街道に近づいてる気のしない、変わらぬ光景。ひたすらに木だけ続く景色。

 ……この森、こんなに長かったっけ……

 変化の無い、木しか見えない風景。でこぼこして歩きにくい道のり。

 ……来る時は気にならなかったのにな……!

 いや、実際森は結構深いのだ。来るときも半日は森を歩いたはず。それでも気にならなかったのは、ディス・フィアを取りに行くという事へのモチベーションもあったし、何より十分元気だった。今は、体力が限界、そういうことだろう。精神に余裕がない。そんな状態での森歩きは、精神にこそ負担が大きかった。

 それと、来るときとの、微妙な違い。

 来る時は、鞄に野営セットだった。重量は少しあったが、歩きやすかった。

 今は。


「スフィア……お前鞘とか無かったのか……持って歩くのが地味に辛い……」

 右手にディス・フィア。抜き身なせいで、他に運びようがなかったから、持ちっぱなしで歩いていた。

 非常に重たいとかそういうこともないが、それでも剣だ。そこそこは重い。ずっと持っていれば疲れる。特にこんな荒れた道で、体力の最初から無いときなど、非常に重量を感じた。


「しかも形がいびつなせいでバランスも取りにくい……何でそんな形してんだ?」

「私に言われてもーっ、作った人に言えってー、話ですーっ」

 あ、ちょっと怒った。

「いや、非難ではなく。わざわざそんな形してるんだから、何か理由あるんじゃないかと思ったんだが」

「それならー、当然ー、あるよー? この半分の部分はー、好きに刃が作れるのー」

「……ほう?」

「魔力使ってー、まっくろーいもやもやー伸ばしてー、形を自由に作れるのー。刃を伸ばしたリー、槍みたいに突いたりー、斧みたいに威力上げたりー、何でも出来るよー?」

「へぇ……便利な能力だ」

 これも、前周じゃ見たことのない能力だ。スフィアの意志が無かったことに関係があるんだろうが。


「あ、その能力使えば鞘とかも作れるんじゃないか?」

「あー、切れないように覆えばー、出来ると思うよー? そんな使い方ー、考えたこともなかったけどー」

「……いや、本当に鞘なくて困らなかったのかよ?」

「うんー。だってー、納める必要ー? 無かったしー?」

 その理由。魔剣なんて呼ばれてたこいつは。

「持った人が魔力無くなるまで暴れてー、倒れたら別の人が持ってー、魔力無くなるまで暴れてー」

「やめろその物騒な無限ループ!?」

 抜けば血を見るまで収まらないとか、そういう妖刀みたいなの聞いたことあるけど、抜いたっきり全滅させるまで殺し続けるもっとやばい奴だ!?


「だからー、誰かに持って運ばれるとかもー、結構新鮮ー?」

「思った以上に完璧に魔剣だよお前……ともかく、鞘は作れるんだっけ」

 そう、大事なのはそこだ。他の物騒な話は必要じゃない。忘れよう。

 鞘に入れて背負えれば、歩きやすさは段違いのはずだ。


「作れるけどー……無理ー?」

「? どういうことだ」

「言ったけどー、魔力で作るからー」

「あ」

「今のマスタぁーじゃー、倒れるー、ねー?」

 歩く為の体力消費を削るために体力を削る。

 本末転倒だった。


 …………さて、まだ道のりは長いなー何も考えずにちゃきちゃき歩こうかー。

 今のやりとりは、忘れることにした。






「やっと……森を抜けた……俺は、ついに勝った……!」

「何と戦ってるのよ……」

 日が傾き始め、辺りも赤く染まる頃。

 ついに俺は街道にまでたどり着いた。

「これで……後は、道なりに少し行くだけ……!」


 もうすぐ休める。倒れられる。寝れる。フローネちゃんのご飯が食べれる。

 それを思えば、もう限界超えてる気がするこの体もまだ進んでいける……!

 強く決意し直し、フローネちゃんの方こ……宿屋の方向を強く見つめ。

 気づく。

 神から与えられた超感覚。『保護者の眼差し』が叫んでいる。

 とっさに振り返る。目的地の反対、王都の方向。

 この先に、幼女の危機があると。


「予定変更だ急ぐぞ」

「え、ど、どうしたの!? そっち反対だけど、そんな状態で今度は何する気!?」

「何かやばいのか知らんが何かやばい! 具体的にはフローネちゃんがやばい……!」

「あ、うん、わかったわ。そっちね!?」

「えっとー? マスタぁーは一体ー、どうしたのー?」

 ハヅキの、非常に早いその物分かりの良さに、思うところはあったが、今はそれどころではないので、何も問題はなかったことにした。スフィアは全然話についてきてなかったが、これも時間がないのでスルー。


「ぐ……体が気持ちについてこない……」

「森に入った時点で限界だったもの……でも行かない選択肢はないんでしょうね」

「当然だ! すまないハヅキ、先に飛んでいって何が起きてるか見てきてくれないか! 危険そうなら近づかなくていい。手遅れになりそうなら、無理をしてでも全力を出さなきゃいけない……!」

「分かったわ」

 そう短く答えて、全力で飛び立つハヅキ。

 ……ああ、あいつ、あんな速度出るんだ……

 小さい体が一瞬で空に溶けていくのを、体を引きずるように追いながら見送った。



 ほんの数分して、ハヅキが慌てた様子で帰ってきた。

「ガイア! なんか大きい馬車が魔物におそわれてる!」

「魔物? こんな王都に近い街道で……ああまさかヴェアヴァルフか!?」

「ヴェ、ヴェア?」

「クソでかい茶黒い狼の群だったか!?」

「う、うんそう! すっごい大きい奴が二十匹くらいはいたわ!」


 ヴェアヴァルフ。魔力に当てられて異常進化した狼の魔物。俺がこの世界に来て最初にした、冒険らしい冒険がこの、ヴェアヴァルフの討伐だった。そう、魔法使いの初陣でもあったあの事件。

 旅立ってまず魔法都市に行って、魔法使いが仲間に加わり、これからどうしようと言う時だったか。アーディアから来た騎士が、付近に、通常いるはずのないヴェアヴァルフの集団が確認されたと伝えに来た。既に商人や農地に被害が出ていて、巣を見つけて討伐して欲しいという話だった。

 あの時の、既に出ていた商人の被害ってのが、これか!?


 向かう足に、力が籠もる。

「馬車っていうのは!? 襲われてる奴らは無事なのか!?」

「おっきい馬車が一台あって、周りを狼に囲まれてたわ。騎士っぽい人たちが、五人くらいで応戦してたけど、どう見ても分が悪いわ、すぐにやられちゃいそう!」

「騎士が? どういう状況だ……その馬車、王都に向かう奴か?」

「向き的に、こっちに向かってたみたいだけど、それがどうかした?」

「『保護者の眼差し』の反応理由が分からない。フローネちゃんが馬車で王都に向かったのかとも思ったが、向きが違うらしいし。反応的にも、多分フローネちゃんは宿屋にいるしな」

「……場所、分かるの?」

「分からないと助けられまい? 何だその顔は。とにかく、フローネちゃん本人への危険じゃない。となると、何であの馬車に反応したのか……直接の危機じゃなくても、フローネちゃんの危機に繋がる何かがあるってことなんだが……騎士達がいるって言うのもよく分からん。あいつらはそうそう王都から動かんものだと思ったが」

「……フローネちゃん、お父さんが王都に出かけてるって言ってなかった?」

「……女将も、うちで取れた野菜を、他の農家の人と一緒に王都に売りに行ったとか言っていたような、まさかあそこに……!?」

「騎士は……あんた探しについに町を出たんじゃ」

「動いたのは俺のせいか――――!」

 勇者(多分)が逃げたんだもんな! 追うよなぁ!?

 推測でしかないが、きっと間違いじゃないだろう。農地グルフディアを通り、魔法都市ミョルディアまで、俺について知らせ回るつもりなのだろう。勇者逃亡中と。

 ハヅキの活躍により、状況の把握はおそらく完璧に出来た。知りたくない情報まで含めて。


「まずい、このまま助けに行くと騎士に見つかる……! スフィアまで抱えて今更会える筈もない。かといって急がないとフローネちゃんが泣く。そもそもスフィアあっても今の体力でどうにかなるのか……!?」

「半分くらいあんたの自業自得じゃない……でも言ってる場合じゃないでしょ、とにかく助けに行かないと」

「状況がー、何も分からないけどー、マスタぁー、人間にケンカ売ったのー? さっすが私のマスタぁーっ」

「ちょっとそこ分からないなら黙ってて!? そういうんじゃないから!? ……ないから!?」

 混乱に拍車をかけてくるスフィア。違う。確かに人族の連合のトップにちょっと失礼働いたけど、べべ別に反逆とかしてるわけじゃないし? 魔剣盗んだ? いやだなここにあるのは魔剣なんかじゃなく、ただのゆるふわ物騒剣だって……!


「……ん?」

 ふと、スフィアの能力を思い出す。

「なあスフィア、二三訊きたいんだが」

「うんー? なにー?」

「お前、俺の魔力限界超えても使えてたみたいだったが、あれはどういう?」

「私ー、装備してる人の魔力を使えるからー、普通はー、限界でー、意識とか失ってー、使えなくなる状態になってもー、無理矢理ぃ魔力引き出せるからー、その人が限界になってもー、絞れるよー? やりすぎるとー、生命力がー、尽きるけどねー」

 大変危険なことを平然と言いやがる。だがそれはつまり、今の俺の状態でも、スフィアなら魔法が使えるということ。

「それと、魔力で刃を作れるっていったな。あれ、鞘も作れるって言ってたし、刃以外にでもどんな形にもなるのか? それこそ服とか」

「うぇぅー? そんな使い方したこと無いけど……そうだねー、形変えるだけだしー、出来るのかなー? どっちにしろー、今のマスタぁーの魔力じゃー、意識無くなると思うよー?」

「……まあ、そうだろうな……」


 頭の中で、今の状況と、スフィアから聞いた情報を、組み立てる。

 ……この状況を、完璧に乗り切る方法は、コレしか――!


「ちょっとハヅキ、スフィア、話がある」














「ぅ……ぁー、あぁ?」

 目を覚ますと、知らない天井だ……なんてこともなく。一晩とはいえ見知った……フローネちゃんの宿屋の一室だ。


「おれ、は……」

 酷い倦怠感。それにガンガンと頭痛が響く。視界はぐらぐらと揺れて起きあがるのもままならない。

 何とか、上体を起こしたところで、ガチャリとドアが開いた。

「あ、お兄ちゃん! 目が覚めました!?」

「ガイア! 大丈夫!?」

 そこにいたのはフローネちゃんと、その頭に留まったハヅキだった。


「起きて大丈夫なの? 酷いすいじゃく状態だーって、お母さんとお医者さんが言ってたよ? もっと寝てていいよ?」

 パタパタと、俺の周りで世話を焼き始めるフローネちゃん。食欲があるのを確認すると、食堂からスープを運んできて、あーんしてくれた。ふーふーして、あーんしてくれた。俺は、今日この為に異世界に来たのかもしれない。よく分からないが、衰弱してて良かった。

 ……っていうかそうだ。


「あの、フローネちゃん? 衰弱してたって……俺に一体何があったのか、知らない?」

 ハヅキに聞いた方が、詳しい事情は分かるだろうが、フローネちゃんの前では出来ない話もあるだろうし、フローネちゃんに聞くことにした。

「あ、そうだった! お父さんを魔物から助けてくれたんだよね! 本当にありがとうお兄ちゃん!」

 その言葉に思い出す。そうだ、ヴェアヴァルフの群に襲われた馬車を助けに行って……ああ、やっぱりフローネちゃんのお父さんがいたのか。助けれて良かった……ああ、思い出した、思い出した。


「なんか、まっくろな鎧着たお兄ちゃんが、ズバーッ! って、オオカミさん達を黒い光線でみんな倒しちゃったって! お兄ちゃんすごいんだね!!」

 目をキラキラさせて語るフローネちゃん。



 ……ナニソレ? え? 俺?


 ……どうやら、何にも思い出せていないようだ。

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