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都市童話

無人都市アマネ

作者: 滅天使

 あるところに、アマネという街がありました。


 アマネは誰も住んでない無人の街です。


 誰も住んでいないのに何故街なのかというと、ここを訪れる人がいるからです。


 それは旅人であったり、街から街へ移動する最中の商人であったり、あるいは、人知れず誰かに会ったり何かをするための約束の場所に指定したり。


 誰も住んでいない街アマネは、来るものを拒まず、そして去るものを追わず、こうして人がいたりいなくなったりを繰り返す街なのです。


 無人とはいえ、街ですから、建物はたくさんあります。


 かつて誰かが住んでいたような家や、どこかの会社が働いていたような大きな建物や、何かを売っていたようなお店。


 以前の街だった残骸を、今では通りすがる誰かがほんのちょっと借りてはまた過ぎていきます。




 そこに目をつけたある人がいました。


 その人は、街を渡り歩くごとに新しい仕事をして、でもすぐに折り合いがつかず辞めてしまって、また別の街を行くような人でした。


 家も友達も家族もいないその人は、また別の街へ行こうとしていた途中に、このアマネの街を見つけました。


 誰も住んではいないけど、訪れる人はいる街で、その人は新しい仕事をすることにしました。




 まずは水や食料を売ることにしました。


 試しに、偶然来たばかりの旅人に声をかけたところ、すんなり売れました。


 調子づいたその人は、野菜や果物を作ろうと田畑を耕しましたが、アマネの街の土は少なく、岩や小石ばかりでした。


 満足に田畑を作れないこんな土地では、確かに住んで暮らすのは難しい、無人なのも頷けると、その人は思いました。


 仕方がないので、水や食材は一番近くの街から買うことにしました。




 また、秘密裏にやり取りをする者のために、その人はアマネの街中を歩き回り地図を作りました。


 商人はこぞってその地図を高値で買いました。


 また調子づいたその人は、売ったお金で道具を買い、街を少しずつ掃除しました。


 その甲斐あってか、街を訪れる人が増えてきました。


 その人が喜んだのも束の間、増えた人たちの分、売るものを用意するのも難しくなってしまいました。


 お金が足りなくなった分、売るものを少し高くしました。


 すると、買う人は少しずつ減っていき、その人は何も売るものを用意出来なくなりました。


 ついにはその人も、アマネの街を離れ、どこかへ旅立っていきました。


 その人がアマネでの仕事を辞めてしまった為、かつて売られていたアマネの街の地図は、誰も住んでいない街の地図として高値で売られ、再び街に出入りする者が増え始めました。




 それでも今も、アマネの街には誰も住んでいません。

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