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捕食

 七戸は仕留めたデスラビットを貪っていた。


「ごっほ……こんなにまずい肉なんて初めてだ」


 悪態つきながら鋭利な石礫で体を引き裂き、強烈な悪臭を放つ生の状態の肉を無理やり口の中へ押し込む。


 前世ではホームレスの生活を送り、道具がなくてもどう生肉を処理して食べるかを知っていたはずの七戸だったが目の前の食料に、やせ細り食事を長期間とっていなかったであろう自らの体が食べることへの我慢を忘れさせた。


 半分ほど食べ終わった頃、生肉を人間が食したらどうなるかを思い知らされる。


「あぁ……がっ……!」


 激しい腹痛が襲った。

 その場で悲鳴を漏らしながらのたうち回る。

 しかし体はさらに肉を欲し、依然としてては肉のほうへ手が伸び食べ続ける。


 痛みは食べることに比例して激しくなっていく。


 この時七戸は悩んだ、前世で自分を苦しめてきた能力を使用するか否か。


 そしてただでさえ弱っている体に限界が来ようとした時、自分の体に手を置き集中し始める。

 体が脈打ち、骨が軋む音、肉が蠢いている寒気のするような音が発せられた。


 それでも手を体の上から動かさず苦痛から口から漏れる悲鳴はさらに大きくなった。


 やがて脈を打っていた体は静まり、口から発せられていた悲鳴もなくなった。


「っ……はぁ……はぁ……」


 顔は蒼白で肩から息をしながら苦しそうに立ち上がる。

 するとおもむろに近くにあった雑草をとって噛まずに飲み込む。


 今度はお腹に手を当て、その手に力が入る。

 飲み込んだ直後の苦虫をかみ潰した時のように苦々しかった顔は少しずつ力が抜けていって普段の顔に戻っていった。


 そのまま休むことなく湖へ近づいていき少し濁った水を口へ流し込む。


 それから次々と木の葉、木の実、木にへばりついていた虫などを次々に飲み込み、その度に体は脈打ち、苦しそうに顔をしかめた。


 そしてもう数度目かの体の脈打ちを終えた。


「これでよし」


 そこには、始めデスラビットを捕食した時のような苦痛は見られずスッキリとした顔をしている。


「にくらしかった超能力だったけど……これでもう食料に困ることはないだろう」


 七戸は使用するか否かを悩んでいた超能力を使ったのだ。

 その能力の一端の"肉体変化”。

 自身の体をこの森のなかにあるものを食べられるよう体内に森の一部を取り込み、体自体を変化させた。


 試しに食べかけのデスラビットの肉を口にする。

 肉は固く決して美味とは言えない味だったが前のように痛みはなかった。




 充分に空腹を満たしたあと体中血で汚れてしまっていた七戸は一度湖へ行き体を洗った。


 空を見ると空が夕焼け色に染まり始めていた。

 夜の森の危険度を経験からよく知っていたため、急いでどこか寝泊まりできるところを探しにでた。



「……もうここでいいか」


 希望としては山肌の洞穴なんかがあるといいなと思っていたがそう都合よく見つかるものではなく、一晩をこせそうな場所として見つけることができたのは樹齢何百年であろうかと疑問を抱く程度の大樹だけだった。


 もう日は暮れて、時々動物の鳴き声が聞こえてくる。

 あの手この手を使ってなんとか大樹の幹に登り、疲れ果てた体を枝にもたれかける。


 木には猿のような生き物が現れるかもしれないので警戒しようと構えていた七戸であったが、時が経つにつれ眠気が増加していき1時間もすれば寝てしまっていた。




 そして次の朝、日に照らされる事で目を覚ますが危うく大樹から落っこちそうになる。


 大樹から湖まではあまり遠くはなく、少し準備運動したあと湖へ向かった。


 途中、手頃な草や木の実をとって食べたり大きな足音が聞こえ、気づかれないよう身を潜めたしていた。


 そして湖で食事を済ませ、湖を見失わないように注意をしながら森の中を見て回る。

 時折、猛獣が襲いかかってきて戦闘を行い、その度にその猛獣を夕食として食べる。

 ある程度居心地の良さそうな場所を見つけてはそこで一晩を過ごす。


 そんな毎日のサイクルを少しずつ完成させていき、七戸は知らない内に野生児へと近づいていった。

シルバーウィークの最終日。家からあまり出ることなく終わってしまいましたw

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