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新たな目覚め

 ひとりの小学生にも満たないような少年が森の中で大きな岩にもたれて座っていた。


 服は最低限隠すべきところだけを残して破れ落ち、体はガリガリでまるでガイコツのような見た目とみすぼらしい身なりしていた。


 その少年、前世では黒川七戸と呼ばれていた少年が立ち上がる。


「ここは……」


 少しの間、頭に手をやり考え込んだあと納得したように頷き、新しくなった自分の体を舐めるように見回す。


「転生は赤子へ生まれ変わるのがセオリーだと思っていたがまさかこんな中途半端な体に生まれ変わるとはな。あのやりとりは夢ではなかったということはわかったということか」


 辺りを見回すと左右は深い森になっていて背後には大岩、上を見れば青い空に大きな一つの太陽が浮かんでいる。


「ここが異世界というのだから空が赤色になっていたり太陽が2つになっていたりしていると思っていたが前の世界とは違いはないのか」


 あの自称神代行人の男が言っていたこと、押し付けられたチートの力はこの世界にこればすぐにわかると言っていたのを思い出し、腕を振ったりジャンプしてみたり目をつぶってみたりしてみるもののなにも変わったことはなかった。


「まぁいいか、あんないい加減なやつが言っていたことだ、どうせチートは雰囲気作りのでたらめだったんだろうな。仮にそれが本当だとしても端から見れば気づかれないようなチートなんて大したこと無いだろうし」


 そう結論づけたあと自分の体を一通り動かし、新しい体に特に異常がないかを確かめる。

 特に異常も見つからなかったが前の世界の人生を狂わした超能力は出力が落ちてはいたが依然として自らの体にとどまっていた。


「とりあえずこんなところか、しかし僕もこんな森のど真ん中で転生するなんてこっちの世界に来ても境遇の悪さは変わらないな」


 悪態をつくもののその言葉には前の世界にはなかった期待という感情がが少しながら含まれていた。


「さて、そろそろここの場所から動かなくてはな。食べ物も水もなくて餓死してしまったらせっかくの異世界も台無しだ」



 ジャリジャリと音をたてながら素足でゆっくりと森の中を歩いている。

 かなり大きな森の中にいるのかそれとも特別迷いやすいような構造の森なのだろうか一向に森を抜ける気配がない。


 しばらくすると森の中に一本の踏み分けられた道があった。

 しかもついさっきとは言わないまでも何かがこの道を通った跡が残っていた。


「……これに沿って歩いていけば森から抜けられるかもしれないな」


 その道を見てそうつぶやき、淡々とその道を進んでいく。

 あまり長い道ではなかったようで数分歩いたところで森の開けたところに出た。


 そこには大きな湖とそこで水を飲む一匹の動物がいた。

 森を抜けられるという思惑は外れたものの、水を見つけてひとまずは水不足にはならないだろうと安堵の息を漏らした。


 しかしその湖の水を飲んでいる動物がこちらを向いた。

 その動物は体毛は白く、耳が長い、ぱっと見は普通うさぎだ。

 但し大きさは大型の犬にも劣らぬ大きさでよく見れば目は赤く口からは唾液が溢れ、雰囲気は前の世界の弱い被捕食者のうさぎとはかけ離れ、まるで凶暴な捕食者のそれだった。


 しかしそれを受け、視界になにやら無機質な何かが映るがそれを気にかけることすらせず笑みをこぼす、もう目の前のうさぎを自分の食料としてしか見ていないのだ。


 うさぎがその場でひとステップおいたあと、常人では認識することすら難しいスピードで黒川という獲物に迫る。


 しかし七戸には常人の常識は通用しなかった。

 まず初めの高速の突進を横へ飛ぶことで回避し近くにあった自分の中腰程度の高さの岩の影へ入る。

 うさぎは体制を崩すことなく方向を変え、回避した七戸を捉えようと影を潜めた岩へ体当たりした。

 岩は砕け、無数の石礫が宙を舞う。

 うさぎは獲物を自らの巨大な歯でとどめを刺そうと口を開けた。


 しかしそこに無防備な姿をさらけ出す筈の獲物がいなかった。

 その一瞬、困惑がうさぎの体を一瞬だけ硬直させた。


 岩が破壊された時、うさぎの死角にぎりぎり入れるよう移動していた七戸はその一瞬を見逃さなかった。

 宙を舞う石礫を掴み、無様にうさぎの開いた口へ思いっきり突っ込み喉を貫いた。


「………………!!!」


 鮮血が飛び、赤かった目は光を失って声にならないうめきをあげながら脱力していく。

 そして返り血を浴び真っ赤になりながらもそれを無表情で眺める。


 そして始めこのうさぎを見たときから視界に映っていたものがちゃんとした文字を刻んでいることに気づく。


『デスラビットLv.55 死亡』


「……ゲームかよ」


 文字の内容を理解するとそうつぶやいた。

小説家って書いていて楽しいですね!

3話目のこの話を書いている時、私自身とてもノリノリで書いていました。


そしてブックマークをつけていただいた方、本当にありがとうございます!

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