【○月×日金曜日 22:18】
【○月×日金曜日 22:18】
他愛もない会話をしながら、最寄駅の駅のホームに到着。
「神山くん、送ってくれてありがとう。また、月曜日会社でね」
会社用の笑顔を向け、軽く上げた右手を左右に振ってみる。
ドストライクと分かった以上、可愛い女子全力でアピール。心の中で、浅ましいな自分と呟いてみるけど、長年隠れ腐女子をしていた私の鉄壁の仮面は、笑顔を崩すことはなかった。
終始繋がれていた手を、離すのは名残惜しいけど離さない事には帰れない。
「あの、手いいかな?」
視線を繋いだ手に落とすと、離すどころか力が込められた。
「谷山さん。駅降りてから家までってどれぐらい?」
「うーん。歩いて20分ぐらいかな」
電車が到着して、アナウンスが流れ始めた。
「え?え!!?」
手は離されることなく、急に歩き出した神山くんに引き寄せられるように私は電車に乗り込んでいた。少し空いた車内に発車の音楽が響き、ドアが機械音をたてて閉まった。
「こ、神山くん、電車反対じゃ・・・」
「谷山さんが、酔っ払いに絡まれたらいけないから家の前まで送るよ」
少しネクタイを緩めながら、ハニカム顔はアニメか漫画の世界だけだと信じていた私に、何らかのフラグがたちそうです。