【○月×日金曜日 22:03】
【○月×日金曜日 22:03】
「谷山さん、ちょっといい?」
そう言って、近くのコンビニへと入っていき、水を手に取るとレジをすませた。
喉でも乾いてたのかな?と思っていたら、キャップを開けて私へと差し出してくれた。
「はい。少しでも飲んでた方がいいよ」
「あ・・・ありがとう」
一口口をつけると、体に水が行き渡っていく。私が飲み終わると、当たり前の様に水を持ってくれた。ここに来る道中も、歩道でもきちんと車道側を歩いてくれる辺りが、やっぱり紳士だと思う。
コンビニでも、お店の前で待っててと言わずに私を一緒に連れて入ったのは、酔っ払いが多い繁華街を気にしてだと思うし・・・。
今まで、女子社員にモテている、というイメージが先行していて自分の恋愛対象の枠の中にいれてなかったけど、よく考えれば・・・神山くんは、私の理想そのものなのかもしれない。
自分用に買った水を飲む彼に視線を向ける。上下する喉仏、ペットボトルを持つ手の血管。
恋愛対象ドストライクと脳が認識すると、いつもなら何気なく見ていたことさえ、そこはかとない色気を感じてしまう。
「ん?どうした」
「なんでもないよ」
(落ち着け自分)
繕った笑顔を向け、心の中で何度も唱える。
いつもなら、付き合う前に「試そうか」と軽いノリで体の相性を確かめるけど・・・。
相手は、会社の同僚。好意を持ってくれているのは、送って帰ってくれる時の言葉で分かったけど、それが”付き合おう”とイコールとは限らない。中二病を患っている、童貞な訳じゃないのだからガツガツしないように、心の中で深呼吸をして冷静を取り戻した。
とりあえず、一番くじと神山くんを天秤にかけてしまった自分を全力で殴りたい気分。