【○月×日金曜日 21:24】
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事を辿れば、会社の飲み会の席だった。
「谷山さん、大丈夫?酔ってるみたいだけど」
社内の女子社員だと知らない人はない、イケメンで有名な同僚の神山くんが心配をして声をかけてくれた。
「うん。大丈夫~。でも、酔っぱらちゃったから、今日は二次会行かないで帰るね」
同部署で、40人近く集まっている飲み会だから、一人抜けても問題ないと私は腰を上げた。
「ちょっと、待ってて」
そう、私に告げると神山くんは幹事の元へ行き何かを伝えて戻ってきた。
「じゃ、行こうか」
2時間飲み会があったとは思えないぐらい、正されたスーツ姿の彼が私へと手を伸ばす。
「え?」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔の私に、神山くんは居酒屋に不似合いな爽やかな笑顔を落とした。
「ほら、そんなに酔っぱらっていたら、千鳥足だろ。送っていくよ」
「え!悪いよ。私は自分で帰れるから。神山くんが、2次会にいないと女子社員がっかりしちゃうよ」
ふらつく足を、きちんと揃えて”自分は大丈夫”とアピールしてみる。確かに酔ってはいるけど、歩いて帰れないほどではないし、彼に送って帰ってもらったら、今週から始まった大好きなアニメのコンビニの一番くじが出来ない。それは由々しき事態だ。
「本当に、大丈夫だからね。ほら」
ニッコリと自分の中で可愛いと思われる微笑みを神山くんに向けてみる。それをみて、一瞬考える仕草をした神山くんは、私を上回る微笑みを返して爆弾を投下した。
「俺は、2次会に谷山さんが行かなくてガッカリだから、谷山さんを送って行きたいだけど」
「・・・っ!!!」
サッと手をひかれ、私たちは一目を忍ぶように店をあとにした。
イケメンで仕事もできて、紳士と名高い神山くんが、ナンパよろしくな台詞をはいて私の手をひいている。
女性に優しく紳士的と言えば聞こえはいいけど、つまり女慣れしているとも言える。会社の女性社員も浮足立つぐらいだから、今までもモテ男人生を歩んできて意外とチャライのかも知れない・・・。
紳士的からの、チャラ男ってどんなギャップ萌えだよ!!っと心の中で突っ込みながら、少し前を歩く神山くんのの背中を見つめていた。