~四十五の巻~ 女子
すると頭上から、
『ぶっ、』
『あははははは。』
セイの爆笑が降ってきたのだった・・・。
『あははは!そうか、囲炉裏に飛び込むか!』
『其れは流石にまずい故、離してやらねばなるまいか。』
『ははは、嗚呼苦しい、斯様に笑うたのは初めてだ、あははは、珠はやはり面白いなぁ。』
などと申して離してはくれたが、未だ笑うておる。
漸く笑いが収まると、
『然れど何故其れ程迄に嫌がる?此処には和哉も風矢も誰も来ぬぞ。』
『そういう問題ではござりませぬ!』
『だ、第一、セイが居るでは・・ありま・・せぬ・・か、しかも・・な姿で・・・、』
と最後はぶつぶつと、下を向いたまま呟くと、
『ほぉ?私が?何だと?』
しっかり聞き取ったのか、意地悪く尋ねてくるので、
『し、知りませぬ!』
私がぷいと横を向き、
『と、兎に角、私はあちらに行っております故!』
そう告げて行こうとすると、
不意にふわっと温かくて大きな手が頭に載せられた。
『やはり珠も女子だったのだな。』
先程迄とは違う、落ち着いた優しいセイの声に、今度はどぎまぎしてしまう。
『わ、私は初めから女子でござります!』
『女子では無く、赤子の間違いではないのか?』
『わ、私は、赤子ではござりませぬ!』
真っ赤になって否定すると、
『先程迄、うぇんうぇん泣いておったではないか、赤子と何処が違うのだ。』
とからかう様に申すので、
『あ、あれは・・・、』
赤子が泣くのとは違います、と申そうとすると、
突然セイは恐ろしい程真剣な眼差しで、
『然らば解ったか?』
『えっ?』
『あの折の答えだ。』
『解ったのか!?』
逸らす事が出来ぬ強い眼差しで、重ねて尋ねてきたのだった・・・。




