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~三十七の巻~ 二人で

 そんな私達は、今日は野苺の園迄足を伸ばしておった。


『姫様、どうぞ。』


笹野が途端に私の傍に飛んで参り、汗拭きにと布巾を渡してくれた。


『ありがとう。』


私が礼を申して首筋の汗を拭っておると、


『どうだ?どうせ汗をかいたのだ、釣りでもせぬか?』


突然セイが言い出した。


『和哉!珠と河原へ行く。』


『お待ちください、若。』


私もお供致します。


当然の様にそう仰った和哉様に、


『よい、其のまま風矢の相手をしておれ。』


何故かセイは斯様に申して、


『ほら、行くぞ!』


私を急き立てた。


『若?』


『若?』


背中に和哉様の声が突き刺さってくる。


『セイ?和哉様が・・・。』


そう申す私に、


『偶には二人きりも良いだろう?』


と目線だけ此方(こちら)に向けて、にやりと笑うた。


『あら申し訳ござりませぬ、お邪魔でござりましたのですね。』


すると直ぐ後ろから澄ました声が返ってきたので振り返ると、


『気が利かず失礼致しました。』


斯様に申して笹野が回れ右して戻るところだった。


『えっ?ちょっ、笹野!』


構いませぬ、と続けようとした私の言葉を、


『笹野、済まぬ。』


『後程和哉達と共に来てくれ、夕餉は期待しておって良いぞ。』


『珠が足を引っ張らねばの話、だ・が・な、ははは・・・。』


そう申して遮った。


『畏まりました。』


笹野はセイに丁寧に頭を下げると、


『では姫様、くれぐれも青馬様のお邪魔はなさらぬ様、お気を付けて・・・。』


と私に意味有りげな笑顔を向けて風矢達の元へ戻うて行った。


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