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~三十一の巻~ 風矢
其れからの毎日、私達は午前中は屋敷で学び、昼過ぎにおやつを持参して散策に出掛るのが日課となった。
其れは私にとって生まれて初めて味わう、幸せで楽しい日々だった・・・。
◇◇◇◇
再びお会いさせて戴いた翌日、早速出掛けた私達を、以前から同じ様な暮らしをしておった事もあり、咎める者は誰もいなかった。
風矢は納得していなかったようだが、其れでも渋々私達に随行してくれた。
『如何なる事がござりましても、姫様をお守りするのが、私の責務でござります故。』
其れだけ申すと、ぷいっと横を向いてしまうたが、其れにより正面に現れた風矢の耳は真っ赤だった。
八つも年上の筈なのに、斯様に意地っ張りで素直でない風矢が、私は面白くて好きだった。
何だかんだと申しても、必ず最後は私達の味方になってくれる。
其処には、歳は離れておっても、笹野への深い愛情が感じられたし、私にとっては優しいお兄様の様な存在だった。
恐らく、遠からず青馬様方とも打ち解けてくれる筈だ。
特に、少々堅物そうな和哉様とは、風矢の人柄をご理解戴ければ、以外に馬が合うのでは?と密かに期待しておる私だった。




