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~二十九の巻~ 守の懸念

 青馬が和哉の説教を受けておった同じ頃・・・、


『姫様、あの者達とお会いになられるのはお止めになられた方が宜しいと思います。』


珠もまた風矢に小言を言われておった。


『風矢様、何故(なにゆえ)其の様な事を申されるのでござりますか?』


返事をしない私に代わって、堪らず笹野が問うていた。


何故(なにゆえ)だって?』


何で其の様な事も解らぬのだ、という心の声を十二分に含んだ声音で、風矢は笹野に向き直り、


『明らかに怪しいではないか!』


『絶対に何か訳ありに決まっております、しかも良くない。』


『風矢様!しぃ―!』


笹野は口に指を立てて、風矢にこれ以上余計な事を申さぬ様に小声で促した。


何故(なにゆえ)止める?』


風矢が理解出来ぬという顔で、同じく小声で返してきたので、


『姫様がお可愛そうでござりましょう?』


と珠の気持ちを代弁すると、


『はぁ?深入りして万が一姫様に何かあったら、其れこそ大変ではないか?』


『結局傷つかれるのは姫様なのだぞ?其の方が余程お気の毒ではないか?』


『今の内に諫めて差し上げるのが、お側に仕える者の役目であろう。』


二人が屋敷に戻る道すがら、ずっと斯様なやり取りを繰り返しておった中、其の様な二人を尻目に、珠はまるきり二人の会話が耳に入っていなかった・・・。


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