~二十八の巻~ 守の危惧
『若、あの者達に関わり合うのは、もうお止めください。』
珠一行と別れた途端、和哉は青馬に斯様に説教してきた。
『いつの日か、あの者達は、必ず災いとなりましょう。』
『災いの種を招かぬ様に、今迄必要以外には村に近づかず、他人との関わりを一切断って、息を潜める様に隠れ住んできたのは何の為ですか?』
『今迄の我々の苦労を無にしかねぬのですぞ!』
『・・・』
『若!』
『聞いておられるのですか!!!』
『これは運命なのだ・・・。』
『はっ?何と?』
小さく紡がれた青馬の言葉は和哉には届かなかった・・・。
◇◇◇◇
『あの者達に会うのを止めるつもりは無い。』
青馬の答えは明快で、何の迷いも感じられなかった。
『若!』
『ですがあの娘子は・・・、』
『解っておる、恐らくあの者達はこの地の官吏の身内。』
和哉の言葉を遮って、青馬は淡々と告げた。
『其れをお解りになられておられながら何故でござりますか?』
『縦しんば娘子達は話さずとも、あの風矢と申す守役は、ああ申してはおりましたが信用出来ませぬ。』
『如何せん、あの者達が約束を守うたとして、家人があの者達の行動を不信に思うて調べに来ぬとも限らず、危険が多過ぎます。』
『万が一、土地の官吏に気付かれたら・・・。』
其の場に立ち止まり、和哉が必死に訴えておると、
『滅多に人が来ぬ村外れとはいえ、斯様な往来で騒いでおって誰かに見られたら、其れこそ騒ぎになるぞ。』
そう青馬は申すと、
『帰るぞ。』
と屋敷に向かうて、早足で歩いて行ってしまった。
『青馬様!お待ちください、まだ話は終わってはおりませぬ!』
青馬に追い縋る和哉の声は、どんどん離れていく主の背中に、まるで跳ね返されておるようだった・・・。




