~二十七の巻~ 秘匿
『私達は、世俗から離れ、先祖の供養をしながら静かに暮らせる土地を求めてこの地に移り住んで来た者。』
『故に私達は、周囲から隔絶した静かな暮らしを望んでおるのだ。』
私の目を真摯に見つめられ、斯様に申された青馬様に、
『青馬様のご真意、承りました。』
『神に誓うて、お二方にお会い致しました事は、家人にも誰にも申しませぬ。』
私は後ろを振り返って、笹野と風矢の二人にも、青馬様に其の旨お約束申し上げるように促した。
すると先ず笹野が、
『私も誰にも話さぬとお誓い致しまする。』
と頭を下げてくれたのでほっとしておったところ、
『然れど姫様、伯父上にも申し上げぬなど・・・、』
斯様に申した風矢が青馬様を見る目は訝しげで、青馬様達を明らかに怪しい者達と認識しておるようだった。
『無礼な!!!』
和哉様が怒りの表情で青馬様を庇うて前に出ようとなされたのを手で制されて、
『構わぬ、出来ぬと申す者を止める術は無い。』
と仰る青馬様の目はどこ迄も穏やかで、微塵も動揺など見られなかった。
『風矢!』
私は溜まらず風矢を呼び、
『私は風矢を信じております!』
と告げた。
そう申した私に、
『はぁ、全く姫様は狡いですね。』
と半ば呆れた様に溜め息を吐きながら、
『分かりました、他言は致しませぬ、勿論、伯父上にも・・・。』
としぶしぶながらも風矢も誓うてくれた。
『何かあったら叱られるのは私なのに・・・。』
などとぶつぶつ申しておる風矢は無視して、
『青馬様、誰にも申しませぬ、申しませぬから、また此方にお邪魔する事、お許し戴けますか?』
私が泣きそうになりながら懇願すると、
『来るななどと、誰も申しておらぬぞ。』
『私は明日も明後日も毎日あそこにおる故、来たかったら来たい時に何時でも来れば良い。』
そう申されて腰を屈め、私の頭を優しく撫でてくだされたのだった。




