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~二十四の巻~ 収穫
次の瞬間青馬様は、おもむろに手にされていらした木刀を上に向け、枝を打ち付けられた。
すると突然雹か霰の如く梅の実が一斉に降ってきた。
私達が呆気にとられて見ておると、
『和哉、何をしておる、ぼおっとしておる暇が有ったら手伝え!』
青馬様は、未だ冷ややかな目を私達に向けて少し離れたところに立っておられた男の方に大きな声を掛けた。
和哉と呼ばれた其の男の方は、
『ぼおっとなどしておりませぬ!私は若の事を!』
とまだ何か言いたげだったが、
『はぁ。』
と一つ大きな溜め息を吐くと、
『この事はお父君にご報告させて戴きますぞ。』
斯様に申されて別の木の下に行き、青馬様と同じ様に枝を木刀で打ち付け出された。
途端に又たくさんの梅の実が、茣蓙の上にばらばらと落ちてきた。
『風矢!』
私が風矢に目配せすると、
(やはり・・・、)
という様な何とも情けない顔をして、とぼとぼと別の梅の木の下に行き、差しておった刀を上に向け、
『刀を斯様な事に・・・、天罰が下る。』
とか何とかぶつぶつ申しておったが、同じ様に枝を打ち付け実を落としていった。




