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~十九の巻~ 外出許可
風矢が漸く動ける様になったのは、あの日からひと月も経った初夏の爽やかな日の事だった。
私は思い切って、あの日お世話になったお方にお礼を申し上げに行きたいと春野に告げてみた。
すると春野は、
『姫様がどちらかにお出掛けになりたいのを、ずっと堪えていらっしゃったのは、存じておりましたよ。』
と笑うて、
『風矢と一緒でござりましたら宜しいでしょう。』
『このひと月、よく我慢されていらっしゃいました故。』
『余り遅くなりませぬよう、お気を付けてお出掛けくださりませ。』
と送り出してくれた。




