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~十六の巻~  秘密の目印

 ずんずん歩く背中から遅れぬ様に、時に小走りで付いていきながら、次に来る時に迷わぬ様に何か目印になる物が無いかと必死に目を凝らしておると・・・、


『再びあの場所に行きたいのなら、村からこの森に入ったら、取り敢えず川沿いにずっと進むがよい。』


『暫く行くと川の中洲に、釣りをするのに丁度良い、大きな岩が点々とした“神々の沐浴場(もくよくじょう)”と呼ばれる場所が見えてくる。』


『其の付近の大木に、私が編んだ太い紐が結んである故、直ぐに分かる筈だ。』


『其の大木を見付けたら、其処を入り、同じ様に紐が結んであるところを辿ってくればよい。』


『私が付けた目印だが、お前達には特別に教えてやる。』


斯様に振り向きもせずに教えてくだされた其の少年が、照れておられるのだと私には分かった。


気が付くと確かにぽつんぽつんと、少年の肩口当たりの高さに、紐が結ばれた大木があった。


そうして暫く歩いていくと、目の前に綺麗な川が現れた。


其処には、伝って行けば向こう岸に渡れるだろう、表面が平たくなった大きな岩が、川を横切って点々と続いておる。


『後はこの川沿いに行けばよい。』


斯様に申されて再び前を向いてずんずん歩いて行かれる其の背中から、何故か置いていかれたくないと私は思うたのだった。


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