~十五の巻~ 苺狩り
『『わぁ~!』』
私達は揃って感嘆の声を上げた。
『姫様ぁ、此処です!此処でござります!風矢様と昨年見付けた・・・。』
嗚呼、何と美しい、と笹野は感涙しておる。
『どうもありがとうござりました、此れで疱瘡を患うて寝込んでおりますこの者の婚約者に、苺を食べさせて上げる事が出来ます。』
と私が丁寧に腰を折ってお礼を申し上げると、
『構わぬ、丁度私も来るところだったのだ。』
『其れより早く採って帰らねば日が暮れるぞ。』
斯様に申されるので、慌てて辺りを見渡すと、確かにもうかなり日は傾いておった。
其れから私と笹野は、互いの籠がいっぱいになる迄、夢中で苺を採った。
『姫様、凄いです、こんなに採れました!』
笹野が籠を此方に向けて自慢するので、私も負けじと、
『私だって!』
と籠を見せて、お互いの検討を称え合うておると、
背中越しに、
『もう良いのか?』
と言う声が掛かった。
振り返ると、其の少年は既にぱんぱんに膨れ上がった革袋を足元に置いて、座り込んで此方を見ておられた。
『も、申し訳ござりませぬ。』
『待っていてくだされたのですか?』
私がそうお尋ねすると、
『お前達二人だけで帰れるのか?』
『行くぞ!』
と申されて又さっさと歩いて行かれてしまったので、私達は再び慌てて後を追い掛けたのだった。




