(短編)世界の半分をくれてやる - 500文字
「ここがバルハラのエインヘリヤル第072層最終防衛ライン、通称『魔王の間』か。やっと辿り着いたな。このでかい扉を抜ければ……ギィ……ガチャン!」
「ぶはははは! よくぞ来たな、勇者よ! ここまで一人で来たお前の実力は認めてやる。そこでだ。お前の実力をかって私の部下にしてやる」
「ふざけるな! なんでお前の部下にならにゃならん!」
「世界の半分もくれてやるぞ?」
「それはいい提案だな」
「そうか。じゃあ受けてくれるのか?」
「だが断る!」
「なんだと!?」
「俺は世界の半分など要らん! 欲しいのは全てだ!」
「全てだと? 何と強欲な! という事は戦いは避けられぬという事だな?」
「勘違いするな! 俺は世界の全てを手に入れる。この世界と、そしてお前の唇もだ!」
「ゆ、勇者! な、何をする! や、やめろ! 私の唇を無理やり奪おうとするな! わ、わたしはこれでも生娘なのだぞ! 初めてのキスの相手は旦那様となる殿方と決めておるのだ!」
「うるさい! 今夜お前はこの俺の手で生娘じゃなくなるんだ! そんな事どうでもいいだろう?」
「ゆ、勇者さま! やめてください! ゆ、勇者さま!」
「ま、魔王! 俺はお前を一目見た時からずっと好きだったんだ!」
「ゆ。勇者さま! わたくしも一目見た時からあなたの事が……」
めでたしめでたし。