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ラベンダーの空  作者: 凌月 葉
14.ヒーローの生還
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14.ヒーローの生還 3

14.ヒーローの生還 3


 ジンが扉を開けて会場なっている塔の1階に入る。扉の中は暗く、前回の時と同じように冷たく湿り気を帯びたかび臭い空気がつんと鼻についた。ジンの後ろにはタカヤが続き、その後に不安そうな足取りのエリスを後ろからかばう様に抱えたアッシュが入ってきた。


「相変わらずココは真っ暗だな……。エリス、今灯りをつけるからな」ジンはエリスに声をかけると、光りの玉を空中に放り上げた。その途端に、しっとりと濡れた石造りの壁と床が見えた。前回よりも部屋が狭く、壁には数本の通路が続いているのが見える。



「前回とは造りが違うって事か……」ジンは部屋の様子を見回しながら独り言を言った。


「迷路になってるのかな?」いつの間にかジンの隣に並んだアッシュが言った。


「そうみたいだな」屈んで床の様子を確かめていたタカヤが、体を起こしてジンとアッシュの顔を見ながら言った。


「アッシュ、風で通路の様子を探ってくれないか?タカヤは、エリスのことを頼む」


 ジンは身をかがめてエリスの顔を覗き込んで、安心させるように微笑みかけてから静かに頷くと、スッとエリスの体を抱え上げてタカヤに負ぶわせた。


「よっしゃ、任せとけ!エリス、俺にしっかり掴まってろよ、ちゃんと護ってやるからな!」タカヤが、背中のエリスに向かって声をかけると、エリスは緊張した面持ちのまま「うん」 と頷いた。


「左から2番目の通路の先には進めるみたいだけど、他の通路はみんな行き止まりみたいだよ」静かに目を閉じて、両手を広げて術を使って風の行方を探っていたアッシュが二人に声をかけた。


「そうか、ありがとうアッシュ。じゃあ俺が先頭に立つから、次にタカヤ、その次にアッシュの順で進もう。床にも何か仕掛けがあるかもしれないから。ここからは飛んで進むぞ」ジンが二人に声をかける。


「オッケー」二人はその声にすぐさま返事を返して、ジンの後ろに続いた。アッシュが探った通路の先には、入り口の部屋とあまり変わらない大きさの広間に続いていた。


「扉も何にもないな」いち早く通路を抜けたジンが、壁や天井を見回しながら呟く。


「ジン、下だ!床に仕掛けがあって、地下室につながってる」エリスを背負ったままのタカヤが、床の一点に視線を向けながらそういった。その言葉を受けてアッシュが床に屈みこんで手をかざす。


「ああ確かに、この下に通路があるよ」


「さすが、地属性だなタカヤ!」ジンがすかさず声をかける。


「エリスは僕が預かるよ」アッシュがタカヤの背中に居たエリスを、自分の胸元に抱きとめた。「よろしくな」とタカヤはアッシュに声をかけてから、床に向かって手をかざす。


「ちょっと下がってろ」タカヤの声にしたがって皆が壁側に身を寄せると、タカヤの手のひらから放たれた光が床を覆う。その後、小さな地響きとともに床の一部が崩れ落ち、地下室へ向かう階段が現れた。


「ココは大丈夫みたいだ。ただ、瓦礫がちょっと残ってるから足元に気をつけろよ」タカヤは、地下室に向かう階段の前に身をかがめ、中を覗き込んでから一同に声をかけた。 その後も3人は見事な連携プレーで、次々とトラップを抜け、迷路をこなして無事に塔の外に出てきた。


「やあ、お帰り」塔の外ではあの試験官が出迎えてくれた。


「ただいま」その声に真っ先に返事をしたのは、ジンに抱えられたエリスだった。その後エリスは、ジンの腕の中から降りパッと試験官の下に駆け寄る。


「エリス、試験は怖くなかったかい?」試験官はスッとエリスを抱え上げると、優しい口調でエリスに尋ねた。


「全然怖くなかった。それどころか、すごく楽しかったよ。パパ」


「「「ぱっ、パパぁ~?」」」驚愕の表情で、3人が素っ頓狂な声を上げた。


「すまん、言い忘れていた。エリスは私の娘だ。急に試験の日程が決まったので、前回のように下級生役になる試験官が居なかったんだよ」クツクツと愉しそうな笑みを含みながら試験官が言った。


「護衛ありがとうございました」エリスは試験官の腕のなかから、スルスルっと地面に降り立って3人の前に進み出ると。ペコリと頭を下げた。


「いいえこちらこそ。試験に付き合ってくれてありがとう。ご苦労様でした」


「エリス、ありがとな」


「エリス、ご苦労様」3人がエリスの前に膝まづいててナイトのような礼をすると、エリスは少しだけ照れたように笑ってから、3人の頬にチュッと小さなキスを落としてから父親の元に駆け寄った。少女からの突然のキスのプレゼントに、3人が照れた笑いを浮かべるとエリスは試験官の足元に身を隠した。


「おめでとう。3人とも合格だ。娘が世話になったな、ありがとう」試験官は娘の頭に手を置きながら笑顔で3人に合格を告げた。


「いえ。大事な娘さんを無事に届けることが出来てよかったです」ジンが試験官にそう答えると、アッシュとタカヤも続いて頷いた。


「お兄ちゃん達ありがとう!それと合格おめでとうございました」エリスは、試験官の足元からひょこっと顔を出して3人に向かって声をかける。


「ううん。エリスがいい子にしててくれたおかげだよ。ありがとうね」アッシュがエリスに向かって声をかける。


「エリス、ありがとう。またな!」タカヤもエリスに向かって片手を上げた。


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