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ラベンダーの空  作者: 凌月 葉
9. 白く輝く花
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9. 白く輝く花 5

9. 白く輝く花 5


ジンには年の離れた二人の姉兄がいる。八歳上の姉のルナと五歳年上の兄のデュークだ。


 末っ子のジンは、両親からは甘やかされて育てられてきた、と今は思う。姉のルナも、まるで母親のように口やかましいことを言いながらも、いろいろと面倒を見てくれていた。兄のデュークだけは、いつもジンに対して厳しいことを言ってきたが、それも今考えれば自分の事を思って言ってくれていたんだと思える。 しかしラベンダーには、そんな風にかまってくれる兄弟はいない。大きな愛情を持ってフローラに育ててもらっているが、せめて自分がここにいる間だけでも、自分がラベンダーのことを兄弟のように少し甘やかしてやってもいいかな?と、ジンはそんな風に思うようになっていたのだ。


 翌日の夕飯後から、ラベンダーとジンは預言書の解読を始めることになった。フローラには、ジンから大学に提出するためのレポート作成をするからと説明をした。なんの知識も持たずに、古代ルーディア語を現代語に解読するためには、3冊の辞書を介しそれぞれの文法書を調べなければければ把握できない。そのために、ラベンダーの机の上は辞書やら文法書で一杯になっていた。


「よくもまあ、こんな面倒くさいことを一人でやろうとしたな」


その本の山を見ながら呆れ顔で言うジンに向かって、結構たのしいよとラベンダーは嬉しそうに笑った。


「んでさ、なんでこの本を調べようと思ったの?これ薬草の本じゃないだろう?」


ジンは預言書のページをめくりながら尋ねた。


「えっと……。調合室で本を探してて見つけたの。なんでこの本にしようと思ったんだっけな?わかんない」


「わかんないって……。じゃあ、これだけたくさん書いてある詩の中から、なんでこの詩を選んだの?」


「えっと、本を手に取ったらここのページが光ってるように思えて、で開いてみたの」


「ふーん、光ってみえたね~」


「でね、ほらここ。『すべてを浄化する白く輝く花』って書いてあるでしょ?」


「ああ」


「メリーベルの病気もさ、浄化してくれるかな?って……」


「それで……」


「うん、一応あちこちのページを見てみたんだけど、なんかこれが一番近いような気がして……」


「そっか」


「てかさ、ジン。ちゃんと教えるつもりある?」


「もちろん、そのつもりだけどなんで?」


「なんかさっきから、私に質問ばっかりしてるから、教えるつもりないのかと思った」


「え?あの……そんなことないよ、ただ、なんでこれなのかな~?って思ったから聞いただけで……」


 ジンにしてみたら、フローラを裏切っているという気持ちは否めない。そのために、フローラから何か聞かれたときに、何故ラベンダーがこの詩を見つけ解読をしようとしたのかを少しでも説明できるように、経緯だけでも把握しておきたいと思ったのだ。


「でさ、もう一度聞くけど、大学に提出するほうのレポートは大丈夫なの?」


「うん。あっちはまだ時間があるからね。でも、こっちはもう時間がないかもしれないから……」


「時間がないって?」


「メリーベル……だいぶ具合が悪いみたいなの」


「え?まじ?」


「それとこの前、まほろば草の花が咲いたでしょ?」


「う、うん……」


「今探してる「白く輝く花」って、まほろば草の花みたいな感じじゃないか?って思ったの」


「え?」


「最初はね、まほろば草の花がそうなのかなって思ったの。でも、どうも生育条件とかが違うんだよね。でもきっと花の形とかは似てるように思ったんだ。だから、もう一度調べてみようって」


「そっか、それで……。まほろば草の花が咲いたときにあんなに喜んだのか」


「うん……」


「わかった。じゃあ早く始めよう。早くしないとテレビ講義の時間になっちゃう」


「そうだね」


『預言書』は古代ルーディア語の中でも、特に古い言語と独特の文法を用いて書かれていたために、魔法の呪文として使っているジンでさえも、それを正確に現代語に訳すのは容易なことではなかった。



        「 霧宿りし命の森 

         凍てついた蒼き鏡に 

         月が己の姿を映すとき

         万物を浄化せし、白く輝く花咲かん 」



「はっ……」


 ようやく詩の訳が終わってジンがその詩を口ずさんだ時、ふとジンの脳裏に、蒼く澄んだ光に照らされた氷の中で凍いた姿で横たわる少女の姿が一瞬映り、全身の血があわ立つような感覚に襲われた。その少女が、ラベンダーに似ているように思えたのだ。


「ん?ジンどうしたの?」


ラベンダーは、隣で身を硬くするジンの顔を覗き込む。


「え、あ、なんでもない……。とりあえず、詩が訳せてよかったなって思っただけ」


「そっか。ご協力ありがとうございました。明日から、白い花が何の花なのかそれを調べなきゃね」


「あ、うん。そうだな……」


ジンはラベンダーの横顔を見ながら、今脳裏に浮かんだ光景がただの錯覚であって欲しいと願わずにはいられなかった。




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