7. 秘密1
7. 秘密 1
翌朝、普段とは違ってジンはあまり食欲がなかった。
「あれ、どうしたの?昨日ロジャーさんがベーコンとかたくさん持ってきてくれたから、遠慮しないでもっと食べていいんだよ?」
先日食事のことで文句を言ってしまったラベンダーは、ジンがそのことを気にしているのかと思い声をかけた。
「いや、そうじゃないんだ。なんか食べたくないっていうか、だるい」
「そういえば、ちょっと顔色悪いね?もしかして、風邪引いちゃった?」ラベンダーは慌ててジンの額に手を当てる。
「う~んちょっと熱あるかも?そういえば昨日の夜、くしゃみしてたもんね?ごめん私のせいだ」
「いや、お前のせいじゃないよ」
「頭が痛いとか、喉が痛いとかある?」
「ん~、頭がちょっと重くて、喉が痛いかな?」
「そっか、んじゃ、あーんして」
「は?あーん?」
「そ、喉の赤み見るから、口開けて」ラベンダーはまるで医薬師のような口ぶりで診察を始める。
「やっぱ喉が赤いね」ジンの喉を覗き込んたラベンダーは、薬を処方してジンに飲ませると、部屋で休むように言った。
「あら、ジンは?」一足先に食事を済ませて自室で仕事をしていたフローラが、キッチンで後片付けをしているラベンダーに尋ねた。
「あ、なんかね、風邪引いちゃったらしくて。微熱があって、頭が重くて喉が痛いっていうから、薬飲ませて休むように言った」
「そう……。って、薬ってどれを飲ませたの?」
「え~、この前ロジャーさんに渡したやつだよ~。ほら、今年の風邪に良く効くみたいだっていったやつ」
「え?あれをジンに?あら大変。ちょっと様子を見てくるわ」ラベンダーの話を聞いたフローラは、なにかを自室に取りに戻ると、コップ1杯の水をトレイに載せて2階へと急いだ。
「フローラはなにを慌てているんだろう?ただの風邪なのに……」ラベンダーは、フローラの後ろ姿を見送りながらそう呟いた。
「ジン、フローラだけど。大丈夫?入っていいかしら?」
「あ゛、は……い」部屋の中からは、さっきと違ってかなり掠れたジンの声が聞こえる。
ジンは顔をしかめてベッドに横になり、時折、「ゴホン、ゴホン」と苦しそうに咳き込んでいる。
「ジン、ごめんなさい、ちょっと診せてくれる?」フローラは首にかけた聴診器をジンの胸に注意深く当てていった。
「やっぱり、思ったとおりね……。あの薬飲んでからひどくなったでしょ?」
「え?……ん、ん……ゴホッ、ゴホッ……。ゴホン!!(ボワン)」
フローラの問いかけに答えようとしたジンは、小さく咳き込んだ後いきなり大きな咳をした。すると最後の咳と一緒にジンの口から小さな炎の塊のようなものが飛び出てきた。
「あら、大変。急いでこの薬飲んで」いきなり自分の口から炎が出てきて、目を丸くしているジンに向かって、フローラが小さな銀色の玉を差し出した。
ジンは訳も分からず、その玉を口に含んで水を飲むと口からジュゥ~~と小さな蒸気が上がる。フローラから渡された薬を飲んで暫くすると、ジンの咳は出なくなり顔の赤みも徐々に引いていった。
「……、あの、いったい……?」
すっかり面食らった様子のジンの様子に、フローラは苦笑しながら口を開いた。
「ごめんなさいね、あなたのような体質の人があの薬を飲むとね、症状が酷くなってしまうことがあるのよ」
「症状が酷くって……。だって炎が……」
「あなた、火属性なんでしょ?」ジンからコップを受け取りながら、フローラは静かに言った。
「え……。どうしてそのことを……」ジンは余りの驚きで、表情を硬くしたままフローラに尋ねた。