表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラベンダーの空  作者: 凌月 葉
3. ラベンダーハウス
11/77

3. ラベンダーハウス 1

3. ラベンダーハウス 1



「どうしたの?なんか顔色悪いよ」

また、ラベンダーがジンの顔をのぞきこみながら尋ねてきた。自分が結界の外に出てしまったという事実を、ジンはまだ受け入れられていなかった。


(ここが結界の外だとしたら、こいつは誰なんだ?いったいなんの目的があって、オレをココにつれてきたんだ?)

ジンは、急にラベンダーの笑顔やこの部屋の全てがまやかしに思えてきた。


「ごめん、まぶしかった?」


 ラベンダーは、あわててレースのカーテンだけ閉めた。部屋の中にはレース越しに柔らかな光が差し込んでいた。しかしジンは、怪訝そうな顔つきでじっと目を閉じたままだった。ラベンダーはそのジンの様子を不思議そうにしばらく眺めてから、なにかを思い出したように部屋を出て行った。ジンは、目を閉じたままラベンダーの足音が遠くなっていくのをじっと待っていた。それから、またそっと目を開いて頭を持ち上げると部屋の中の様子を観察した。6畳位の広さの部屋には、ジンが寝ているベッドとベッドの左側に机とイスが置かれていた。ラベンダーの香りは、その机の上に置かれたアロマポッドから漂ってきているらしい。そしてその椅子の少し向こう側の角には、ラベンダーが出て行ったドアがあった。ベッドの右側には、ドアが一枚と、ドアと同じ位の幅の壁があった。その壁の端は角になり、その角には、さっきラベンダーがあけた窓があった。窓の外にはベランダがついているらしく、窓からドア1枚くらいの壁の隣の角にベランダへ出るドアがある。ベッドの足元の壁は一面作り付けの収納になっていて、本棚や数枚のドアや引き出しが並んでいた。さっきの大きな犬は、ラベンダーといっしょに部屋を出ていったらしく姿がなかった。部屋の様子みて、特に怪しいと思われるものが無いことを確認してから大きなため息をついた。


-本当にココは結界の外なんだろうか?だとしたら、何故結界の外に出てしまったのだろう。-


 そう考えながら、記憶の底に沈んでしまっていた昨夜の出来事を一生懸命思い出していた。何度考えてみても、突然の電撃攻撃で吹き飛ばされたときに表に放り出された以外に、原因は考えられなかった。


―だとしたら、ラベンダーはあの電撃攻撃をしかけてきたやつらの仲間かもしれない。うかつに名前をしゃべってしまったのは、まずかったのではないか?-


-これからオレをどうするつもりなんだろう?どうやったらココから逃げ出すことができるだろうか?-


ジンは、いろいろなことを考えて、混乱していた。


「おちつけ、落ち着け、ジン。お前らしくもない・・・」そう独り言を言うと、また目を閉じた。


 しばらくして部屋の外に足音が聞こえてきた。ラベンダーが戻ってきたらしい。ジンは少しベッドにもぐりこんで、眠った振りをして様子を伺うことにした。


「さっきはごめんね。急に窓を開けたりしたからまぶしかったでしょ」


 ラベンダーは、ジンが寝た振りをしていることには気がついていないようで、さっきと変わらない調子で明るくそう言った。すると、もう一つの足音がしてきた。犬の足音ではなさそうだった。


「ラヴァン、ジンの様子はどう?」


 聞こえてきたのは高齢の女性の声。ラベンダーのことを「ラヴァン」とあだ名で呼んでいるところをみると、ラベンダーの身内の女性なのかもしれない。その言葉を受けてラべンダーが、ベッドサイドからジンの顔を覗き込んでいるらしく、ジンはまぶたの向こう側に陰が揺れるのを感じた。


「なんかまた寝ちゃったみたい。フローラ、どうしよう」ラベンダーは、その女性のことをフローラと呼んだ。

「きっと疲れているのよ。ホントに酷い怪我だったもの」フローラと呼ばれた女性は静かな口調で言った。


「でもさ、なんであんなところに倒れていたんだろうね?」

 ジンが眠った振りをしていることを知らないラベンダーは、またベッドの左側の椅子に座ってそういった。

「どうしてかしらね?」フローラは相変わらず、静かな口調で答えた。

「でもさこんな山奥の、しかも『ささやき谷』の下のほうだよ?人が迷って入るような場所じゃないよ」ラベンダーは、どうしても理由が知りたいといった様子だった。


「きっと迷ってしまったんじゃない?下の方にいたのは、足を滑らせてしまったせいかもしれないわ」フローラは、相変わらず静かな口調でラベンダーに答えた。

(ささやき谷?)ジンは二人の会話を聞きながらそう思った。聞いたことのない地名が出てくることも、ここが結界の外なのだということをジンに教えていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ