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序
今でも時々夢に見る。
里で仲良しの男の子と街へ出た。
里とは比べ物にならないほど人が行き交い、ざわめいていた。おいしそうな湯気と匂いを立てる食べ物。どうやって使うのか見当もつかないような品々。美しく磨かれた装飾品。市に並ぶのは初めて見るものばかりでわくわくした。
人だかりの中で貴族の車が馬に引かれて来たのを見上げて、そして綺麗に着飾った女の子に目を奪われた。衣の美しさはもとより、その整えられた輝く黒髪に、鮮やかな口紅に、貴族の姫とはこのように美しいのかと驚いた。
私も、あんな風になりたいって、ただそう思っただけだったのに。
今でも時々夢に見る。
煌めく白刃を。血の匂いを。
熱い感触を。痛みを。
紅く燃える炎を。
ねぇ、教えて。
どこかに赦しが待ってるの?
希望は、望みは、光は、連れて行ってもいいの………?