表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/46

【第七話】 『希望という名の勘違い』

翌日。

朝から――嫌な予感しかしない。

(……来る)

教室に入る前から、分かる。

何かが起きる。

昨日の流れからして――

絶対に、何も起きないはずがない。

扉を開ける。

一瞬で、視線が集まる。

そして――

「……アリア様!」

(来たあああああああああああ!!)

振り返るまでもない。

この声。

このタイミング。

この“距離感の近さ”。

ルナが、一直線にこちらへ向かってくる。

(なんで!?なんで来るの!?)

(普通逆でしょ!?ヒロインって追われる側でしょ!?)

「おはようございます!」

満面の笑み。

キラキラしてる。

眩しい。

無理。

(無理無理無理無理!!)

(近い近い近い!!)

「昨日のこと、本当にありがとうございました!」

(いやそれ昨日も聞いた!!)

(イベント終わってる!!二回目いらない!!)

思考がパンクしそうになる。

「その……もしよろしければ……」

少しだけ、もじもじと。

(やめて)

(それ以上言わないで)

(フラグ立つ)

「また、お話してもいいですか……?」

(立ったあああああああああああ!!)

顔を逸らす。

直視できない。

(どうするどうするどうする!?)

(断る?いや無理、悪役ムーブになる)

(受ける?いやそれルート固定される!!)

口が開く。

勝手に。

「……好きにすればいいわ」

(雑!!)

(対応が雑すぎる!!)

でも。

ルナの顔が、ぱあっと明るくなる。

「はいっ!」

(なんで成功してるのよ……!!)

周囲の空気が、ざわつく。

「え……?」

「アリア様が……?」

「平民と……?」

(やばい)

(また変な方向に評価が動いてる)

「アリア様って……意外と優しい……?」

(やめてその評価!!)

(それ一番ダメなやつ!!)

机に突っ伏したくなるのを我慢する。

(もう嫌……帰りたい……)

そして授業中。

ちらっ。

(見るな)

ちらっ。

(だから見るなって!!)

横を見ると、ルナがこちらを見ている。

目が合うと、慌てて逸らす。

でもまた見る。

(何この生き物……)

(小動物……?)

意味が分からない。

ただ、落ち着かない。

(これがヒロイン……?)

(バグってない……?)

そして、昼休み。

突然、教室の扉が開く。

「アリア・アストレリア」

空気が張り詰める。

(……この声)

振り向く。

そこにいたのは――

ある一人の王子。

(……来た)

これは知っている。

何度も見たイベント。

婚約者による――

一方的な婚約破棄宣言。

「私は、お前との婚約を破棄する」

ざわめき。

衝撃。

視線。

(……これこれこれ!!)

心の中で、思わず叫ぶ。

(これよ!!)

(これが本来の流れ!!)

やっと。

やっと――

(戻った……!!)

安堵が、込み上げる。

「理由は明白だ」

「私は――彼女を選ぶ」

視線の先。

そこにいたのは――

(……え?)

昨日の少女。

あの“セリフを奪った”令嬢。

(は?)

思考が、止まる。

(いやいやいやいや)

(違う違う違う)

本来なら――

そこに立つのはルナのはず。

なのに。

別の少女が、少し頬を染めて立っている。

(……なんで)

空気が、歪む。

(戻ってない)

理解する。

ゆっくりと。

確実に。

(これ……)

(“似てるだけ”で、全然違う……!!)

さっきまでの安堵が、崩れる。

(希望じゃない)

(これ……)

喉が、乾く。

(ただの、勘違い……!!)

ルナの方を見る。

彼女は――

少しだけ、不安そうにこちらを見ていた。

(そりゃそうよね)

(あなた関係ないもの、このイベント……)

でも、それが逆に。

(完全にズレてる証拠じゃない……)

視線を落とす。

(……終わってる)

小さく、息を吐く。

婚約破棄は、確かに起きた。

けれど――

それはもう。

“知っている未来”ではない。

(……戻らない)

どれだけ望んでも。

(この世界は、もう)

静かに、目を閉じる。

(別の物語になってる……)

そしてその物語は――

誰にも予測できない方向へと、進んでいく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ