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第21話『拾われた手袋と、揺らがない覚悟』

静寂。

広間の中心。

誰も、息をしていないかのような沈黙。

床に落ちた白い手袋。

その前に立つ、アリア・ヴァレンシュタイン。

(……全員、見てる。)

視線。

視線。

視線。

期待、嘲笑、興味。

全てが混ざり合い、

彼女へ突き刺さる。

(逃げれば——終わり。)

(受ければ——地獄。)

ゆっくりと、息を吐く。

(……でも。)

目を閉じる。

(ここで逃げたら。)

(私は——ただの“悪役”で終わる。)

目を開ける。

その瞳に、迷いはなかった。

コツ——

静かな足音。

アリアが一歩、前へ出る。

広間がざわめく。

「……まさか。」

「本当に……」

誰かの囁き。

アリアは何も言わない。

ただ——

しゃがみ込む。

白い手袋へと、手を伸ばす。

(これを取れば。)

(もう戻れない。)

一瞬だけ、手が止まる。

その時——

「アリア様。」

ルナの声。

振り向かない。

だが、聞こえる。

「私は、ここにいます。」

「どんな選択でも。」

「あなたの隣に。」

(……ほんとに。)

(なんでそこまで……)

小さく息を吐く。

そして——

その手袋を、掴んだ。

——パシッ

音が響く。

沈黙が、割れる。

「……決まりですわね。」

少女——“偽りのヒロイン”が微笑む。

その笑みは、

どこか歪んでいた。

「決闘、受諾とみなします。」

周囲が一斉にざわめく。

「本当に受けた……!」

「正気か……?」

「終わったな……」

様々な声。

だがアリアは、静かに立ち上がる。

「形式は?」

短く問う。

その冷静さに、

一瞬だけ空気が止まる。

少女は楽しそうに笑う。

「簡単よ。」

「こちらは——十一人。」

ざわめきが強くなる。

「そちらは、自由。」

「ただし——」

ゆっくりと近づき、

耳元で囁く。

「逃げ場は、ないわ。」

(最初からそのつもりでしょ。)

表情を変えずに離れる。

その時——

「なら、二人で十分です。」

静かな声。

ルナ。

一歩、アリアの前へ出る。

「私も参加します。」

広間が揺れる。

「平民が……?」

「正気か……?」

ルナは構わない。

ただ、まっすぐ立つ。

「私は——アリア様の味方です。」

(……っ。)

胸が、少しだけ熱くなる。

(本当に……)

(逃げないのね、この子。)

その時——

「……二人、か。」

低い声。

ラフリ。

ゆっくりと歩み出る。

全員の視線が集まる。

(……まさか。)

ラフリは周囲を見渡し、

そして——

ため息をつく。

「規律が崩れてるな。」

静かに言う。

その一言で、

空気が変わる。

10人の王子たちが反応する。

「兄上……?」

「何を……」

ラフリは構わず続ける。

「決闘は本来——」

「対等な条件で行われるべきものだ。」

視線が、偽ヒロインへ向く。

「これは、ただの私刑だ。」

空気が凍る。

少女の笑みが、一瞬だけ歪む。

「……何をおっしゃっているのかしら?」

「正当な決闘ですわ。」

ラフリは一歩前へ出る。

「なら、俺も参加する。」

——沈黙。

誰も、動けない。

「……は?」

誰かが、間の抜けた声を出す。

「兄上が……?」

「敵に……?」

ざわめきが爆発する。

ルナの目が細くなる。

アリアは、完全に固まる。

(……ちょっと待って。)

(何してるの、この人。)

ラフリは淡々と続ける。

「数が合わないだろ。」

「三対十一。」

「それでも不満か?」

静かな圧。

誰も反論できない。

その時——

ルナが一歩前に出る。

「……ありがとうございます。」

丁寧に頭を下げる。

だが——

顔を上げたその目は、

まっすぐラフリを見ていた。

「ですが。」

一瞬の間。

「アリア様の隣は——私の場所です。」

静かに、はっきりと。

空気が凍る。

(え、ちょっと待って。)

(何この空気。)

ラフリは一瞬だけ目を細める。

そして——

「そうか。」

短く返す。

だが、その場から動かない。

(いや動いてよ。)

アリアの思考が混乱する。

偽ヒロインが、

苛立ったように笑う。

「……面白いですわね。」

「三人まとめて、叩き潰して差し上げますわ。」

(あ、これ完全に敵だ。)

広間の空気が変わる。

もはやこれは、

ただの社交場ではない。

戦場。

その中心にいるのは——

アリア。

(……なんでこうなるのよ。)

(ただ生き残りたかっただけなのに。)

隣を見る。

ルナ。

反対側。

ラフリ。

二人とも、

迷いなく立っている。

(……もう、逃げられない。)

小さく息を吐く。

そして——

覚悟を決めた。

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