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第20話『招かれた舞台と、仕組まれた視線』

夕刻。

黄金色に染まる王都。

その中心にそびえる、

巨大な宮廷ホール。

煌びやかなシャンデリア。

磨き上げられた大理石。

そして——

貴族たちの、冷たい視線。

(……最悪の場所ね。)

アリア・ヴァレンシュタインは、

静かにその場へ足を踏み入れた。

(本来、このイベントは——)

(ヒロインが輝く舞台。)

(そして私は——)

(破滅へ向かう“悪役”)

そのはずだった。

だが——

(もう、全部ズレてる。)

視線を上げる。

会場の奥。

そこにはすでに、

“彼ら”が集まっていた。

「……あら、来たのね。」

わざとらしい声。

振り向くと——

そこにいたのは、

見覚えのない少女。

だが——

(……この感じ。)

(間違いない。)

(“あのポジション”の人間。)

少女は優雅に笑う。

「今日は来ないと思っていたわ。」

周囲の貴族たちが、

くすくすと笑う。

「悪役令嬢様が、こんな場に顔を出すなんて。」

「空気を読むこともできないのね。」

(……始まった。)

静かな悪意。

視線が突き刺さる。

だがアリアは表情を変えない。

「招待状を受け取った以上、出席するのが礼儀ですわ。」

淡々と返す。

その態度に、

一瞬だけ空気が揺れる。

「……強がりかしら?」

少女が一歩近づく。

「それとも、自分の立場が分かっていないのかしら。」

(挑発してる。)

(完全に。)

その時——

「アリア様。」

柔らかな声。

振り向くと、

ルナがそこにいた。

「ご一緒してもよろしいですか?」

(……来た。)

「……好きにしなさい。」

ルナは自然に隣へ立つ。

その瞬間、

周囲の空気が変わる。

ざわめき。

「平民が……」

「なぜあの女と……」

小さな声が広がる。

だがルナは気にしない。

むしろ——

アリアに一歩近づく。

(近い。)

(ちょっと近い。)

「……緊張されていますか?」

小声で囁く。

(してるわよ。)

だが口には出さない。

「別に。」

短く答える。

ルナは小さく笑う。

「大丈夫です。」

「私がいますから。」

(……この子ほんとに。)

(なんでここまで……)

その時——

「面白い組み合わせだな。」

低い声。

(……来た。)

振り向く。

ラフリ。

相変わらずの無表情。

だがその視線は——

まっすぐアリアへ向いている。

「……何かご用ですの?」

「いや。」

短く答える。

「ただ、目立ってたからな。」

(絶対嘘でしょ。)

その時——

周囲が一斉にざわめく。

「十二王子様方が……」

「全員揃っている……」

視線が一方向へ集まる。

そこには——

10人の王子たち。

堂々とした佇まい。

だがその視線は——

アリアへ向けられていた。

(……嫌な予感しかしない。)

その中の一人が前に出る。

「アリア・ヴァレンシュタイン。」

冷たい声。

「お前の行動について、話がある。」

空気が凍る。

周囲の視線が、

一斉に集中する。

(来たわね……本番。)

ルナが一歩前に出る。

「その前に。」

静かな声。

だが、はっきりと。

「発言の場として、相応しい形を取っていただけますか?」

場が一瞬止まる。

「ここは“断罪の場”ではありません。」

「少なくとも、今はまだ。」

(……ルナ。)

周囲の貴族たちがざわめく。

その時——

あの少女が笑った。

「そうね。」

ゆっくりと歩み出る。

「なら——」

手袋を外す。

その仕草は、優雅で——

そして、明確だった。

(……まさか。)

次の瞬間。

——パシッ

白い手袋が、

アリアの足元へ落ちる。

静寂。

完全な沈黙。

「——決闘を申し込みますわ。」

少女の声が響く。

「アリア・ヴァレンシュタイン。」

「あなたのその態度と存在が、我々に相応しいかどうか——」

「ここで証明していただきます。」

(来た……。)

周囲がざわめく。

「まさか……」

「受けるわけが……」

視線が集まる。

期待と嘲笑。

(どうする……)

(受ければ——地獄。)

(拒否すれば——終わり。)

ルナが小さく囁く。

「……アリア様。」

「私は、どちらでも構いません。」

「ですが——」

少しだけ微笑む。

「もし戦うなら、一緒に戦います。」

(……この子。)

心臓が強く打つ。

その時——

「……選べ。」

低い声。

ラフリ。

短く、それだけ。

だが——

その言葉は、

妙に重かった。

(……逃げられない。)

ゆっくりと視線を落とす。

足元。

白い手袋。

それはまるで——

運命そのもののように、

そこにあった。

静寂。

全員が見ている。

誰も動かない。

ただ一人。

アリアだけが——

選ぶ立場にいた。

(……どうするのよ、私。)

胸の鼓動がうるさい。

だが——

逃げ場はない。

ゆっくりと。

その手が動く。

白い手袋へ——

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