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第17話『離れる理由と、掴めない距離』

朝。

いつもと同じ時間。

いつもと同じ教室。

だが——

(……今日は。)

アリア・ヴァレンシュタインは、

静かに席に座りながら目を伏せた。

(距離を取る。)

決めたこと。

迷わないと、自分に言い聞かせる

「アリア様、おはようございます!」

(来るわよね。)

ルナがいつも通り、

明るい声で近づいてくる。

だが——

「……今日は別行動にしますわ。」

一瞬。

空気が止まる。

「……え?」

ルナの声が、小さく揺れる。

(来る。)

(この反応。)

胸が少しだけ痛む。

だが——

「用事がありますの。」

視線を合わせない。

「……そう、ですか……」

ルナは少しだけ俯く。

その表情。

(見ない。)

(見たら、揺らぐ。)

アリアはそのまま席を立つ。

教室を出る。

廊下。

一人。

(これでいい。)

(これが正しい。)

(ルナは——)

(本来、私といるべきじゃない。)

足を止める。

(……なのに。)

胸が、重い。

(なんでこんなに——)

「——逃げてるのか?」

低い声。

(……来た。)

振り向かなくてもわかる。

ラフリ。

「逃げてなど——」

言いかけて、止まる。

(……違う。)

(これは。)

(逃げてる。)

ラフリはゆっくり近づく。

「距離を取る理由は?」

短く。

無駄のない問い。

アリアは目を細める。

「関係ありませんわ。」

冷たく返す。

だが。

「関係あるな。」

即答。

(……面倒な人。)

ラフリは続ける。

「お前が動けば、周りが変わる。」

「その中心にいるのが、ルナだ。」

(……わかってる。)

「だから離れるんだろ。」

図星。

沈黙。

「……それの何が悪いんですの?」

少しだけ、棘を含む声。

ラフリは一瞬、アリアを見る。

「効率が悪い。」

(は?)

「中途半端に関わって、途中で切る。」

「一番歪むやり方だ。」

(……っ。)

言葉が刺さる。

(違う。)

(私は——)

「……正すためですわ。」

「本来の流れに戻すために。」

ラフリは無言で見つめる。

そして——

「その“本来”は、もう壊れてる。」

静かに言う。

(……)

言い返せない。

「気づいてるだろ。」

「もう、同じには戻らない。」

(……うるさい。)

(そんなの——)

(わかってる。)

だが。

認めたくない。

その時。

「アリア様……」

小さな声。

振り向く。

ルナ。

少しだけ息を切らしながら、

こちらを見ている。

(……来た。)

胸が締め付けられる。

「やっぱり……一緒にいたいです。」

まっすぐな言葉。

迷いのない目。

(やめて。)

(それ以上、言わないで。)

「……必要ありませんわ。」

冷たく、言い放つ。

空気が凍る。

ルナの目が揺れる。

「どうしてですか……?」

震える声。

(聞かないで。)

(答えたら——)

壊れる。

「あなたには——」

言葉が、喉に引っかかる。

(言うな。)

(言ったら戻れない。)

それでも——

「あなたには、他にいるでしょう。」

絞り出すように。

「本来、一緒にいるべき人が。」

沈黙。

ルナの顔から、血の気が引く。

「……違います。」

小さく。

だが、はっきりと。

「私が選びたいのは——」

一歩、近づく。

「アリア様です。」

(……っ。)

心臓が強く鳴る。

(なんで。)

(どうして、そこまで——)

目を逸らす。

「……それは間違いですわ。」

冷たく言う。

だが。

声が、わずかに揺れる。

ルナは立ち止まる。

その表情は——

傷ついている。

はっきりと。

ラフリはその様子を見て、

わずかに目を細める。

(……遅いな。)

そう、心の中で呟く。

その場に、重い空気が残る。

誰も動かない。

ただ——

関係だけが、

少しずつ崩れていく。

アリアは拳を握る。

(これでいい。)

(これで——)

(正しいはず。)

だが。

胸の奥が、

強く痛む。

ラフリは静かに目を閉じる。

(……次で限界だな。)

確信する。

このままでは——

壊れる。

完全に。

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