12.朝のやりとり
翌朝、窓から差し込む光で目を覚ました。
目を開けた瞬間、いつもの見慣れた天井じゃないことに気づいて、やっとここがベルーナ邸ではないことを思い出す。
なんだか少しだけ不思議な気分だった。
予定よりも早い時刻のためか、まだアンネは来ていなかった。
彼女が来る前に一人身支度を整えていると、部屋の内にあるドアから、控えめなノックの音が響く。
「ルナ、起きてるか?」
扉越しに聞こえたのは、エヴァンの声だった。
「ええ」
扉を開けようとすると、すぐに彼の方から待ったがかかる。
「いやいいよ、朝の準備の途中だろう? 音が聞こえたから声をかけてみた。あと、調子はどうかなって。……よく眠れたか?」
既に服は着替え、髪も顔も整え終わっている。
けれどそれを知らないエヴァンは、気を遣ってくれたらしい。
その気遣いが嬉しくて、思わず小さく笑いながら答えた。
「おかげさまで、ぐっすり」
「そっか。ならよかった」
「きっとあなたのお陰ね。隣にエヴァンがいるんだって思うと、安心して眠れたから」
「……」
突然扉の向こうが沈黙する。
どうしたのかと思い声をかけるも、返事がない。
心配になった私は、鍵に手を伸ばしてガチャリと回しかけ――。
「っ、今開けないでくれ!」
「エヴァン、あの、ごめんなさい、あなたの声が聞こえなくなったら、何かあったのかと思って……」
「ごめん、何でもない。ちょっと今俺の顔、見れたもんじゃないからそこ開けないで。もう少ししたら落ち着くから、時間がほしい。……頼む」
「わ、分かったわ」
彼の言葉通り、しばらくすると、普段と同じトーンのエヴァンの声が返ってきた。
「あー、いや、声かけたのはさ。昨日言ってただろう? 一緒に視察に行かないかって。朝食の後にでもどうかなと」
「勿論覚えているわ。嬉しい、連れて行って!」
「分かった。じゃあ、汚れても構わない服にしときなよ。あと、動きやすさ重視で」
エヴァンに言われたように、私はすぐに視察に適した服に着替え直す。
その後やってきたアンネに、髪の毛も邪魔にならないようにと一つにまとめてもらった。




