第3話
核戦争後の荒廃したパラレルワールドでの本編『光と陰ー織りなす夢の形』のスピンオフ短編集となります。
主人公ジョー・テンペストはその世界で生まれ育った18歳の男の子。
ふとしたきっかけで未知の体験をしていくことになる異世界転生の物語。
まるで導かれたかのように古びた不気味な館に引き込まれ妖精達と出会う。
その妖精達との共同生活を通して、打ちひしがれたジョーの心に徐々に変化があらわれるのであった。この旅の行き着く先はなんなのだろうか?
ジョーにもわからず妖精達と一緒に望みを叶えていく・・・
特殊能力を授かったジョーはエルフと獣人達との冒険に出るのだった。
ジョーは部屋で寛ぎながら鏡に映る新しい自分の姿に見惚れていた。
『俺ってば、イケメンだな!! そうだそうだ、こんな身体に生まれ変わりたかったんだよな〜 神様って本当にいるんだな!?』
と嬉しさのあまり有頂天になっていた。
『しかし、あのブラックって、一体部屋で何をしているんだろうか??』と思いながら部屋のワードローブを開けると、彼はまた驚きのあまり一歩後ろに下がってしまった。
『えー なんで 俺のサイズの服がここに用意されているわけ??』と謎である。
それもヨーロッパ中世風の服ばかりなのだ。
『・・・・・』
『せっかくだから、着てみるか!』
『子供の頃憧れたアサシン、カッコ良かったよな〜 それで行こう!!』
と黒ずくめのフードを被った衣装を着てみると・・・
『やっぱ、今の俺ってカッケー!! これ、俺のスタイルにしようっと!』
ジョーは、上機嫌になり階段を降りて厨房に向かった。
すると厨房で物音が聞こえてきた。
『誰かいるのか??』彼はまさしくアサシンのように物音を立てずにゆっくりと近づき覗いてみた。
『えっ、マジ??』
ブラックが手を使わずに物を動かして整理している最中であった。
『これって、もしかすると魔法っていうやつ???』
『そうか、だから、瞬間移動したり、部屋の家具なんかを入れ替えたりできるんだな!?』
『ということは、彼女はウィッチつまり魔法使いなのか??』
ブラックは、ジョーの方をチラリと見ると
「あら、見られちゃったわね! まあ、いずれわかることだからいいか
私、ウィッチなのよ。あなたが触ってくれたからこの世界に呼び戻されたのよ。」
「えっ、俺が呼び戻したんですか??」
「そうよ、あのウォンドゥを触ったでしょ?」
『ウォンドゥって?? ・・・あっ あの小さい魔法の杖みたいなやつか?? ウォンドゥっていうのか!?』
「あっ あの小さい魔法の杖みたいなやつのことですね?」
「そうよ、私は精霊で本来あのクリスタルの中に宿っているのよ。縁がある人間が触ると人間の姿になれるの。」
『なるほど・・・そういうことなのか?』と、やっとこの一連の不可思議を理解できたような気がしたのだった。
「ということは・・・他の2つも触るとその精霊が人間の姿で現れるってことですか??」
「そうなるわね。でも、自発的にやらないとダメなの。」
それを聞いた途端、ジョーは好奇心が湧き上がってきたのだった。
『ということは、あのナイフは剣士になるのか!? じゃフェザーはなんだろう??』
「あと2つ精霊がいるんですよね? 男女どっちもいるんですか?」
「精霊に性別はないわ。でも見え方は女性になるのかしらね」
『なるほど、では女剣士ってことか!? くっそー萌るな!!!
フェザーは一体なんになるんだろう?? もしかして萌え天使か?』
彼の好奇心は頂点に達していた。
「じゃ、俺、他の2つも触りたいんですが、あの部屋に入ってもいいですか?」
「それはダメよ! 私の部屋だから でも、まあ、私がいないところであればわからないわね。」
『うーん、どうしたらいいんだ? 彼女に知れたら瞬間移動するだろうし」
「わかりました・・・」と一応答えておいた。
「それはそうと・・・このままだと缶詰の食材も無くなってきますよ」
「そうね、私は精霊の時は食べる必要はなかったんだけど、この肉体の姿になった途端お腹が減るのよね」
「どうしようかしらね・・・」
「それに、この付近は荒れ放題で何もないみたいですよ。」
「・・・・・」
「私もここの世界って“気”が良くないと思っていたの。せっかくこの姿にまた戻れたから暫くは1人でゆっくり体慣らしでもしていようかと思っていたんだけど・・・そういうわけにもいかないのね・・・ では、
いっそのこと私が良く知ってる世界に行ってみましょうか??」
「えっ それってどんな世界なんですか??」
「もっと昔のお伽話のようなロマンティックな世界よ。あなたもきっと楽しめるはず!
それに食べ物も豊富にあるわよ!」
彼は、こんな不毛の世界に転生して来たわけだし、仮に元の世界に戻ったとしても寂しい侘しい生活が待っているだけ、いっその事、ついでにそのロマンティックとやらの世界に行ってもいいかなと思えてきた。
「俺はいいですよ! でも、仲間は多い方がいいんじゃないですか?」
「それは、あの精霊も呼んだ方がいいって事?」
「そうです! だって、ナイフとフェザーなんでしょ?? きっと役立ちそうですよ!」
と強気にでまかせでいってみたのだった。
ブラックは暫く深く考えていたようであるが、
「わかったわ。まあ、備えあれば憂いなしね。じゃ、私はここにいるから部屋に行って呼び出してきなさい! あなたが触れば出てくるから」
早速流行る気持ちを抑えて波打つ心臓の鼓動を感じながら階段を大急ぎで上がりあの部屋に入った。
すると、他の2つもあの時と同じように微かに光っていた。
ジョーはまずナイフが入った水晶を持ち上げ昨夜と同じように中を覗いてみた。
そして、それを戻し、続けて最後のフェザーを持って覗いてみたのだった。
それも戻したが、まだ何も現れない・・・
『姿を表すには時間がかかるのだろうか?』と思いながらベッドに座りしばし待ってみた。
やはり変化がなかった。『失敗なのか??』と思い、ブラックがいる厨房に戻ってみると・・・
中は賑やかな話し声が聞こえ、覗いてみるとブラックの他にも2人の人間がそこにいたのだった。
「あらあら、ご苦労様! 早速紹介するわね。
彼女がブルー・ブレイド そして、こっちがホワイト・フェザーよ 宜しくね!」
「ああ、良かった!なかなか現れないから失敗したかと思いましたよ」
するとブルーのキャミドレスを着たブルー・ブレイドが跪いたのだった。
「ロード!あなたはこれから私達の主君になるのです。私たちはTSUKUMOGAMI、貴方様の使い魔的な存在です。 何なりと仰せつけください!」とまるで騎士のように進言した。
「付喪神!? なるほど!ローマ字だったからわからなかったんだ。なるほど!君たちは付喪神なのか? モノに宿るという、しかも使い魔!? でも、ブラックは逆に俺より偉い存在みたいだったけど!?」
すると、白いホルターネックドレスを着た冷静沈着な雰囲気のホワイトが、
「まあ、そうでしょうね。彼女は命令を受けたくないタチですから!」とコメントした。
「バレちゃしょうがないわね! 悪うございました。ご主人様!
まあ、そういうことよ。これからも4人で仲良くやりましょう!
私達精霊は、あのモノに触れた生命体に似せて現実化するの。
それぞれに得意分野があってね。
私はいわゆる魔法専門ね。魔法攻撃に防御!
ブルーは対物理攻撃と防御専門よ!まあ、ロングソードがお気に入りみたいだけ武器全般の達人よ。
そしてホワイトは空間移動。飛んだり 飛んだついでに空から光の矢も射れるのよ。
それに一度行ったところへは瞬間移動できるのが素晴らしいわ。」
と3人の特性を説明してくれたのだった。