第 1 話
核戦争後の荒廃したパラレルワールドでの本編『光と陰ー織りなす夢の形』のスピンオフ短編集となります。
主人公ジョー・テンペストはその世界で生まれ育った18歳の男の子。
ふとしたきっかけで未知の体験をしていくことになる異世界転生の物語。
まるで導かれたかのように古びた不気味な館に引き込まれ妖精達と出会う。
その妖精達との共同生活を通して、打ちひしがれたジョーの心に徐々に変化があらわれるのであった。この旅の行き着く先はなんなのだろうか?
ジョーにもわからず妖精達と一緒に望みを叶えていく・・・
特殊能力を授かったジョーはエルフと獣人達との冒険に出るのだった。
これは1つのパラレルワールドでのお話です。
そして本編『光と陰ー織りなす夢の形』のスピンオフにもなっています。
核戦争後の荒廃した世界の中で1人の男がひっそりとそれなりに生きるお話となる予定だったのですが・・・
その男に異世界からの転生者が入ってしまったのでした。
この男、ジョー・テンペストの人生はいかに?
ジョー・テンペストは齢18歳
家族親族と言えるものは核戦争で全て亡くし孤独な人生を送っていた。
身寄りがない彼は窃盗・泥棒など生き残るためになんでもしてきた。
それも無気力で・・・ただただ生きるために
まあ、そのため中肉中背ではあるが自然と身体は鍛えられ立派に成長していたのであった。
見た目の風貌は全く身なりに気を遣っていない割にはどことなく貴公子風に見える時もある。
それはブロンドの長髪とまとまった面長の顔にブルーの瞳に起因する。
身長は15歳から伸びていないため、その時から着ている一張羅の破れたデニムにダンガリーシャツといった風貌だ。
そんなジョーはスコットランドのエディンバラ近郊のディーンヴィレッジで生まれた。
核爆弾がロンドン付近に落とされたため核汚染が広がる国土の中
英国の北方は汚染進行が軽い地域であった。
これは戦後間も無く彼がいつものように廃村を周り食物になりそうなものをあさっていた時の話である。
戦争で若者は最前線に派遣され高齢化も伴い
辺境の村はほとんど無人と化していたのだ。
この日は冬の寒い日であり、強い暴風雨のためジョーは避難場所を探していたのだった。
荒れ果てた家々は屋根を失い風雨を凌げる状態ではない。
そういった街からは程遠い深い不気味な森の中に屋根付きの立派な館が残っているという噂があった。
しかしながらその館は訳ありの不気味な門構えである。
まるで結界で守られているが如く人を寄せ付けずに戦争前の状態を保っているのだった。
押し入ると祟りがあるといった風である。
無気力なゆえそんなことはまるで気にしないジョーは森の中を彷徨い
ふと気づくとその森に飲み込まれそうな不気味な館の前に立っていた。
『あっここだ!』
その時であった。
いきなり落雷を受け激痛が走ったのだった。
そして、一瞬のうちに絶命してしまった…
間髪を入れずにその後から白い稲妻が走りそれもジョーに命中した。
『あれ? オレ、なんでここに立っているんだろう?? しかも、ここはどこなんだ??』
わけのからない中あまりの激しい雨には抵抗できず、あたかも大男が出入りするかのような大きなロートアイアンのおどろおどろしい門を無意識のうちによじ登っていた。
屋敷の奥まで続く古い石畳を小走りに走り重厚な玄関前に身を屈め
無意識のうちにリュックから彼の7つ道具を取り出した。
ピンを2つ手に持ち解錠しているのである。
『やった!開いた!』
『しかし、俺、なんでこんなことができるんだろう??』と不思議に思った。
早速その暗い館の中に入るとワインレッドの絨毯が敷き詰められており、
その先には長い回廊が館の奥に向かって続いている。
壁にはこの館の持ち主であろうか?歴代の頭首の不気味な肖像画が掲げられていた。
ジョーはその廊下を恐る恐る歩いていったのだった。
壁面の合間に鏡がかかっている。
ジョーはその鏡に映る姿を見て絶句した。
『なんだ、こいつ??』驚いてあたりを見回したが自分以外に誰もいない…
鏡の前で手を振って見ると、その人物も振っているではないか!?
『これって、俺なのか?? なんで??』 不可思議である。
そこに映し出されているのは、身体が不自由な老人ではなく、
明らかにイケメン風の金髪碧眼の若者であった。
『もしかして…これって今流行りの異世界転生なのか??』
『そうだ、俺は会社を定年退職してから、身体が不自由になり
特にやることもなくお金がかからないゲーマーとして不健康な日々を過ごしていたんだ。
これまでの人生 仕事にはある程度成功したのだがリアルな女性に触れ合ったことなどなかった。
触れ合えるのはゲームの中の女性キャラだけ・・・
実はそれだけが心残りで人生やり残したことでもあった。
そして75歳になったばかり。もちろん誰もお祝いなんかしてはくれなかった。
独り身のため寂しさとの根比べの中、今度生まれ変わったらモテモテ金髪英国人になって
ハーレムの中にいるような人生を送りたいと強く思っていたときであったのだ。
我ながらそのうち天国からお迎えが来そうな予感はしていたのだが…
これがそういうことなのか?? と悟ったのだった。
無意識のうちに歩いていくと、
館の中心を走る廊下の両側は大きなホールがいくつか並んでいるのが見えた。
まるでボールパーティーでもできる大きさである。
そしてさらに進んでいくと踊り場となり螺旋状の階段が2階へと繋がっている。
その先は厨房のようだ。
いきなり激しい空腹に襲われた。
まず、ジョーは空腹を紛らわすための何かしらの食べ物を探して厨房に入ったのだった。
戦後、時は流れ新鮮な食物などあるわけはなく、
しかし戸棚の中を漁ってみると沢山の缶詰を発見したのである。
『やったぜ!ラッキー!! 俺ってついてるわ!』
『腹を壊すとまずいからな〜 えーッと賞味期限は・・・過ぎてるがまあ大丈夫じゃん!』
『トマトにベイクドビーンズ、スープ、グリーンピース、ミートパイもあるじゃん!!』
暫くの間はここで生活ができることを確認できたジョーは安心して満面の笑みを浮かべている。
早速厨房の薪に火をつけフライパンで自然に料理を始めた。
しかし、不思議である。彼は毎日コンビニ弁当で料理などやったことがなかったのだった。
もちろん電気は通っていない。
『やば!暗くなってきたな。蝋燭ってものはないのかな・・・』と厨房の棚を漁ってみると
運よく発見した。
真鍮の燭台に蝋燭を灯し、出来上がった料理をフライパンそのままでガッついた。
『うっま!! よくわからないが神様、ありがとう!! あのままだと死んでいたのだろう・・・』
と久々に満腹になったのだった。
『しかし、料理はできないし、それに錠前開けなんかしたこともなかったのに、なぜ?』と不思議に思った。
『それって、そもそものこの体の持ち主の能力なのか??』
『まあ、腹もいっぱいになったし・・・次は寝場所だな〜』と言いながら、先ほど踊り場にあった螺旋階段を燭台を片手にゆっくりと上がっていった。
外の風雨はさらに激しくなっており雷も伴っている。
そしてカーテンの隙間から時折稲妻の光が暗い室内をフラッシュの如く照らしている。
『しかし不気味だな〜 へえー幾つも同じような部屋が並んでいるわ これ寝室だよな。20はあるかな!?』
そして、その中に主寝室と思えるような大きく豪華な部屋を発見した。
『女の部屋だな。この館の女主人の部屋なのかな?』と言いながら部屋に入っていくと、
絢爛豪華な猫足の家具で揃えられたリビングが蝋燭の光に照らされた。
『この家具、ちょっと不気味だけど、上等なんでまあいいかな!』
黒い室内空間の中に黒塗りの家具 まるで魔法使いの物語にでも出てきそうな不気味な部屋である。
そして、奥の部屋に続くドアを開けてみると・・・
そこにはいかにも女性が寝ていたであろう天蓋付きのキングサイズベッドがあった。
ここまでは、不思議と何かに惹きつけられるように来たのであるが、この寝室の奥で微かに光るものがあるのに気がついた。
流石に電気もない暗い闇の中で朧げに光る物体にジョーも寒気がした。
『あれって やばいのかな??』と思いつつも、その光る物体を見ずにはいられなかった。
『いったいなんなんだろう?』と興味深々でおそるおそる近づいていくと・・・
フラップキャビネットの上に大切そうにガラスショーケースが備えてあり、
その中の物体が微かに光っているようである。
蝋燭を近づけて見てみると、そのショーケースに英語で何やらタイトルが書いてあった。
『何だ??』 何やらローマ字で綴られている。
『なんだこれ??』
透明な細長い球体が3つ飾られているである。大きさは1つ20cmぐらいでその中に何か入っているようなのだ。
『なになに・・・中に何か入ってるな。これは小さい魔法の杖のように見えるな・・・
真ん中は・・・古いナイフか!? 右側のは、水鳥のフェザー???』
見た目はアンティークのように古ぼけて不気味そのものではあるが、
その微かな光はジョーを誘っているように感じるのだった。
ジョーは、ガラスのショーケースを開けて3つの光る透明な物体に蝋燭の光をあてて中を確かめてみた。
やはり、どう見ても普通の小さな木の杖にナイフ、そしてフェザーであった。
『なんでこんなガラクタが大切に保管されているんだろう?? いったいここに書いてあるTSUKU・・・・・ってなんなんだろう? それよりも先に俺って何者なんだ??』
と思いながら、その1つを手に取った。
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