1. 告白現場は波乱万丈!?
お読み頂きありがとうございます!
なろうでは初のBL連載となりますが、のんびりペースで進める予定ですので、ぜひ最後までお楽しみ下されば幸いです(^∇^)/
これは、ちょっとだけ不思議なお話なんだけど、聞いてくれるか?
と言っても、すご〜く秘密なお話なんだけど、ついつい教えたくなってさ。
皆はさ、薄く白く光る透明な糸って見えたことあるか?
え?見たことないって?そっかぁ、そうだよなぁ。
実は、俺も前まで全然見れなかったんだ!
だって、ここは現代の日本だぞ?SFはあっても、実際にその内容が現代に現れるわけないんだって!
でもさ、俺が高校に入学してからというものの、そこらかしこに透明な糸がうじゃうじゃ見えるようになってさ…。
正直、目がチカチカするんだよおおおお!!!
しかもその糸は、人間からいくつも見えるんだよ!こう、ほつれた糸が何本もあるセーターのように!
まぁ、入学してから三ヶ月経った今では、そんなのあんまり気にしなくなったし、意識的に糸を見なければ、普通に日常も送れるようになったしな。
けれど、最近その糸が人と人を繋ぐ所を何回か見てきたのも事実で…。
って、そうそう聞いてくれよ!実は俺、偶然告白シーンにでくわすことが増えてさぁ!
しかも、告白した人と告白された人の糸がこうキュッと結ばれて、両思いになっているところを何度も見たんだよ!
それを見た時にさぁ、俺は思ったんだよ。これって、俺が告白現場に遭遇したら、告白成功してカップルできるんじゃね?って。
だから、今は告白の噂を聞いたら、すぐにその現場にこっそり行くことにしてるんだ!
つまり俺は、自称だけど影のキューピッドって事。すごいだろ〜?
という事で、俺の秘密語りはこれでおしまい!
今から告白現場にひっそりお邪魔しに、平日お昼休憩時の中庭に行くぜい!
「おっ?唐志朗、また行くのか?告白現場」
「うわっ、典!いきなり話かけるなって!そうそう。ああいう所行くの楽しみでさ。野次馬根性丸出しだけど、典も行く?」
「俺はパース。ほら、行っておいで。自称キューピッド」
「ほっ。じゃあ行ってくるわ」
おっと、危なかった。四限目が終わってすぐに、友達の小笠原典宗に話しかけられて、つい誘っちまった。
典は結構キラキラなイケメン(しかも彼女持ち)だから、一緒に中庭行くと目立つんだよなぁ。
俺は平凡顔だから、目立たないしいいけど。
とにかく、俺は急いで早歩きで教室を出て中庭に行き、隅っこにある木の影の定位置に座って、そこでお目当ての人物が来るを待った。
さて、今日は誰が告白されるのかなぁ〜っと。
「…おい、何してるんだ?」
「ふふ〜ん、楽しみだなぁ〜」
「おい、小田原唐志朗!聞こえてるのか!?」
「ふぁいっ!?えっえっ?」
人を待っている間、いきなり後ろからフルネームを呼ばれ、俺は驚いて振り向く。
そこには、見たくもない黒髪眼鏡の男が立っていた。
「うげっ!北条成史…」
「うげってなんだ。腫れ物のように俺を見て」
「…へーい、すんませんでしたー」
本当は一つ文句でも言ってやろうかと思ったが、諦めて前へと向き直る。
はぁ〜、なんでここに同じクラスの北条がいるんだよ!俺の天敵!
イケメンの癖して、クールぶりやがって。
しかも、アイツが告白されてる現場を見た限り、アイツは告白してきた女の子を全員怖がらせて、告白じゃなくても近づく女の子全員も怖がらせる。
あーもう、本当に俺のキューピッド生活の邪魔しやがって!
なのに文武両道で、強豪で有名な剣道部所属で、遠くから応援する女の子には手を振って笑って優しいって…。
なんなんだよ!ギャップか!?ギャップだよな!?
しかもさ…信じられるか?
実は俺、この北条ってやつと、なぜか透明な糸で結ばれてんだよ!
なんでだよ!!信じられるかっ!
こんなに、なんでもこなして完璧なスパダリ野郎と繋がるとか…どうしちまったんだ。
はぁ〜…運命って残酷だよなぁ。
「おい、小田原。向きを戻すな。全く、また告白現場でも見てんのか?」
「…それがなんだよ」
「やっぱりな。今回は一年四組の北村が一年三組の園田さんに告白すると、俺も風の噂で聞いた。だから来たんだが…。おい、あれじゃねぇか?」
「本当だ。見てみようぜ」
俺と北条は隣に並んで、ようやくやってきた告白現場を眺める。
しかし、今回の告白は、今まで見たものと違っていた。
「あ、あの…北村くん。お話って?」
「あぁ。実は俺…園田さんが、君が好きなんだ。すごく可愛くて笑顔が素敵で、そして、その魅力的なボディ!その魅惑的な胸と尻が最高に素敵で!あぁ、何度君を脳内で犯したことか!」
「へ…?北村、くん…?」
「あぁ、素敵だよ、園田さん…。あぁ、是非とも俺の腕で乱れてほしいっ!」
「きゃっ!」
ま、まずいまずいまずい!
気色悪い北村から出ている透明な糸が、ゆっくりと真っ直ぐに園田さんに向かっている!
園田さんには繋がる糸がないのに!
ど、どどどどうしよう!このままでは園田さんが被害を被ってしまう!
俺にはどうしようも出来ないぃ!
「大丈夫だ、小田原。そのまま見守れ」
「へ?」
突然耳元で落ち着いた低い声が聞こえたかと思うと、いきなり北条が俺を後ろからギュッと抱き締めてきた。
その事に驚いて、一瞬下を見てから告白現場を見ると、そこにはまた見たこともない光景が広がっていた。
なんと、北村が尻餅をついて、身体を震わせたまま園田さんを見上げていたのだ。
「…?あれ?なんとも、ない?ど、どうしたの、北村くん!?」
「ひっ!あっ、あっ…こ、怖いいいぃぃ!ごめんなさい!ごめんなさいぃ!」
そして結局、北村は顔を青ざめさせて急に立ち上がったかと思うと、園田さんを置いて、その場から一目散に逃げて行ったのだった。
「ど、どうなってんだよこれ…なんで北村が逃げたんだ…?」
「…さぁな。でも、これで園田さんは被害を受けずに済んだな。カップル成立にはならなかったけど」
「だな。はぁ〜、これじゃあまた自称キューピッドと堂々と言えなくなっちまうなぁ。また次回参加するかぁ。…って、北条、いつまで俺を抱き締めてんだ?」
「っ!!」
突然のことで忘れていたが、俺は北条に抱き締められていた事に気付いて、指摘する。
すると、その事に驚いた北条が俺からすぐに離れたかと思うと、顔を耳まで真っ赤にして硬直した。
「…へ?ほ、北条?」
「あ…え、えとだな…。い、今のはわざとじゃ、なくてな?と、とにかく、ごめん!!」
そうして、北条は顔を真っ赤にしたまま、すくっと立ち上がって、中庭から逃げたのだった。
同じく、北条に釣られて顔を耳まで熱くした俺を残して。
「どっ、どっ…どうなってんだよおおおおお!!」