ある人間の日常
昔からおかしな夢をみる
人が座敷牢に閉じ込められている
腰にまで届く銀色に近い白髪、瞳はぱっと見は金色だがよく見ると、オパールを思わせるような色々な虹彩を放っており、朱色で大きなクチナシの花柄の刺繍が施されている着物を着ている。帯は深い緑に髪と同じ色の糸で大きな蛇の刺繍がされていた。
随分と絢爛な見た目である
肌の色は太陽を知らないのではないかと思うほど青白い。
座敷牢に入っているにしては、見た目が日本人離れしている。
背景との差異がすごい。
口輪をされ、手足を鎖で繋がれているので、きっと何かして捕まったのだろう。
なんでこの人は囚われているのか、私にはわからない。
その夢を見ると、悲しいような、切ないような、懐かしい気持ちになる。
でも同時にその人に対して憎悪も感じるんだ。
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今日も夢を見た。
いつもは牢屋に閉じ込められている人を見ているだけだが、今日は違った。
誰かがその人をそこから出そうとしている。
小さい男の子だ。
よく見ると身体中傷だらけで、顔の左眼にかかるように大きなあざがある。
髪もボサボサだ。
輪っかに何本が付いている鍵を使って、牢屋の扉、口輪、手足の鎖の鍵を外していく。
2人は何か会話をしているようだが、何を話してるいるのかはわからない。
そして・・外に出た・・・
でも、だめだ。
そこからその人が出たら嫌なことが起こる。
わからないけど、そんな予感がする。
大切なものが手からすり抜ける気分だ。
「・・や・・めて・・・、・・め・・だめっっ!!」
自分の大声で起きた・・・
一瞬夢と現実の区別がつかない。
自分はだれだ?
寝ている間にかいた汗を拭う。
「・・・ふぅ・・ 」
焦燥感が背中にのしかかっているような心地だ。
私の名前は、清波水樹・・・
起きたばかりで混乱している自分に言い聞かせる。
あいにく今日も仕事なので、寝たはずなのに全く疲れが取れていない身体に鞭を打ち準備をする。
私は医療事務をしている。
医者のご機嫌をとり、看護師の愚痴を聞き、患者からのクレームの対応。
楽な仕事と思われがちだが、中々にストレスが溜まる。
でもそう簡単に辞めるわけにはいかないし、辞めるつもりもない。
そんなことを思いながら身支度を終えて外に出ると、雲が分厚く、落ちてくるような空が目に入る。
今にも雨が降りそうだ。
雨は嫌いではないが、なぜか不安な気持ちが消えない。
こういうときはあまりいいことが起こらない。
なんとなく嫌な予感を抱えながら、職場につながる道を歩いているといつも通りの川に差し掛かる。
この川は土手も整備されていて、いつもは犬の散歩をしている人や部活で走り込みをしている学生、主婦たちの井戸端会議が見られるが、今日は人があまりいないようだ。
1人、川を眺めている人がいた。
なぜかとても気になる。
ふと今日の夢を思い出す。
あの後、2人はどうなったのだろうか。
風が吹いて、目が合った。
(・・・・懐かしい・・?)
その瞬間、左眼が酷く痛んだ。
「あぁ・・・ご・・、なさい・・・」
口からふとこぼれ落ちた言葉はなんなのか、
喉が渇く、強い焦燥感に涙が出る。
・・・生きてる
何が?
・・誰が?
私は何を忘れているのか・・・・・
気づいたらその人はいなくなっていた。
少しぼーっとしていたが、ふと我に返った。
「あれ、今・・・・あ、仕事・・」
思ったより時間が経っていて、いつもよりも大分ギリギリだ。
急いで職場に向かう。
その姿を遠くから見ているものがいるのには気づかなかった。
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「・・・ようやく・・」