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プロローグ

大好きな作家さんに刺激されて、ずっと書きたかった世界です。

*11.08.08 放置すみません。大部分書き直しました。




――――此れは祖が其に伝ふる物語。


さやさやと新緑が唄う。太陽に温まった風がふわりと子らの裾を揺らして、彼女(・・)の元に集まった。


瞑想から目を醒まして、ふ、と目元をなごませ、手招く。


「みこさま!」


「大巫女さま!」


駆けてくる足音はむっつ。ためらいがちに近づいてくる足音は、年嵩の少年のものだろう。今日のお目付け役は彼らしい。


幹に預けていた背を起こすと、気遣わしげな声がたずねた。


「お休みだったのでは………? よろしいのですか」


大人ばりに気を遣うこの少年、ユアンという。


「構わぬよ」


「しかし………」


「こどもはそう面倒なことを気にせずとも良いのさ。おいで、」


ぽんぽんと地面をたたいてうながせば、すでに座って待ちきれない様子のこどもたちが騒ぎ出した。


「ユアンにいさま!お隣に座って!」


「ミッカばかりズルい!にいさま、セダの隣に来てよ!」


「やだやだ!ロンといっしょ!」


「おうおう、ユアンはみなに人気者だな」


「はあ……。おまえたち、落ち着け」


しばらくユアン少年の隣をめぐって賑やかになったが、いちばん年下のキューを膝に乗せたユアンの周りにみなが座るということで決着がついた。


正面で戸惑ったように身動ぐ気配を、なつかしく思う。


もうすぐ成人の儀を迎えるユアンにとって、こどもたちに混じり語り部の話を聞くのはなにやらむずがゆい気持ちのすることなのだろう。八族特有の生業のために、我が子が歩けるようになれば女親も仕事に駆りだされ、こどもの相手をしていられない。語り部はそんなこどもたちに八族や神々の物語、生活の知恵からはては周辺諸国の情勢まで教えこむ役割を担っている。頭の切れるこの少年は、幼い時分にはよくよく話をねだるこどもであったはずだが、と語り部は微笑んだ。いや、よくよく話をねだるこどもであったからこそ、夢中にねだっていた幼い頃を思い出して恥ずかしいのかもしれない。


「おおみこさま、きょうはだれのおはなしですか」


たどたどしい口調で待ちきれぬ様子のキューがたずねる。これは次代のユアンか、と語り部は眉をあげ、だれがよいかとたずねかえした。


「ぼくは、きまいらとめろらがひとつになったときのおさたちのおはなしがききたいです」


「ほほう、『翡翠の戦』かえ」


それで良いかとほかのこどもたちに聞けば、一様に頷く。どうやら皆、選択権は元よりキューに譲っているらしい。くちびるを舐めて、盲いた語り部は朗々と語り始めた。


「 此れは祖が其に伝ふる物語


 祖から其へ、其から孫へ、脈々と伝来せし物語


 遥かの地におわします神々の聖婚に縁りて


不断の時が始まり


 大地に草木が萌え


 育まれた獣が咆え


 そしてひとの子は言葉をあたえられた


子らが翡翠と呼ぶこの大地に伝わる、此れはある二人の物語―――」




*11.08.08

毎日更新を目指していますが、どう転がるか分かりません。

宜しくお願いします。

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