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3.その頃、人間たちは。

ここまでオープニングです。

続きが気になる方は、是非あとがきもお読みください!!










 ――一方その頃、人間たちは。




「おい、聞いたか。……新しい魔王の噂!」

「知ってるに決まってるだろ!? なんでも、歴代で最も恐ろしいとか……」



 王都ガリアの城下では、そのような話が広まっていた。

 平民たちの口から口へと繋がるガイアスの評は、尾ひれがついていく。歴代最恐、最悪の存在であり、力による支配で人間たちをも呑み込もうとしている、と。

 事実無根の噂に過ぎないはずのそれらは、いつしか彼らにとっての真実となっていった。すなわち魔王とは、人間にとって恐怖の対象だと。







「……魔王、か」




 その話は当然、王都ガリアに住まう国王ルシウスの耳にも届いた。

 臣下の者たちからの進言によって、彼は早急に魔王対策をすることになったのだ。だがルシウスは人々の想定以上に慎重な姿勢を取る。



「果たして、人間を滅ぼさんとするは真実か。……見定めなければ」



 齢八十を超える彼には、経験と胆力が備わっていた。

 人々が恐怖に慄く中でさえも、作り上げられた真実ではなく、動くことのない事実を見据えている。しかしその態度は、見様を変えれば遅速とも受け取られた。

 それを真っすぐにぶつけてきたのは、ルシウスの孫にあたる青年。



「爺さん、いつまで暢気に構えてるんだよ!」



 名をアルフレッドという彼は、血気盛んに進言を続けていた。



「魔王が良い奴なわけあるか!? 爺さんは大馬鹿者だ!!」

「だが、アルフレッドよ。お前こそ、如何な確信を以て魔王を悪と断ずる?」

「そんなの、人間じゃない、ってだけで決まりだろ!?」

「浅い、浅いぞ……アルフレッド」

「な……っ!」



 しかし、ルシウスはそう返して意見を退ける。

 アルフレッドは馬鹿にされたのだと憤り、拳を震わせて無言のまま去っていった。その後姿を見送って、国王は静かに思考を巡らせる。

 その時だった。



「……ぐ、かはっ……!」

「陛下! 大丈夫ですか!?」



 ルシウスが激しく咳き込み、苦悶の表情を浮かべたのは。

 臣下の者が素早く駆け付けようとするが、彼は手でそれを制した。大きく肩で息をしているものの、どうやら命に別状はないらしい。

 もっともそれには、今はまだ、という言葉が付くが。



「……ふむ、儂も老い耄れたものよな」



 自身の身体の限界を察しているのだろう。

 ルシウスは静かにそう呟くと、大きくため息をついた。

 それでも、決して急くことはない。何故なら彼にはまだ、情報が足りない。そのような状況で判断を下せば、誤った結果を招くと知っていた。


 だから彼は、ただ時を待つ。

 自身にとっての最後となるであろう大仕事、その重要な頃合いを……。










「ふざけるんじゃねぇぞ、あの馬鹿ジジイが! 暢気が過ぎるぜ!」



 だが、そのようなルシウスの思いを知らず。

 アルフレッドは悪態をつきながら、私室の椅子を蹴り倒していた。しかし彼の怒りはいまだに収まらず、その感情を散らすように金の長い髪を掻き毟る。

 激情に身を任せた青年は、その蒼の瞳に憎しみの感情を宿し、窓から見える王都の街を見下ろした。そして、こう口にする。




「俺が認められないのは、あのジジイのせいだ。……だったら――」




 口角を歪め、軽く唇を舌で湿らせ。

 アルフレッドはそれ以上を口にしないまま、肩を軽く揺らすのだった。



 


面白かった

続きが気になる

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