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1.王位継承の宣言。

周囲の心労がヤバい()


応援よろしくお願いいたします!!










 臣下たちはみな、新たな魔王の誕生を待ち焦がれていた。

 もちろん、先代の魔王への哀悼の意も胸に秘めている。だがそれ以上に、次代の魔王の秘めた才覚、そして何事にも真摯に取り組む姿勢は長としての資質を確信せざるを得なかった。だからこそ、いま魔王軍はかつてない程に一致団結している。

 誰も反乱を起こそうなどという、不埒な考えは抱くことがない。

 彼に任せ、ついて行けば繁栄が約束されている。

 誰もがそう思っていた。だが――。



「…………遅くね?」



 魔王城を見上げる位置にある広場に集まった者の一人が、そう口にする。

 たしかに、集合の時刻になってからどれだけ経過しただろうか。少なくとも魔の民たちは、かれこれ小一時間、今か今かと新魔王の登場を待っていた。

 それだけ人々を待たせることができるのも、ガイアスの天性のカリスマとも呼べる。だがしかし、さすがに予定よりも時間が経過しすぎていた。

 そうなってくると、臣下を始めとする魔族のみなは不安に駆られ始める。



「何かあったのか……?」

「もしかして、怖気づいたとか」

「いやいや。あのガイアス様に限って、それはないだろ」



 中にはズバリと言い当てる者もいた。

 しかし、あくまで可能性の一つに過ぎない。民衆たちはガイアスの身体に異変があったのかと、そちらの心配を始めていた。



「……ぐぬぬ。レシリーめ、いつまで待たせるのか!」



 そんな民たちを見て、焦り始めたのは一人の幹部。

 幼少期からガイアスを知る一角の魔族男性――ロドスは、新魔王の性格を熟知している数少ないうちの一人だった。だからこそ、いまの状況がかなりマズイことが分かってしまう。あるいは直前になって逃げたのではないか、という確信に近い予感さえあった。

 それを防ぐため、幼馴染みのレシリーを同行させたのである。

 だが彼女では力不足だったかと、冷や汗が彼の硬直した頬を伝っていた。



「……急げ、急げよ。レシリー……!」



 それでも、今さら持ち場を離れるのも不信感を持たれかねない。

 だからロドスは魔族らしからず、ただ祈るしかなかった。

 その時である。




「あぁ! 新魔王様だぞ!!」

「ついにお目にかかれたわ!!」

「魔王様ァー! お待ちしておりましたぞー!」




 大地を揺らすほど大きな、ドッという歓声が沸き起こったのは。

 ロドスは慌てながらも、自身の真上にある魔王城のバルコニーを見た。するとそこには、いまだかつて見たことがないほどの仏頂面をしたガイアスの姿。

 それを目の当たりにして、一時の安堵も不安に塗り潰されてしまった。

 大丈夫なのか、という思いに手先が震える。




「…………静まれ、民衆たちよ!」




 だが、その緊張を振り払うように。

 ガイアスはその地鳴りのような声を張り上げ、こう宣言したのだ。




「先代魔王である父の崩御により、座を引き継ぐことになった我が名はガイアス・アウグスティヌス! 貴様らを導き、魔王軍を指揮し、繁栄を約束する者だ!!」




 静まり返った魔族たちは、みな一様に息を呑んだ。

 それを認めてからガイアスは短く、しかし力強く宣言する。




「貴様らの命運は我と共に在り、我が命運もまた貴様らと共に在る!」――と。




 その直後だった。




『ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』




 その場にいたすべての魔族が、歓喜に喉を震わせたのは。

 踵を返し城の中に戻っていくガイアスに向け、彼の名前を何度も繰り返し叫び続ける。その光景はまさに圧巻の一言で、新時代の到来を予感させるに相応しかった。

 ロドスもまた感涙を流し、拍手を送る。




 こうして、魔王軍は新たな王を迎えたのだった……。









 ――と、綺麗に終われば良いのだが。

 ガイアスはやはりガイアスであり、城に戻った直後……。





「ぬおおおおおおおおおおおおおお!!」





 極度のストレスによって、トイレへと駆けこんでいた。

 その様子を見ていたのはレシリーだけ。彼女は変わりようのない幼馴染みの豆腐メンタルを目の当たりにして、頭を抱えてしまう。




「大丈夫かな、ホントに……」




 そして、思わずそう呟くのだった。

 


 


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