プロローグ その魔王、泣き虫。
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――この世界には、絶対的な存在がいる。
人々はその相手に対して、ただ平伏すことしかできなかった。少しでも歯向かえば、瞬く間にその身を二つに割かれるであろうから。いいや、あるいは彼と目を合わせただけで心の臓が脈打つことをやめてしまうかもしれない。
すなわち、普通の人間が太刀打ちできる者ではなかった。
やがて人々は、彼の存在を『魔王』と呼称するようになる。多くの魔族から羨望を集め、強大な軍事力を持つその者は、虎視眈々と人間たちの世界を侵略しようとしていた。
誰もがそう信じている。
何故なら、あのように恐ろしい存在が悪でないはずがないのだから……。
◆
――しかし現実には、そのようなことはなく。
「ふえぇ……!? レシリー、どうしよう!!」
「いや、どうしようと言われても……」
魔王から程なくの場所にある小屋の中で、一人の強面魔族が膝を抱え震えていた。あまりに険しいその顔立ちに似つかわしくない泣き顔を浮かべ、口をへの字に曲げている。嗚咽が止まらず、一緒にいる有翼の魔族少女に呆れられていた。
三メイル以上はあろうかという巨躯を小さくしている彼の名は、ガイアス・アウグスティヌス。世間一般では歴代最悪、最凶、さらには最恐だとか呼称されている存在だった。
「だーっ! だからって、魔王軍のトップがこれで良いわけないでしょうが!?」
そんな彼を一喝したのは、幼馴染みである小柄な少女――レシリーだ。
どこかキワドイ衣装を身にまとった彼女は、泣き言を口にするガイアスの耳を思い切り引っ張る。そして、ミチミチに詰まっている小屋から引きずり出そうとした。
もっとも少女の腕力でこの偉丈夫を運ぶなど、到底不可能であったが……。
「そ、そんなこと言われても! 僕には荷が重すぎるんだよ……!!」
「だけど、ここまできたらやるしかないでしょう!」
「む、無理だよ!? 僕に魔王なんて!!」
「自分の面、一度確認してこい!!」
「コンプレックスなのに!?」
必死なレシリーに対して、しかしガイアスはまだ泣き言を続けた。
それでも少女は、無理矢理にでも彼を魔王城へ連れて行かなければならない。その理由というのも、今日はガイアスの父である先代魔王の葬儀であり、同時に新魔王の戴冠式があるためだった。だがしかし、当の本人はこんな感じである。
ガイアスという魔族の青年は、昔からこうだった。
生まれと育ちに反して、どうしようもなく心根が優しく涙もろい。しかしながら生真面目さもあってか、誰よりも戦闘訓練に励んで押しも押されぬ最強の魔族となっていた。それだというのに、ガイアスには根本的な自信が欠如しているのだ。
幼馴染みである少女、レシリーは頭を抱える。
それでも、そこがガイアスの良いところであるとも理解はしていた。その上で彼を魔王にと考えているのだが、どうしてこうも上手くいかないのか。
「……もう、仕方ないわ。こうなったら交換条件よ」
「え、交換条件……?」
大きくため息をついてから、レシリーはこう提案した。
「アンタが魔王になったら、大好物のスフレケーキを毎日作ってあげる」
――ドン! と、ない胸を思い切り張りながら。
まさか、そのような条件で魔王を引き受けるかと思われた。だが……。
「本当に!? レシリーの特製スフレケーキを毎日食べられるの!?」
「思った以上に食いついたわね……」
このガイアスという魔族、どうやら想像以上に単純らしい。
レシリーの言葉に目を輝かせると、先ほどの涙はどこへやら消え去って、満面の笑顔が釣り合わない強面に浮かんでいた。それを見て、レシリーは肩を竦めて言うのだ。
「その代わり、アンタは一日も早く立派な魔王になること! 良いわね!」
「分かった!!」
すると、ガイアスは意気揚々と頷く。
そんな彼を見て、少女は改めて大きくため息をつくのだった。
「さぁ、行くわよ。……みんな、待ってるから」
レシリーが手を差し出すと、ガイアスはそれを取る。
こうして歴代最悪、最恐と名高い魔王軍は発足したのだった。
前途多難ではあるが、なるようになるとしか言えない。
そんな船出であった……。
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