第七話
「逃げろッ!!」
爆発音のような大きな音が後ろで鳴った。振り返ると、扉は吹き飛ばされ、そこを守っていた兵士は倒れている。広間の向こうにはザトスが息を切らせて立っていた。
「ダイン!早くこっちへ!」
「う、うん」
駆けていく背を目にして、トゥガはため息をつく。
「穏便に済ませたかったんですが。仕方ないですね」
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ダインとザトスは、村の外れの丘の上まで来ていた。全力でかけてきたせいで、二人とも肩で息をしていた。
「ここまで来れば大丈夫だろ」
「ありがとう、ザトス。でも何であそこに?」
「二人が騎士団の人と会うって聞いたから、外から様子を覗いてた。中を見たらちょうどリンがいたんだけど、変な丸いものを見せられていて。それが光ってから様子が変になったから、ダインだけでも助けようって」
「じゃあ、リンは……」
サッと血の気が引いた。助けなきゃ。そう思って教会の方を見やると、大きな火柱が上がっていた。
「あれは……」
「騎士団の奴らに決まってる。お前を探して暴れてるんだろ」
「リンを助けなきゃ!」
「どうやって?殺されるだけだぞ」
「家族なんだ!」
ダインは火の上がった方へ駆け出した。
「おいおい本気かよ……!」
ザトスも慌ててダインを追いかける。
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村の中は、地獄絵図だった。火の手がそこら中に上がり、見慣れた村の人が血を流し、子どもが泣き叫ぶ。平和な村が見たこともない姿に変貌していた。
「リンはきっと教会だ。アイツらも戻ってくるとは思ってないはずだから、見つからないように行けば会える」
「うん……ありがとう、ザトス」
凄まじい熱気で、吸い込む空気に体の中を焼かれるようだった。すぐ横を走る甲冑の音に身を硬くしながら、二人は身を隠しながら教会まで足を進めた。
「トマス司祭?」
教会の前に着くと、トマスが壁にもたれかかって座り込んでいた。
「ダイン……逃げなさい」
近づいて初めてわかった。司祭の黒い祭服はただ真っ赤に染まっていて、助かりようのないほどの傷をだった。
「司祭……」
「早くここから去りなさい……山の向こうまで行けば水の国、ヒュラテスに出る。……そこでパレアという人を頼るんだ……」
「でも、リンが……」
突然、教会の扉が開いた。教会から姿を見せたのはトゥガと、リンだった。
「おや、戻ってくるとは思わなかった」
トゥガは宝物を見つけたような、無邪気な笑顔を見せた。リンは無表情でこちらを見据えていた。
「リン!!!逃げろ!!こっちに来るんだ!!」
ダインの叫びを聞いてもリンは表情ひとつ変える様子がない。
「なぜ?私は聖炎の国、騎士団にこの身を捧ぐというのに」
無機質に発せられた声に、ダインは頭が真っ白になった。
「ダイン、リンは奴らに何かされている。今の俺たちじゃどうしようもない」
「でも……でも!!」
「でもじゃない!」
ザトスが何かを放ると、目の前で爆発が起こった。煙幕が張られ、目の前が何も見えなくなった。