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冥闇不道のアポストル  作者: 茅井 祐世
第一章 覚醒
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第七話

「逃げろッ!!」


 爆発音のような大きな音が後ろで鳴った。振り返ると、扉は吹き飛ばされ、そこを守っていた兵士は倒れている。広間の向こうにはザトスが息を切らせて立っていた。


「ダイン!早くこっちへ!」


「う、うん」


駆けていく背を目にして、トゥガはため息をつく。


「穏便に済ませたかったんですが。仕方ないですね」




     ✳︎



 ダインとザトスは、村の外れの丘の上まで来ていた。全力でかけてきたせいで、二人とも肩で息をしていた。


「ここまで来れば大丈夫だろ」


「ありがとう、ザトス。でも何であそこに?」


「二人が騎士団の人と会うって聞いたから、外から様子を覗いてた。中を見たらちょうどリンがいたんだけど、変な丸いものを見せられていて。それが光ってから様子が変になったから、ダインだけでも助けようって」


「じゃあ、リンは……」


サッと血の気が引いた。助けなきゃ。そう思って教会の方を見やると、大きな火柱が上がっていた。


「あれは……」


「騎士団の奴らに決まってる。お前を探して暴れてるんだろ」


「リンを助けなきゃ!」


「どうやって?殺されるだけだぞ」


「家族なんだ!」


ダインは火の上がった方へ駆け出した。


「おいおい本気かよ……!」


 ザトスも慌ててダインを追いかける。




     ✳︎



 村の中は、地獄絵図だった。火の手がそこら中に上がり、見慣れた村の人が血を流し、子どもが泣き叫ぶ。平和な村が見たこともない姿に変貌していた。


「リンはきっと教会だ。アイツらも戻ってくるとは思ってないはずだから、見つからないように行けば会える」


「うん……ありがとう、ザトス」


 凄まじい熱気で、吸い込む空気に体の中を焼かれるようだった。すぐ横を走る甲冑の音に身を硬くしながら、二人は身を隠しながら教会まで足を進めた。


「トマス司祭?」


 教会の前に着くと、トマスが壁にもたれかかって座り込んでいた。


「ダイン……逃げなさい」


 近づいて初めてわかった。司祭の黒い祭服はただ真っ赤に染まっていて、助かりようのないほどの傷をだった。


「司祭……」


「早くここから去りなさい……山の向こうまで行けば水の国、ヒュラテスに出る。……そこでパレアという人を頼るんだ……」

 

「でも、リンが……」


 突然、教会の扉が開いた。教会から姿を見せたのはトゥガと、リンだった。


「おや、戻ってくるとは思わなかった」


 トゥガは宝物を見つけたような、無邪気な笑顔を見せた。リンは無表情でこちらを見据えていた。


「リン!!!逃げろ!!こっちに来るんだ!!」


 ダインの叫びを聞いてもリンは表情ひとつ変える様子がない。


「なぜ?私は聖炎の国、騎士団にこの身を捧ぐというのに」


 無機質に発せられた声に、ダインは頭が真っ白になった。


「ダイン、リンは奴らに何かされている。今の俺たちじゃどうしようもない」


「でも……でも!!」


「でもじゃない!」


 ザトスが何かを放ると、目の前で爆発が起こった。煙幕が張られ、目の前が何も見えなくなった。

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