第五十三話
雷が収束する。
光が渦を巻き、形を成す。
カーターの眉がわずかに動いた。
「……これは」
空気が重くなる。
視界の先、ダインの腕に握られたそれは、ただの雷撃ではなかった。黒と金の奔流を纏い、闇を宿したかのような雷鎚——
《破道の雷鎚》。
顕現したその存在に、カーターの視線が釘付けになる。
「……武器の顕現……? 詠唱もなく?」
動きが止まる。
彼の中で、戦いのリズムが狂うほどの衝撃だった。
武器を形にするという行為が、いかに難しく、いかに希少な現象かを、カーターは知っていた。それは精霊の祝福を受けた者が、ごく限られた条件下でしか行えぬ領域——
今、目の前でそれを成しているのは、自分が“未熟”と見定めていた少年だ。
「……お前、本当に……」
カーターは言葉を一度切り、深く息を吸い込んだ。
「想像以上だな。まさかここまでの力を持っていたとは」
そして、すぐに体勢を整える。戦士としての勘が告げていた。あの一撃は“本物”だと。
その刹那、ダインが動いた。
雷鎚が振るわれる。
風を割り、空を震わせるほどの質量と速さで、カーターへ迫る。
槍がそれを迎え撃つ。
火と雷、意志と意志が激突する。
腕に重さが走る。
受け流すだけでは足りない。全力で“ぶつかる”しかない。
火花が散る。
わずかに押された。
だが、耐える。
「……これが、お前の力か。なら……俺も、それに応えるまでだ」
彼の声音には、もはや試す色はなかった。
そこにあるのは、等しく向き合う者としての覚悟だった。




