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冥闇不道のアポストル  作者: 茅井 祐世
第五章 風と共に
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第五十三話

 雷が収束する。


 光が渦を巻き、形を成す。


 カーターの眉がわずかに動いた。


 「……これは」


 空気が重くなる。


 視界の先、ダインの腕に握られたそれは、ただの雷撃ではなかった。黒と金の奔流を纏い、闇を宿したかのような雷鎚——


 《破道はどう雷鎚らいつい》。


 顕現したその存在に、カーターの視線が釘付けになる。


「……武器の顕現……? 詠唱もなく?」


 動きが止まる。


 彼の中で、戦いのリズムが狂うほどの衝撃だった。


 武器を形にするという行為が、いかに難しく、いかに希少な現象かを、カーターは知っていた。それは精霊の祝福を受けた者が、ごく限られた条件下でしか行えぬ領域——


 今、目の前でそれを成しているのは、自分が“未熟”と見定めていた少年だ。


「……お前、本当に……」


 カーターは言葉を一度切り、深く息を吸い込んだ。


「想像以上だな。まさかここまでの力を持っていたとは」


 そして、すぐに体勢を整える。戦士としての勘が告げていた。あの一撃は“本物”だと。


 その刹那、ダインが動いた。


 雷鎚が振るわれる。


 風を割り、空を震わせるほどの質量と速さで、カーターへ迫る。


 槍がそれを迎え撃つ。


 火と雷、意志と意志が激突する。


 腕に重さが走る。


 受け流すだけでは足りない。全力で“ぶつかる”しかない。


 火花が散る。


 わずかに押された。


 だが、耐える。


「……これが、お前の力か。なら……俺も、それに応えるまでだ」


 彼の声音には、もはや試す色はなかった。


 そこにあるのは、等しく向き合う者としての覚悟だった。

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