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冥闇不道のアポストル  作者: 茅井 祐世
第四章 神の在処
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第三十九話

 空気が変わっていた。


 ウ=クァリスの霧が渦を巻きながら空間を満たす中、その中心に漆黒の波が生まれた。


 ダインの足元から、静かに、それは立ち上がった。


 炎ではない。雷の閃きでもない。


 それは音もなく、光すら飲み込みながら、周囲に広がっていく。


 パレアが振り返る。ダインの背に、黒い影が——否、力がまとわりついていた。


 「……それは……」


 彼女の声を遮るように、ウ=クァリスの霧が再び攻め寄せる。


 だがその霧は、今までのように侵食してこなかった。


 闇が、それを包み込んでいた。


 怒りも、拒絶もなかった。


 ただ、霧を包むように、抱き留めるように、闇が広がっていた。


「……この力」


 ダインが呟いた。


 その手のひらに、確かに感じる感触があった。


 温度のない、けれど確かな応答。力を振るうというよりも、その存在を、そっと受け入れただけだった。


「破壊じゃない……これは、“流れを変える力”だ……」


 彼の中に、何かが芽生え始めていた。


 完全な理解ではない。けれど、否応なくわかってしまったのだ。


 自分の中にあるこの力が、ただの異物でも呪いでもない。


 “選ばれてしまったもの”であり、“託されたもの”であるということを。


 ウ=クァリスの霧が去る。


 神の獣の一部であったはずのそれが、いまはただ、静かに風へと還っていく。


 パレアはその様子を見つめながら、静かに言った。


「……やっぱり、あなたは、見てるのね」


 闇と水の間に均衡が生まれていた。


 確かに“戦える”状況にはなった。そして、それはほんの一歩だけ、ダインを次の世界へと近づけていた。


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