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俺の生きる道  作者: 高山 龍
エピソード0
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第8話 謎のウイルス③


 梅津と田代は北海道大学の研究所にいた。マヨット島での調査の予定は、天候不良により飛行機が飛ばなかったため、二週間にのびていた。そのおかげで、色々なことを調査することができたのだが。


「梅津先輩。結局、マヨットで遊べなかったじゃないですか!!」


「いいだろ。お前は好きなだけ飯を食っていたんだから」


「そうですけど。あーあ。最後にサーラさんの水着姿、見たかったな」


 サーラさんは、現地で対応してくれた動物保護施設のフランス人女性だ。


「タンコさんの水着姿は見ただろ」


「あんなムキムキの南国兄ちゃん見たって、しゃあないよ」


「それよりも、あのキツネザルはやばかったな」


「あれはマジでゾンビですよ。目の前で、仲間のキツネザルを食べたのはグロかったですし。それよりも、よくあの実験をサーラさんがさせてくれましたね」


「まあな。世界のためだとか、同じような不運な動物を生まないためだとか言って、頼み込んだからな」


 現地ではある実験を行った。復活したゾンビキツネザルが何に興味を示し、何を食べるのか、そして、何を栄養源にしているのかという実験。もうひとつは、噛まれたキツネザルがどうなるのかという実験である。


 ひとつめの実験では、ゾンビキツネザルの前に、生きている同種のキツネザル、異種のキツネザル、別な動物、普段食べているエサ、人間などを近づけてみた。同種のキツネザルにはもっとも興味を示し、異種のキツネザルにも興味を示した。別な動物や普段食べているエサ、我々にはまったく興味を示さず、襲い掛かる様子などまったくない。おそらく、同じDNAに反応しているのではないか。


 次に何を食べるのか。死んでしまった同種異種のキツネザルの肉片を皿に入れ与えたところ、食べることはなかった。そこで、肉片を火ばさみでつかみ目の前で動かしたところ、食いついてきた。おそらく、視覚や聴覚は残っているが、触覚や嗅覚は鈍いのであろう。


 そして、次に血液サンプルを調べたときだ。そこには、謎のウイルスがいた。それは、とても気持ちが悪く、同じキツネザルを食べた時のたんぱく質を捕食するように動いていた。形も見たとことはない。これは持ち帰って、詳細に調べる必要があるな。


 最後に噛まれたキツネザルがどうなるか。直接、噛ませるのはかわいそうなので、血液サンプルから採取した謎のウイルスを元気なキツネザルに注射した。この段階で、帰国することになったため、サーラさんから情報を聞くことになっている。


「田代。俺は資料の作成にはいるから、お前は血液サンプルをもう少し調べてくれないか」


「分かりました。でも、帰国したばかりですし、ほどほどにやりますね」


「ダメだ。教授からは今週中にまとめるよう指示があったからな」


「はーい。やりますやります」



 帰国してから、二日後、サーラさんからメールが届いた。メールは英語だったため、何とか分かった。謎のウイルスを注入したキツネザルは、注入した三日後に死亡したようだ。そして、死んでから12時間後、再び動き出したと。サーラさんはとても驚いたようだ。そこには、もうひとつ書かれていた。普段、あまりくることのない職員がその光景を見ており、パニックになって銃でそのキツネザルを撃った。頭を銃で撃たれた後は、まったく動かなくなったそうだ。


 梅津は研究資料のまとめに入っていた。まずは概略を分かるようにして、少し時間をもらって正式にまとめよう。時間が足りない。しかし、これは世紀の発見になるぞと思った。さらに研究を進めれば不死の薬だって作れるんじゃないか。梅津は興奮を抑えきれない。資料作りに没頭していた。


 その次の日、サーラさんからメールが届いた。そこには、もうこの件には関われないと書いていた。


「何故だ!?」


 動物愛護団体にばれたか?そこから何回もメールを送ったが、返信が返ってくることはなかった。


 突然、電話が鳴った。それはタンコさんだった。あの陽気さが嘘であったかのように沈んだ声だった。


「オヒサシブリデス。タンコデス。サーラハコロサレマシタ。ワタシモアブナイデス。フランスガウゴイテイマス。ウメヅモキヲツケテ......」


「タンコさん1?タンコさん!?」


 電話は切られた。どういうことだ。サーラさんが殺された?フランスが動いている?もう訳が分からない。この謎のウイルスが原因か!?


 次の日、教授に呼ばれた。教授の後ろには、見たことがないスーツを着た男二人が立っていた。


「梅津君。申し訳ないが、マヨット島の件は忘れてくれ」


「え!?どういうことですか!?」


「私もわからない。今、ここに来ている外務省の方からの指示だ。言うことを聞かないと、大学ごとなくなると」


 後ろにいる二人は無言のままだ。


「おかしいじゃないですか!?もうあと少しで研究結果もまとまります!!」


 一人の男が呟いた。


「資料はすべてこちらで預かる。すでに頂いた」


 もう一人の男が言った。


「命と身分は保証するが、ウイルス研究からは手をひきなさい。それだけだ」


 これで私の研究は終わった。大学は自分から辞めた。実家の個人病院を継ぐため、医学部にはいりなおした。しかし、私はかすかな希望を抱いていた。田代が資料を持っている......








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