第7話 謎のウイルス②
町はずれの動物保護施設に着いた。そこにはきれいな金髪のフランス人女性の職員がおり、私たちの到着を心待ちにしていた。さっそく、私たちに何かを話している。
「オマチシテイマシタ。ハルバル、ニホンカラヨクキテクレマシタ」
ガイドが通訳をしてくれている。
その職員の説明では、一カ月ほど前に一匹の怪我をしたキツネザルを保護したようだ。そのキツネザルは腕に傷を負っていて、怪我の治療を行った。しかし、すでに弱っていたためゲージの中で死んでしまったそうだ。その時、フランスから多額の寄付をしてくれいる実業家が現地に来ていたため数日間、そのキツネザルを埋葬できなかった。
事業家たちが帰国し、そのキツネザルを埋葬しようとゲージの中を見たところ、キツネザルが生き返っていた。痩せこけていたキツネザルに通常食べる虫や果物のエサをあげるが食べようとしない。不思議ではあったが、仲間と一緒にいたほうが少しでも元気になるかと思い、他の保護しているキツネザルの檻の中に入れ様子を見ようとした。しかし、次の日にその檻を見ると他に三匹いたキツネザルのうち、二匹が無残にも食べられたような状態でバラバラになっていた。
残る一匹のキツネザルは怪我をしていたが、木の上に怯えた状態でいたため、別なゲージに移した。復活したキツネザルは木に登ることはできないが、ふらふらした様子で徘徊しているだけだった。そして、別に移したキツネザルも数日後に死んでしまったため、施設内に土で埋めたそうである。
「それでは、そのキツネザルを見せてもらえますか?」
そう話すと、女性職員の方がキツネザルのいる檻へと案内をしてくれた。そこには、四足歩行でふらふらと歩き回る痩せこけた一匹のキツネザルがいた。こちらにはまったく目を向けない。女性職員がガイドに何かを話している。
「オモシロイモノヲ、ミセマショウ」
そう言って、女性職員が小さなキツネザルを連れてくると、それまでこちらに目を向けなかった檻の中のキツネザルが得体のしれない鳴き声を出しながら、女性職員の抱えているキツネザルに近づいていくではないか。
女性職員の話では、生きている同じキツネザルにしか興味をしめさないようだ。
「先輩。もうお腹が減って限界です」
「ゴメンナサイ。オヒルニシマショウ」
そう言って、ガイドが施設の食堂へと案内をしてくれた。そこには、現地の食べ物と思われる見たことのない食事が用意されていた。
「いただきまーす!!」
田代は何も気にせず、むさぼり始めた。こいつはお気楽な奴だ。俺にはこの食事は合わないな。さて、何から調べよう。食事を済ませ、ガイドを通じ血液サンプルの採取と何かに寄生されていないかを確認したいことを伝えホテルへと戻った。
「先輩。案外、こっちの飯上手いですね」
田代は飯のことしか頭にないようだ。
「何か奇妙だな。血液サンプルをもとにウイルスを調べてみよう」
「先輩は真面目ですね。ここはダイビングもできるらしいですよ。海がきれいだし、あのフランス人もきれいですね」
「わかったわかった。調べて何もなければ最後の一日を自由にしよう」
「やったー!!」
田代は子供のように喜んでいた。しかし、この後、そうも言ってられないことになるのだが......