第4話 緊急会議
札幌方面北警察署大会議室において、緊急会議が行われている。
署長をはじめ参加している幹部の目線の先に泉係長が立っていて、説明をし始めた。
「えー。何から説明すれば、私も分かっておりませんが、現時点分かっていることをお話ししたいと思います」
幹部たちはすでにざわついている。ひとり留置管理課長だけは他の者とも目を合わせず、びくついているだけである。
「まずは若杉係長に対する傷害事件のマルヒというべきか、不審死事件のマルガイというべきか、とりあえず現在の様子を見てください」
会議室の隅に設置されたモニターに留置場の居室が映し出され、そこには居室内を徘徊する死体がいた。
「なんだこれは。ゾンビじゃないか」
幹部たちがさらにざわつき始めた。
「とりあえず、留置場にカメラを設置し24時間監視できるようにしています。留置場内の窓は締め切り空気が漏れないようにし、留置場の外には機動隊員を配置しました」
機動隊員は化学兵器対応の完全装備で立っている。
「分かった。そして、こいつは何者なのだ?」
興奮している署長の問いかけに、泉係長が冷静に返答する。
「続けて、この者の人定の確認が取れました。村上栄太28歳、死体となって発見された札幌市北区北〇条西〇丁目の木造2階建て集合住宅に単身で住んでいす。職業は北海道大学医学部の助教授であり、専門はウイルス研究です。同大学から聴取したところ、6月1日から約一カ月の工程でマダガスカル島に行っていました。マダガスカル島に行った理由は、原住民族で謎の病気が流行っており、ウイルス研究の一環として行ったようです」
「マダガスカル島って、どこだっけ?」
幹部たちはまだざわついている。
「続けます。そして、7月5日に帰国し、7月6日には同大学に普通に出勤したが、顔色が悪いことから教授の指示により帰宅。7月8日になんの音沙汰もないことから、同大学事務職員が自宅に行ったところ鍵が開いており、中で血を吐いた状態で倒れているマルガイを発見し、110番通報に至りました」
「発見時の状況は?」
「はい。発見時の状況はについて説明します。麻生交番の成田部長と大前巡査が14時10分に現着。通報者の斎藤さんと共に玄関から自宅内に入りました。部屋は1LDKで、マルガイはリビングの床の上にうつぶせの状態で倒れていました。顔の付近は血を吐いたらしく、カーペットが血で汚れていました。斎藤さんは本人の意識等を確認せずに110番していたので、成田部長は意識確認と心拍の確認をしましたが、反応なし。14時15分頃、救急車到着。救急隊員からすでに死亡しているので搬送しないとのことでした」
「成田部長と大前巡査は大丈夫のなのか?」
「はい。念のため自宅待機にしています。続けてよろしいでしょうか?」
「続けてくれ」
「その後、14時30分、私と内田が現着しました。部屋内は荒らされた様子もなく、マルガイに着衣の乱れはなく、身体を確認しましたが刺し傷等もいっさいありませんでした。持病か何かだと思いましたが、念のため、梅津ドクターに連絡し、遺体を本署まで搬送しました」
「17時15分頃、梅津ドクターが本署に到着し、検死を開始。18時00分頃、検死を終了しました。そして、19時30分頃、本署当直指令の若杉係長の叫び声を聞いた鈴木と倉持、星野が遺体安置所に行ったところ、死体に襲われている若杉係長を発見し、3人がかりで死体を拘束し、留置場に入れました」
署長も少し興奮を抑えながら、
「それで、梅津ドクターは何か言っていたか?」
「はい。それでは、梅津ドクターの見解をご説明します。内田!! よろしく」
会議室の隅の椅子に腰かけていた内田巡査が立ち上がり、鼻息交じりで話し始めた。
「はい!! 私の方から説明させていただきます!!」
内田巡査の説明が始まった......